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チッテで愛してる#7.5

今回の話は、箸休めだと思って読んでください。シリアスな展開が続いたので、今回は、ほっこりするエピソードをまとめました。それではお楽しみください。

#クスリ
 

朝目が覚める。今日の朝もため息が出る。体が重い。布団から立ち上がる力を溜めるのに、時間を使う。一生懸命に立ち上がった。
 
足がふらつく。僕は3日前から、微熱が続いていた。日に日に体力が落ちていく。そんな体を引きずって、解体のバイトに向かった。
 
フラフラになって帰ってきて、すぐに布団に入る。嫌な汗で服が張り付く。心配させたくなくて、ジャスミンには言ってなかった。しかし、体力の限界が近ずき今の僕の現状を伝えた。 
 
「ジャスミン体が良くないの。良くなるために今日はもう寝かせて。」
 
「確かにあなた最近体良くない。私も気づいてた。ずっと心配だった。寝たら治るの?お願い薬飲んで、コセ」    
 
 嬉しかった。言わなくてもジャスミンには伝わっていた。弱った体と心にジャスミンの優しさが染み渡った。その日は早く寝た。
 
 そして朝になる。この日はライブだ。微熱ぐらいじゃライブは休めない。重い体を引きずってライブに向かう。ヘロヘロになってやっとの思いで帰ってきた。そんな僕を見てジャスミンが言った。
 
「コセ・・・あなたかわいそうな顔になってる。そんなに体良くない?」
 
「ダメかも」
 
「クスリ買ってきたから、早く飲んで。今飲んで。」
 
 心配そうに僕を見つめるジャスミンが僕に薬を手渡してくれた。嬉しかった。僕はジャスミンに聞いた。
 
「これはどーゆークスリ?」  
 
「バイアグラだよ。」
 
「ん??バイアグラ?」
 
「あなた最近、体が良くないから…‥」
 
 え…‥え!?!?ジャスミンはずっと僕のオチンポコの心配をしてたんだ…‥。
 
 ジャスミンが言う。キラキラした真っ直ぐな瞳で言う。
 
「早くこれ飲んで一緒にお風呂入るOK ?」
 
「okじゃない!!!!飲まん飲まん!!今飲んだら死んじゃうよ!聞いてジャスミン。あなたが思っているのと、少し違うの。僕ね体が熱いの。」
 
 ジャスミンが嬉しそうに言う。
 
「体あつい?私もあついの。早く飲んで」
 
「違う違う!!僕、カッカしてるの!とか。僕、火照ってるの!!とかじゃないの!!!!病気、病気なの!!」
 
「インポ?」
                     
「違うわ!!もう、やだ!!今日はお風呂も入らないし、すぐに寝る。」
                                  
「分からない・・・昨日もすぐに寝ちゃう。その前その前もすぐに寝ちゃう。」                                                      

そう言いながらジャスミンが僕のズボンの中に手を入れた。僕はたまらず言った。
 
「一緒にお風呂に入ろうか!!」


#食文化の違い


ジャスミンと暮らしだして、問題は多くあった。ジャスミンのイビキの問題。そんな問題よりもぶっちぎりで一番の問題。それは、食の問題だ。ジャスミンはイスラムだ。豚の入っている料理を食べない
                                                                

日本人とミャンマー人の僕とジャスミン。食の違いがどれくらいあるかと言うと…‥ミャンマー人とヤギぐらい違う。
まず僕は日本人の中でも偏食な部類だ。生物が嫌いで、肉の油が嫌いだ。寿司と焼肉が食べられない。油が嫌いなので、ポン酢以外のドレッシングを使わない。それなのに、トンカツと唐揚げは大好きだ。自分でも何がおきているのか説明できない。そして僕は1日に1食しか食べない。貧乏芸人の生活で食が細くなった。細くなりふぎて、飴を舐めていたらお腹が一杯になってしまうほどになった。どれくらい細くなったかと言うと…‥
                                                                

環状8号線ぐらいあった僕の食の太さは、
 
サービスエリアのエビフライぐらい細くなった…‥ 
 
いい例えは出ないが、細くなった。それだけは伝わって欲しい。
 
                                 

そしてジャスミンは、ご飯を食べる事が大好きだ。1日に、朝昼夕夜と4食とる。ご飯を食べながら、次に何を食べようか考えている。それがジャスミンだ。一緒に暮らし出して、始めのうちはジャスミンがご飯を作った。ご飯の上にお茶の葉っぱと辛い高菜をかけたご飯。ご飯の中にピーナッツが入ったご飯。ココナッツミルクにひたひたのナンが一枚のご飯。

僕は…‥食事の時間がいつも怖かった。そして、ジャスミンがご飯を作ると全て激辛になる。
                                 
それから食事は全て僕が作る事にした。ジャスミンのために作る食事は楽しかった。色んな料理を作った。明日何をジャスミンに食べてもらおうか?そう考えるのが楽しくて、料理のレパートリーが毎日増えた。
                                 
そんな生活が何ヶ月も続いた。ある日ジャスミンが突然言った。

「もう我慢できない」

                                
「どうしたのジャスミン?」                                 

「なにを食べてもポン酢の味しかしない。もうやだ。全部同じ味だよ」                                

「いやいや、そんな事ないでしょ。」                                

「全部同じ味。魚もポン酢味。サラダもポン酢味。お肉もポン酢味。焼きそばも、パスタも、煮物も、全部ポン酢味。いい加減にして!何食べても変わらない。同じ味。もう我慢できない。もう嫌だ。」                                        

 この日から料理の最後の味付けは、ジャスミンがすることになった。
そして・・・この日から全ての料理にチリソースがかかって出てきた。
 
 僕は言った。
 
「もう我慢できない!!!ジャスミン何を食べても同じ味。焼きそば、パスタ、煮物、全部が甘辛い。スイカにチリソースをかけないで!!!!」           
 
                               
                                                                                

