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雨の日には冷えたスプーンを

ーヨーグルトの賞味期限が切れる前にー

※お立ち寄り時間…3分

言葉にならないモヤモヤとした感情
時々やってくる、あの感覚

カポーティは、Redと
村上春樹は、体のまわりを吹きすぎていく風と
 
私は
どうしようもなく誰かに会いたくなる
このままブレーキを加速して赤を越えたくなる

寂しさと狂気の間にある感情
この得体の知れぬ感情

この世界は、私の知らないもので溢れていて
きっと、教科書に出てきた半分も知り得ていない

教師は、幾度となく同じことを繰り返し言うのに
肝心なことは教えてはくれない

夢の見つけ方
夢の諦め方

恋の始め方
恋の終わり方

何かを成し遂げること
習慣を止めないこと

それは、自らの手で探り探り学ぶことだからだ

ある国語教師が
真夏の暑い日に
ポツリと言った

「箱の中で文学なんか勉強するより
  川のゴミ拾いをした方がよっぽど良い」 

その国語教師は

誰かに教えてもらうのではなく
自分で学びを得ることが肝だと 

言いたかったのではないかと思う

彼の授業は

ただ、正しい答えを導き出すのではなく

行間を読むこと
筆者は何故それを選んだのか
筆者は何故その結末にしたのか

決まった答えのあるテキストは真っ白のままで
彼と生徒の言葉で黒板は埋め尽くされた

煙草をぷかぷか吸う不良たちも
彼の授業だけは、何故か全員出席だった 

ややこしくて、でもお別れをまだ言えない恋をしていた時

並んだ文字は、線の中に行儀良く収まっていて
他人の日記帳みたいだった

今の私は、線なんかお構いなしで、好きなことを好きなだけ紡いでいる

「小説家って、売れなきゃただのニートだよな」

そんなふうに言われた時もあった
心ない、真綿で首を絞められるような

夢を自分でぐちゃぐちゃに潰して
世間で称賛されるような職に就いて

それでもやっぱり諦めきれなかった
幼い日からずっと大切にしてきたもの
この得体の知れぬ感情

伝えたい何かが、みぞおちあたりでうずうずしていて

それに向き合うために、過去の人生を行ったり来たり

世界一周できちゃうくらい

何年か経って
埃を被った私を見て
誰かが手を繋いで、泣いてくれたら

それだけで私は報われた気がするのだ

有名になりたい
お金が欲しい
会社を作りたい

数多ある欲望の中から私が手に取ったのは

1番汚くて、綻んだ私自身の感情

夜更かしした日
ある晴れた日の朝
誰もいない春休みの教室
しん、とした冬の夜明け
卒業式の昼下がり

クリスマスを悲しみで過ごしているような
切ないでも、哀しいでも、愛おしいでも、心がねじ切れそうでもない

優しさと暴力のはんぶんこみたいな気持ち

私が私かと疑いたくなる
得体の知れぬ感情に
容れ物を見つけることが、私の欲です。

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眠れない夜に

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