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首腰膝を怪我しない為にほぐすところ

10年前の私は腰痛持ちでした。練習量も多かったし、体も未熟、そして何より身体が硬かったからです。

そして、腰痛を引き起こしていた原因の一つが

『ハムストリングスの硬さ』

だったと思います。

柔術家にとって

・首

・腰

・膝

この3つはよく怪我する関節でしょう。なんとハムストリングス(もも裏)に適切な可動性がなければ、これらすべてを怪我する可能性があります。

ハムストリングスはブラジリアン柔術家にとって、鍛えることとほぐすことがマストな筋肉です。


柔術スペシフィック

まずはこの動画を見てください。

ラクラン・ジャイルズ氏がインバーティドポジションについて説明してくれてる素晴らしい動画です。

サクッとまとめると、

『ハムストリングスが硬いと、インバートした時に腰と首の負担が増えるぜ!』

となります。

ハムストリングス(長いので以後ハム)に適切な可動域があれば、二つ折りになったときに足でストップがかかります。

しかし、可動性が足りてなければ膝が曲がり、足が床に届くまでの距離が長くなります。その分、腰や首の負担が大きくなります。

多くの競技アスリートにとって、ハムの可動性は大事ですが、柔術家にはより大事だと感じます。


ゲーム中のハムストリングス

簡単な例を紹介します。

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トップゲームの姿勢は、相手に体重をかければ楽をすることができます。

しかし、楽できるところを位置取るのは容易ではなく、ゲーム中は相手に道衣を引かれ姿勢が崩されます。

崩されすぎると、極められたりスイープされてしまうので、姿勢を保つ必要があります。

ここ大事なのが

・ヒップヒンジ

・スクワット

この二つです。

ヒップヒンジは股関節の屈曲のことで、適切なヒンジができればお尻やハムの力を大きく使えます。

スクワットでは股関節と膝関節が曲がりますが、ヒップヒンジが適切にできないと、膝の負担が大きくなります。

トップゲームでスクワットの姿勢を取れると、上体の角度が高くなるので崩されにくくなります。

フェザー級の世界王者、ファブリシオ・アンドレイもスクワットポジションを多様してますね。

スクワットポジションの難点は機動力が低いことです。機動力を上げるなら、お尻の位置を高くする必要があります。

そうなれば、ルーマニアンデッドリフト(RDL)に近い姿勢で攻めることになりますが、ヒップヒンジができずに襟や袖を引かれると、右端の図のように腰が丸まりがちです。これは腰痛になります。

ヒップヒンジが関係ないところとしては、ヘッドダウンするガードパス

・オーバーアンダーパス

・ショルダードライブパス

などがありますが、これらは崩れやすく(すでに崩れている)カウンターリスクの高いパスと言えます。

臀筋やハムが硬いとヒップヒンジの邪魔をします。他のことが理由でヒップヒンジができないこともありますが、お尻とハムの可動性は確保したいところです。


ヒップヒンジだけじゃ足りない

ヒップヒンジは、立位でおこなう競技のアスリートにとって習得は必須と言っても過言ではありません。

私は適切なウォームアップとRDLをやり込むことで適切なヒップヒンジを獲得してきました。

しかし、柔術にはガードポジションという特異な部分があります。

(過去・・・幾度となくマイケル・ランギにあこがれたことか・・・)

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雑なイメージで申し訳ないのだけれど、これがハムストリングスです。

ハムは

・半膜様筋(青)

・半腱様筋(赤)

・大腿二頭筋長頭(緑)

・大腿二頭筋短頭(紫)

この4つの総称です。

骨盤の下の方にある坐骨結節につくので、股関節を伸展させます。また、膝を通って脛の骨(脛骨と腓骨)にもつくので、膝関節を屈曲の作用もあります。

※詳しくは、『ハムストリングス 起始停止』『ハムストリングス 作用』とかで検索

上の動画にあるように、インバーティドポジションでは膝の伸展も関わりますし、スパイダーガードで相手を釣り上げる時なんかは膝ピンってできると遠くへ崩せます。

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RDLは股関節の屈曲でハムをストレッチできるんですけど、膝はちょっと曲げてるのでストレッチされないんですね。

