現代人がマストでほぐすべき筋肉

ブラジリアン柔術の8割は脚です。

一般的に腕の力よりも脚の力の方が強く、体格が小さい人でも脚を使えば大きい相手に対抗することができます。

とくにガードポジションでは脚が大事です。

そして、多くのガードでは股関節を屈曲した時間が長くなります。

力を入れた状態が長続きするので、股関節を曲げる筋肉は硬くなっていきます。これをそのままにしてると、腰や膝を痛める原因になります。

よくガードをプレイする人は、股関節の屈曲筋を練習前後でほぐすことをおすすめします。

股関節屈曲筋

お尻とハムストリングス(ハムケツ)は、練習する前に可動性を確保してほしい筋肉です。

ハムケツは股関節伸展筋であり、硬くなってると股関節の屈曲動作を邪魔します。ハムケツの反対に位置する

・腸腰筋

・大腿筋膜張筋

・大腿直筋

これらが主な股関節屈曲筋です。ガードプレイヤーは酷使してるはず


腸腰筋

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腸腰筋は背骨と脚をつなぐ筋肉なので、かなり重要です。

①腸骨筋(青)

②大腰筋(赤)

この二つを合わせて腸腰筋といいます。脚を大きく上げる(股関節屈曲)ときに大事な筋肉で100m走のランナーはめちゃくちゃ発達してます。

しかし、世の中100m走のランナーではない人がほとんどだと思います。一般的にはデスクワークで硬くなって腰痛をひきおこす方がなじみ深い・・・

腸骨筋は骨盤(腸骨窩)から、大腰筋は背骨(胸椎12番〜腰椎5番)から太ももの骨をつなぎます。

スタートが背骨や骨盤というのがポイントで、骨盤が固定されてる時は股関節を屈曲させますが、脚が固定(立位や座位)されてる時は骨盤を前傾させたり腰椎を前湾させます。

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デスクワークやガードポジションで股関節の屈曲姿勢が長いと硬くなりがちです。

腸腰筋が硬くなると腰椎の前湾が強くなり、いわゆる反り腰になります。

骨盤が前傾していると、ハムストリングスは強制ストレッチされてる状態になり、もも裏の可動性が奪われます。

私もデスクワークが長いとよく固まってます。日々のケアはもちろんですが、練習やトレーニングに入る前に硬くなってないか確認するのをおすすめします。


腸腰筋の可動性チェックとほぐし方

簡単にできる硬さの確認方法としてトーマステストがあります。

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①仰向けに寝て、両脚をのばす

②片方の膝を両手でかかえる

③逆の脚が床から浮いたらOUT

※すでに反り腰の人は仰向けで腰骨の下に大きく隙間ができます。

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セルフでできるほぐし方は、

①ソフトボールぐらいのボールを緑の丸に当てる。おへその斜め下ぐらい
②うつ伏せで深く呼吸(ex.10秒吐いて、10秒止めて、10秒吸う)
③2~4分繰り返す

です。


腸腰筋のストレッチ

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ストレッチで気をつけてほしいのが、股関節の伸展角度です。

腸腰筋は股関節の前面を通るので、股関節が前にズレすぎないようにカバーをする役割もあります。過度にストレッチすると、股関節前面がゆるみすぎて怪我につながることもあります。

まずは左のイメージのようなストレッチをおすすめします。

①膝を90度に曲げた膝立ちになる

②お尻と腹筋に力を入れて骨盤を後傾させる

後ろにある脚の付け根がのびます。

右のイメージのように後ろの脚を大きく伸展できる人もいると思いますが、基本的には非推奨

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大腰筋は胸椎の12番〜腰椎の5番につくので、上と同じ姿勢から伸ばす側の脚と反対方向へ上体を傾けることでストレッチできます。

※右脚を伸ばすなら、左に上体を倒す。また、上体を水平に回旋させるパターンもあります。


腸腰筋のトレーニング

練習のダメージや日々のデスクワークで硬くなるものの、腸腰筋が柔術に大きく役立つかというのには疑問があります。

※一般的には間違いなく鍛えた方がいい

というのも、100m走のような脚を大きく振り上げるような時に活躍する筋肉だからです。

仰向けのガードは股関節の屈曲位です。このとき連動して骨盤の後傾(腹筋の作用)もおこります。骨盤が地面から浮いてなければ腸腰筋が大きく働きますが、ガードとしては不効率なものになってます。

