ものがたりの話

買ってよかったもの。なんて素敵なテーマ!基本的に好きなものや欲しいものがあるとウキウキしてきて、悩んで、買うと決めるとすごく嬉しい気持ちになる。2021年に買ってよかったものはたくさんあって、買ってよかったものがたくさんあると、なんだか1年間がんばったし、楽しく過ごせたなぁ、と少しだけ自分を褒められる気持ちになる。

さて、沢山の買ってよかったものの中からまずひとつ選ぶとしたら、やはりここは松尾太陽さんのアルバム「ものがたり」である。

超特急の唯一無二のバックボーカルであるタカシくんのソロアーティスト松尾太陽としての初のフルアルバム「ものがたり」は本当に素晴らしいアルバムだ。そのタイトル通り1曲1曲が物語を持っていて、まるでものすごく丁寧に一編一編を選んで創られたオムニバス小説のよう。さらに太陽さんの変幻自在かつ表現力豊かな歌声の向こう側(あるいはその内側かもしれない)で、曲そのものがもつ物語がより一層深く広々と存在しているのが感じられて、歌声を通してそれらの物語を「読む」とゾクゾクとするほど良い。

もともと、私は「物語」がないと生きていけない生き物だ。

絵本やアニメ、小説や映画にドラマ、誰かの語る物語やエッセイ、ドキュメントや会話。どんな表現方法で表されたものであれ、私にとって「物語」を求め摂取することは呼吸するくらい自然なことで、常に次々と誰かの物語を吸収しながら生きてきた。だから、大好きな松尾太陽さんが出すアルバムのタイトルが「ものがたり」だと知った時は本当に胸が高鳴った。彼の歌声ならたくさんの物語に出会えるに違いない。見知らぬ世界に連れていってもらえるに違いない。そう思っていたから、最初に「ものがたり」を聴いた時は本当に驚いて、すぐにもう一度最初から聴き直した。二度目に聴いているときに確信した。

ああ、これは誰かの物語ではなく、私の物語だ。

見知らぬ世界ではなく、日々感じてきたトキメキや不安、期待や疎外感、執着や癒し、過去や現在や未来。私が体験してきたけれど、敢えて認識してこなかったひとつひとつ過ごしてきた時間や感情。「ものがたり」を聴くと、自分の中の自分も知らなかったたくさんの物語に出会うことができた。さらに、聴くたびに好きな曲は変わり、好きな曲の中でも特に好きな部分がどんどん変わり、出会う物語も次々と増えていくところも素敵。

何気なく過ごす日常や、大切だと言葉にする勇気がなかった大切な感情。松尾太陽さんの「ものがたり」を通して自分の中に見つけたたくさんの物語。

2021年、松尾太陽さんの「ものがたり」を買って本当によかった。

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