柔術でオープンガードを使うなら、膝を伸ばすストレッチも大事です。


ハムストリングスをほぐす

ハムは肉離れ頻発部位としても有名なので、可動性とともに強度が必要です。

簡単な順序としては

①ハムのリリース

②ハムのストレッチ

③ハムの強化

④ハムのリカバリー

です。

上の図をイメージして、ハムをリリースするところから始めます。

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セルフで簡単にできるのは、ボールを使ってハムをゴロゴロすることです。フォームローラでもいいですが、ソフトボール大のボールがおすすめです。

上の図をイメージして内側ハムストリングス(半腱様筋、半膜様筋)と外側ハムストリングス(大腿二頭筋)に分けてほぐします。

※ちなみに内ハム、外ハムと略されます。

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人によっては、内ハムと大腿二頭筋長頭の起始部である坐骨結節あたりがカチカチになってることもあるので、ピンクの丸印辺りにボールを当ててキープするのもおすすめです。

逆に脛の上の膝付近が硬い人もいます。ハムは脛に対して外旋と内旋の作用もあります。

内ハムだけが収縮すれば脛を内旋させ、外ハムだけが収縮すれば外旋させます。

よくあるのは、外ハムが硬くなって脛が外旋してるパターンです。

これは、普段の生活からスポーツ動作、トレーニングまで膝が捻れた状態で動いてることになります。

ということは、膝を怪我しやすくなりますね。

膝上あたりのハムが硬い場合も入念にほぐしましょう。


ハムストリングスのストレッチ

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まず簡単なのは、昔ながらのこのストレッチです。

膝関節を伸展させつつ、股関節を屈曲させます。

足を掴めることは悪いことではありませんが、足を掴もうとするあまり、腰のストレッチにならないように注意してください。

ウォームアップなら伸長位で止めて、30秒を1〜2セット、柔軟性のトレーニングなら3セットを週に3日程度おこなってください。

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こちらは動的ストレッチとしてウォームアップでよく使います。

短距離のクラウチングスタートのような姿勢から、手をついたまま膝を伸ばして、腰を持ち上げます。前にある脚のストレッチです。

骨盤は前傾、腰で代償しないように、なるべく胸ともも前はつけて伸ばします。

ハムが伸びたところで深呼吸を1〜2回入れて、①②を6回×2セットほど繰り返します。

このような股関節屈曲+膝関節の伸展のストレッチポジションは肉離れリスクが高い(たとえばランニングの着地)ので、伸ばすときはゆっくり動かします。

静的ストレッチとして、伸展位でキープするのもOKです。

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これを読んでる人の90%は柔術家の方だと思うので、帯は持ってますね?

仰向けで、帯を足裏にかけて伸ばすのもおすすめです。これなら練習後にもできます。

ストレッチしない脚を伸ばして床から浮かないようにします。これはハムだけでなく、ふくらはぎもあらゆる角度で伸ばせるのでマジ良い。


ハムストリングスの強化

ハムをストレッチすることで柔軟性は手に入ります。

ただ、柔軟性があってもコントロールする筋力が伴わなければ怪我をする可能性があります。

なので、柔軟性を養った後は、ウェイトトレーニングで強化することが大事です。マスト

中でも、対象部位がストレッチされながら負荷がかかるような種目は、可動性の獲得にもってこいです。

ルーマニアンデッドリフト(RDL)は、アスリートのトレーニングに限らず、全人類がやった方がいいストレッチ種目です。

しかし、上述のようにRDLは膝が曲がるので、股関節の可動性が大きく改善されます。

(なら膝を伸ばせばいいんじゃね?)

ってことで、スティフレッグデットリフトという種目もありますが、これは難易度が高い上に、肉離れのリスクも大きい種目なので非推奨です。

膝側のストレッチ種目としてよく使われるのは、ノルディックハムです。

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足と脛を固定して、膝を曲げたところから、床にダイブするような種目です。足はどっかに引っ掛けるか、ペアの人に固定してもらいます。一人で行う時は腹筋台を使います。

落下するスピードをハムの筋力でコントロールして、床についたら手でアシストして戻します。戻すときは股関節を屈曲しても良いです(ネガティブオンリー)

これはこれで尋常ではない強さのハムが必要で、床からハムのコンセントリック収縮だけで戻れる人は多くはないでしょう。やりすぎると事故ります。

ハムの筋力や可動性によっては怪我のリスクがあるので、初めは床ではなく少し高めに台などを設置して可動域を狭めたところから開始してください。

あとは、練習やトレーニングで疲れたハムをリリースと同じようにほぐしてリカバリーしましょう。

ハムストリングスの硬さの原因がハムではないこともありますが、別記事で書きます。

Yusuke Yamawaki

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