トップゲームでも、機動力のために脚は上がった方がいいかもしれませんが、脚を大きく屈曲させるガードパスを私は知りません。

・シットアップ

・レッグレイズ

・ダッシュ

これらが腸腰筋におすすめのトレーニングですが、柔術家は鍛えるよりも練習前後のコンデションを優先させてください。


大腿筋膜張筋

腸腰筋はよくメディアにも取り上げられるので、聞いたことがある人もいるでしょうが

大腿筋膜張筋を知ってる人は多くないでしょう。

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この筋肉は骨盤前の出っぱり(上前腸骨棘=ASIS)からもも外にある腸脛靭帯に結合する特殊な筋肉です。

大腿筋膜張筋(赤)、腸脛靭帯(緑)

腸脛靭帯は靭帯とありますが、硬さのある筋肉です。前方は大腿筋膜張筋とつながり、後方は大臀筋とつながります。

柔術家や柔道家の腸脛靭帯はパンパンです。一般的にはお尻が上手く使えず、もも外で体重を支えて生活している人がパンパンに張ってます。もも外にくっきりと縦のラインが見える人は注意です。

作用は

・股関節の屈曲

・股関節の外転

・股関節の内旋

です。

腸脛靭帯を介して脛にもつくので

・膝関節の屈曲

・膝関節の伸展

・膝関節の外旋

もあります。

大腿筋膜張筋は腸腰筋と同様にデスクワークやガードワークで股関節を曲げ続けると硬くなりやすいです。

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ニーイン

大腿筋膜張筋や腸脛靭帯をウェイトトレーニングで鍛えるなんてのは聞いたことがありません。

トレーニングで大腿筋膜張筋が有名なのは、股関節内旋によるスクワット時のニーインへの影響です。

本来は膝が外に流れる(ニーアウト)を大腿筋膜張筋(股関節内旋)と腸脛靭帯(脛骨外旋)で防いでますが、上げるのが厳しい重さになると過剰にニーインします。

ニーインをすることで

・大臀筋の出力が上がったり

・骨盤の挙上

・腸脛靭帯の膝伸展作用

などが働き重さを持ち上げることができます。

私はニーインが原因で膝を痛めたという人にはあったことがないですが、ニーインスクワットは股関節や腰の怪我につながるので非推奨です。


大腿筋膜張筋と腸脛靭帯のほぐし方

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大腿筋膜張筋はボールを当ててほぐします。

骨盤前の出っぱり(上前腸骨棘)と太ももの骨の出っぱり(大転子=ピンク)を目安にします。どちらも自分で簡単に触れます。この間にボールを当て横向きに寝てほぐします。

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腸脛靭帯はフォームローラーをもも横に当ててほぐします。ほぐす側の股関節と膝関節はまっすぐ伸ばしてください。※痛みが大きい場合は足を床についたり、膝を曲げても無問題

そもそもの組織が硬いのでストレッチで伸ばすのが難しいです。セルフだとさらに難しい。

んの割に硬くなりやすいので、日常的にこまめにほぐすのをおすすめします。


大腿直筋

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大腿直筋と縫工筋

大腿四頭筋で唯一、股関節と膝関節に作用するのが大腿直筋(赤)です。

・股関節を屈曲

・膝関節を伸展

させます。骨盤についてるので、硬くなると骨盤を前傾します。

骨盤の上の方から膝横を通って脛の骨についてるのは縫工筋(青)です。この筋肉も股関節屈曲に関与します。

膝の安定性に関わり、上述のニーインを防いでくれる役割がありますが、別稿の譲ります。

余談ですが、足を背屈(甲側に曲げる)させると、股関節の屈曲筋は働きやすくなります。フックガードを使う人は足の背屈がマストです。

フックスイープが神レベルに強いマルセロ・ガルシアなんかは、股関節屈筋群がスプリンターばりに発達してるかもですね。


大腿直筋の可動性チェックとほぐし方

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・うつ伏せで脚を伸ばす

・片足の膝を最大限曲げる

・お尻と踵の距離をみる

簡単な方法です。踵がお尻につけば腿前の可動性は十分です。大腿直筋は骨盤につくので硬くなってたりすると、お尻が浮き上がります。

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硬さがある場合は、腿前にフォームローラを当ててほぐします。特に硬いところに当てつつ膝を曲げ伸ばししてください。

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可動性のチェックと同じように踵をお尻に近づければストレッチできます。

うつ伏せでやってもいいですし、イメージのように壁前に膝立ちになって行ってもいいです。腸腰筋のストレッチと同様に腹筋とお尻に力を入れて骨盤を後傾させると大腿直筋が伸びます。

昔ながらの仰向けで膝を曲げるハードラーストレッチは膝を痛めるので非推奨です。

Yusuke Yamawaki

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