柔術を最速で上達させる為に知っときたいこと
紫帯ぐらいまではずっと練習でボコボコにされてて・・・
(あ〜俺って本当に強くなってるんだろうか?)
なんてことをよく考えてました。
未来の私からみれば
「まぁ強くはなってるけど、かなり効率は悪いよね。その練習」
ということはわかります。なんでわかるかといえば、私が柔術の黒帯になったからではなく、運動指導者だからです。
時代は流れブラジリアン柔術の練習方法も多様化しました。ひと昔前よりは多くの人が上達しやすくなってると思います。
しかしながら、環境が良くなっても、日々の練習で自分が上達してるかわからず悶々とされる人はいると思いますので、なるべく効率良く上達できる道標になる記事を書いておきます。
序論
私の本業は人に運動を教えることです。柔術やウェイトトレーニングの指導も運動指導に違いないですが、人に動きを教えることについては、柔術の技であったり、筋トレのフォームどうのこうの以前に
『人はどのように動作を学習するか?』
とか
『どのように指示を出せば効果的か?』
など、もっと運動学習に関する土台から考えていく必要があります。柔術の技術を習得する、実戦で使えるようにするなども全てこの土台の上に成り立ちます。
ただ闇雲に練習っぽい何かを繰り返すよりも、良い土台を構築した上に練習をした方が確実に上達します。
量質転化は必ずではない
まず始めに大事なことですが、たくさん練習する、量をこなしてるうちに勝手に上手くなるのはすでに才能がある人だけです。
この才能については後述しますが、運動学習については量を繰り返すことは大事だけれども、実施回数の多さと動きの質は必ずしも比例しません。
という違いが出てきます。これを個人の才能という簡単な言葉で片付けていては飯は食えません。
99%の人にとっては、なるべく早くピッキ〜ン!!っと質を掴むためにどういう風に量をこなすかが重要です。
運動学習の三段階
運動学習の基本としては
認知段階(Cognitive)
連合段階(Associative)
自動化段階(Autonomous)
という三段階があり、練習するスキルがどの段階にあるかによって指導方法も実施者が行うべきことも変わります。
練習の質がだだ下がりする原因の90%ぐらいは、自分が練習するスキルが上記のどの段階にあるかを認識できず、的外れな練習をしてしまうことにあります。
これは指導者も同じで、各段階において有効な指導方法が変わりますが、無効とまでいかなくとも不効率な指導をしてしまってるケースは多々あると思われます。
以下では、柔術の技術を習得することを例にして各段階を説明して行きます。
認知段階
これは文字通り、はじめて見る、行うスキルを認知して
(う〜ん。なんか難しそうだな・・・)
とか
(意外とできるかも!やってみるか!)
とか
(どんな感じにしたらできる?)
みたいに判断する段階です。
頭の中では意識的に言語的に考えています。
ex.はじめてのベリンボロ
(ほ〜う。あれが噂に聞くベリンボロってやつか・・・)
(なんか足を外からかけて・・・ふむ)
(相手を尻もちつかせて・・・横に転がって・・・なるほど)
(ゴチャゴチャしてたらバックがとれてる?なんで???)
(やってみたいけど、ワイには難しいかも?まぁとりあえず転がってみるか!)
言語的指導とトライ
この段階においては目的のスキル(ベリンボロ)に対して超初心者です。自分の動きの良し悪しもわかりません(例え動画でチェックしたとしても)
先生や教則のお手本ムーブを見ても、やはり自分では良し悪しを判断できません。
ゆえにこの段階で
試合の動き
スパーでの動き
SNSで流れる説明のない動き
これらをを見ても学習効果は薄い(無ではない)のです。たとえばSNSで今までに見たことのないオシャレな技が流れてきたとして
(うわ!何これ?おもしろそう!次の練習でやってみるか)
って認知と判断ができるだけです。
ここで必要なのは、スキルをシンプルにわかりやすく言語的に教えてくれる指導者です。良い技術にはディティールが詰まってますが、そういう説明はこの段階ではいりません。
つまり、ベリンボロを行うのに必要最低限の技術や動きを簡潔にまとめて伝えます。
その指導をもとに量をこなします(反復)
連合段階
ある程度の練習を繰り返していると、自分の動きやお手本(先生や教則動画)の動きの良し悪しがなんとなくわかってきます。
これと同時に自分の動きとお手本の動きの差異にも気づいてきます。
(う〜ん。何度やっても先生みたいにならないんだけど・・・)
お手本の動きを見て、頭の中には良いイメージがあるのに、実際やってみるとどうも上手くいかない。
(何がダメなんだ〜)
あと、お手本の良いイメージはできてしまってるので
(ワイ、なんか前より下手になってね?)
という錯覚(対象が自分の動きではなくお手本の動きの為)みたいなものに陥ります。本当のところは上達中でありまだまだ伸びしろだらけです。
内在的フィードバック
連合段階においては、言語的な指導ではなく体性感覚、視覚、聴覚などの感覚をもとに与えられる内在的フィードバックが有効になります。
つまり・・・
「感じろ!何かを!」
です。
練習としては
お手本の動きを見る(教則も可)
打ち込み
ドリルやスパーで技を試す
良い技を受ける
などで、様々な感覚を体(脳)に取りいれます。いわゆる言葉理解するのではなく、体で覚えるってやつです。
あるあるの不効率指導としては、この段階においても練習者に言葉で説明してしまうことです。
ただ
(頭では何となくわかっちゃいるけど言葉にできないんだよね〜)
という感覚がある段階ですので、基本的には内在的フィードバックを行いつつも、ディティールの説明や指導者自身の持つ感覚を言葉で説明してあげることが気づきになるとプラスになります。
※柔術ならプライベートレッスンやトップ選手のセミナーなんかが有効になるところ
ここは配分は指導者のセンス
自動化段階
練習した動きが無意識で行われる段階です。
相手がベースを崩して尻もちをついたら勝手に体が反応してベリンボロに入ってサクッとクラブライドしてバックとってました・・・みたいな
この流れを実行するには複数のタスクを同時に遂行しなくてはいけませんが、そういうのができちゃいます。
柔術だとわかりにくい人もいるかもですが、普段歩くときに
(まずは右足・・・踵・・・つま先・・・左足を)
みたいな意識で歩くことはないと思います。なんならスマホ見ながら、タイプしながら歩けたりしますよね。無意識で
※スマホをいじりながら歩くのは危険です。
何が違うのか?
この流れは意識的に学習するところから無意識に学習するまでの流れです。
認知段階→連合段階(意識的)
連合段階→自動化段階(無意識的)
この二つは使われる脳の分野が異なります。
つまり、いっぱい意識的に練習を繰り返したところで無意識にできるようにはなりません。
冒頭の何度、反復練習しても一向に上達しないAさんなんかはこの罠にかかってるかもしれません。Bさんは上手く運動学習ができたので量質転化できたのでしょう。
2~3回やればできたCさんや、見るだけでできたDさんに関しては、認知段階において、すでに似たような動きを習得済みだったというのがあります(本当に天才の可能性もあるけど)
これは才能ではなくセンスです。
みたいな感じです。
まとめ
運動学習は他にも複雑なことが関係しますが、基本として学習段階の流れと、各段階における効果的な練習方法、指導方法を知っておけば過去の私のような無駄にボコられ・・・悩む夜を過ごさず・・・効率的に上達できるはずです。
Yusuke Yamawaki
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