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JR西日本の立ち往生〜SNS上の反応に答えてみる

2022年1月24日に発生した、JR京都線と湖西線における大規模・長時間の立ち往生についてのツイートやnote記事は多くの方に読まれ、様々な反応がありました

その中で、JRを擁護するものや、筆者の意見に反論するものもありましたので、それについて答えてみようと思います。いっぱいあるので、目次を活用して見たいとこだけ読んでください


「線路上に降車するのは二次災害のリスクがある」

 これは過去度々、Twitter上の鉄オタを中心に喧伝されてきてます。小田急線と京王線で起きた刺傷・放火事件でも、乗客の避難行動を誹謗するツイートが飛び交い、その理由の一つとして挙げられています。
 日本の鉄道の歴史では「三河島事故」という大きな事故があります。これは列車事故の現場に、事故を知らない別の電車が突入したというものです。線路を歩いて避難していた乗客がたくさん轢かれました。また、JR西日本では人身事故現場に特急電車を通過させ、救急隊員を死傷させる事故も起こしています。
 しかし、これらの事故の教訓は「鉄道会社は非常時に電車を停めろ・止める仕組みを作れ」であり、「乗客は避難せずにじっとしてろ」ではありません。しかし、なぜかTwitterでは「非常コックで外に逃げてはいけない理由」として、しばしば引用されています。ほんとクソ

 今回の記者会見では、列車が駅間停車した場合、乗客の避難について1時間程度で判断するという車内ルールがあることが明らかにされました。前述の事故の教訓で、列車の運行管理や抑止の処置については改善されていますから「別の列車に避難乗客が轢かれる」ということを(少なくとも乗客側が)考える必要はないといえます。

 次に、記者会見では「降車するリスク」についての説明がありました

なぜJRは降車させなかったのか?
会見では次のようなリスクや理由が挙げられました
・夜間で暗いこと・線路の上は足場も悪く、積雪もあること
・応援に駆けつけた駅員と乗務員の数名では誘導が難しいこと
・もうすぐポイントが復旧するのではないかという期待があったこと

JR西日本の立ち往生、何が問題だったか
https://note.com/0816_jimmy/n/ne38700d2e212

 やはり「他の列車に轢かれる」はありませんね。挙げられている「足元が不安定な線路を歩くリスク」というのは確かにその通りです。しかし「長時間、電車に閉じ込められるリスク・負担」については考慮・検討されていません。
 

 リスク管理というのは、想定される複数のリスクを天秤にかけて低い方を選ぶとか、そのリスクを低減させる対応をとることです。例えば、二階にいるときに一階で火事があったとします。

「火事で二階から飛び降りて逃げる」
「怪我をするかもしれないから二階で救助を待つ」

この2つの選択肢を天秤にかける必要がありますよね。救助までの時間や、火事の状況でそれぞれのリスクも変化します。「怪我をするかもしれないんだから、飛び降りてはいけない」と断定する人がいたらアホですよね。そういうことです。Twitterにはいっぱいおるけど

そして今回の結末としては
「長時間、電車に閉じ込められる負担」
「足元が不安定な線路を歩くリスク」の両方を負わされた上、
判断が遅くなったことにより
「予報通り悪化した天候下での雪中行軍」
「宿泊や交通手段のなくなった時間帯に解放」
というオプションまでついてしまいました。

「避難のために抑止すると他の列車も動けなくなる」

 前述の通り、乗客が線路に避難するとなると周りの列車を全て停車(抑止)させる必要があります。すると、遅延が発生して運行に影響が出ると言うことになります。
 しかし、よく考えてください。先日の15本の列車は大規模なポイント不能により4〜9時間、動けなかったんです。もちろん、発生してしばらくは影響のない電車が走っていましたが、すぐに全面運休となりました。少なくとも最後の電車が止まった21時ごろにはその心配がなくなっていたわけです。 

「多数の乗客を降車させても受け入れ先がない」

 乗客本人たちや車掌や運転士が降車を懇願していたのに、なぜ外野がそんな心配をするのか謎ですが、家族や友人が迎えに来れる人、タクシーを使う人、ホテルやネカフェに泊まる人など、それぞれの選択肢があります。もちろん、列車に残って夜を明かすのも選択肢です。一部の自力で帰れる人が出ていくだけでも、車内の環境は大きく改善します。満員電車に閉じこめられて夜を明かすという鉄道非日常体験に興奮する異常なもいるのかもしれませんが、世の中の大半の人はそうではありません。
 そもそも、受け入れ先がないのではなく、周辺自治体に要請して避難所の開設を依頼していないだけです。今回も結局、遅い時間になって各市役所が避難場所を開放したり、民間施設が善意で乗客の受け入れを行いました。

 

「バスでは大勢の乗客を輸送できない」

 これは何の脈絡もなく突然飛んできたリプライです。バスの話なんかしてないけど、鉄オタにはバスが視界にちらつくようです。似た者同士仲良くしろや
 前述の通り、別に全員を降車させて輸送する必要はないのです。
なぜ「誰も降車させない」or「全員を降車させる」の二択になるのか?
意味がわかりません。
 しかし、この思考は2018年の信越線15時間閉じ込め事件でもみられ、自治体や消防からのピストン輸送の打診を「バスでは乗客全員が避難できないから」と断り続けました。もちろん、15時間半あれば全員救出できたでしょう。
 また、今回の事案では京都市消防局からマイクロバスが出動し、足腰の弱った乗客を優先して山科駅までピストン輸送したそうです。十分役に立ってますよね。早い時間に要請していれば、大型バスの手配もできたでしょう。


「不要不急の外出は〜と言われていたんだから自己責任」

 平日の夕方に電車に乗っている人が「不要不急の外出」なのでしょうか?一人一人の外出理由をアンケートでもしたんか?世の中の人はお仕事に行くって知ってる?仕事が不要不急の外出だとしたら、電車動かしてるJRの職員も不要不急の外出してるってこと?

 「降車は自己責任で」という放送があったわけですが、それなら乗車する前に言えと。責任を持てないのなら、金を受け取って客を乗せるなとしか言えません。
 列車を通常通り運行させていたわけですから、乗客は安心して乗車するわけです。そもそも、JR自身が通常運行できるつもりで融雪器の設置すらしていなかったのに、乗客にそれ以上の判断ができるはずありません。これで乗客の自己責任だと言われると、JR西日本の電車に乗るためには雪山登山かバックカントリースキーみたいな心構えが必要になってしまいます。

「こんな天気で出勤・登校させた会社や学校が悪い」

 前項と同じですね。そもそもJRが雪対策しないと考える程度の降雪で、各私鉄は普通に運行できていたわけですから、会社や学校のせいというのは全く見当違いです。なぜ被害者側の責任にしようとするのか謎です。
もしバスが雪をナメてノーマルタイヤで事故を起こしたとしても、乗客の勤め先には責任はないのと同じです。

「異常な大雪だったんだから仕方ない」

 前記事でも書きましたが、今回は「大雪で立ち往生」ではありません。降雪予報を甘くみて融雪器を設置しなかった判断ミスが原因です。その他の区間や私鉄では立ち往生が起きなかったのは、融雪器を使用していたからです。

「計画運休すべきだった」

 繰り返し述べてきた通り、融雪器が設置されていれば問題ない降雪量だったわけですし、計画運休する必要はなかったでしょう。
 ただ、記者会見で大雪時の運休基準を問われて「手元にない」と回答していましたので、ちょっとそこは不安がありますね。大丈夫か


また、なにか飛んできたら、追記します


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