#食文化2


ジャスミンと僕が実家に帰った日の話し。

その日は僕の実家でもつ鍋を囲んだ。もつ鍋を見て 僕が言った。

「ジャスミンはイスラム教徒だから豚が入ってる物は食べれないよ。」


お母さんが言う

「ジャスミンは何が好きなの?」

僕が言った

「チキンが好きだよ」

「じゃあ鶏肉の角煮でも作るか。」

「そんなに手のこんだ物作らないでもいいよ」

「あなたに作るんじゃないの。私は、ジャスミンに作るんだから、あんたは黙ってて」

40分の時間をかけて鶏肉の角煮が出来上がった。
ジャスミンと僕が帰ってきたということもあり、お母さんは腕によりをふるって作たのだと思いう。見た目にも豪華で美しい鳥肉の角煮だった。ジャスミンがそれを嬉しそうに見て言った。

「おいしそうーーありがとうございます。お母さんこんなにすごい料理が作れるのですね、レストランみたい。」

そしてジャスミンは、その料理に自分で持ってきたタバスコ、チリソース、一味をかけて、最後に辛い高菜をのせた。


豪華な鶏肉の角煮が、マグマになった…‥


ジャスミンがマグマを食べて、言った。

「おいしいです、お母さん料理とっても上手ですね。」

そんなジャスミンを見てお母さんが言った。


「それはもう私の料理じゃない。」



# 食事文化の違い 水祭り                                                   


ある日ジャスミンが僕に言った。
 
「今日は水祭りだから、水ご飯を食べるか?」
 
 ん?なんだその知らない祭典は?水の祭り?水を祀る祭り?
お神輿の上にボルデックでも乗せて、練り歩くのか?練り歩くこと水の如しなのか?僕は、ジャスミンの話を聞くこと水の如しだった。つまり…‥無視をした。無色透明で流動的な水にヒントを得って、訳のわからないジャスミンの話を無視した。 そんな水に変貌したパートナーに向かってジャスミンが叫んだ。
 
「水祭り水祭り水祭り水祭り水祭りだよ!」
 
 僕は、それんなジャスミンの話を聞くこと、水の如しだった。つまり…‥おゲボを吐いていた。酷い二日酔いで立ち上がる事もできない僕。トイレで、無色透明の流動的な水にヒントを得て、食道の中の液体を逆流させていた。そんな、僕に、ジャスミンは言う。
 
「ねー聞いてるの?水祭りだよ。ねー水ご飯食べるのー」
 
 聞いてるよ坊や。でも、今する話かな坊や? そんなに大事なの水祭りは?今の光世めちゃめちゃ水の如しだよ?
つまりは…‥すごく心配して欲しいの。サウジアラビアの地下水ぐらい心配して欲しいの。 

 そんな、何も話さないで便器を抱える僕にジャスミンが言う。
 
「水祭りの歌ねー歌って欲しい?」
                                               どーしてそうなるの!?!?!? 見えたの?僕が歌て欲しそうに見えたの?二日酔いの僕からどんなシグナルを受け取ったの?
 あと、なんでずーと嬉しそうなの?ジャスミンはずっと水の如しだった。つまりは、キラキラしてて美しかった。ジャスミンのキラキラに負けて、僕は言った。
 
「水ご飯を食べます。」
 
「食べるー?YESボーヤちゃん待ってて、私作るぞー」  
      
 満開の笑顔でそう言ったジャスミンは、僕の腕を引き、コタツに座らせて、キッチンに走った。そして水ご飯の料理が始まった。

 僕は、ジャスミンの料理の手際を見ていた。ジャスミンが丼にご飯をよそる。ご飯がよそられた丼に目一杯の水道水をぶち込む。ぶち込み終わったらジャスミンが僕に言う。
 
「食べな」 
 
 …‥これを?え?これで完成なの?ただ水道水の上にご飯が浮いているだけのやつだよ?これをずっと食べさせたかったの?もしかしてジャスミンさんはブチギレてらっしゃるんですか?ブチギレてるから、体の内側から破壊しようとしているのですか?

僕はこの状況を把握して、一瞬で考えを巡らせ、推理し、答えを導き出した。
 
 分かったぞ・・・水祭りとはなんなのか。

 水祭りとはなんなのか! その答えは簡単だ!。水祭り、そんなハッピーな名前で人々を誘い出し、雑な料理で体を内側から破壊し、雑な味でメンタルを粉々にする。そんないかれた祭典だったんだ!! 
 
 ボルディック神輿カーニバルじゃなかったんだ!!
 
 そして僕を破壊しようとしたのは、ジャスミンさん!あなただったんですね!!!
 
 
 
 僕の妄想の外から本物のジャスミンが言った。
 

「早く食べて」      
 
「はい・・・」
 
 僕は生まれて初めて、水ご飯を食べた。それは、こんな味だった。

 “タピオカミルクティー“

 ではなく

 “シロメシスイドースイ“ 

 だった…つまり無味だ。
 
 シロメシスイドースイを飲んでいる僕をジャスミンが嬉しそうに見つめる。そして僕に言った。優しい声で。
 
「いつかミャンマーの水祭りに、あなたを連れて行ってあげたい。水祭りをあなたに見せてあげたい。」
 
「必ず二人で行こうね坊や。」
 
 この瞬間シロメシスイドースイが特別な味に変わった。



おしらせ



皆さんいつも僕の記事を読んでいただいて本当にありがとうございます。


これから新しい試みを試してみようと思います。

チッテで愛している以外に別の記事を投稿していこうと思います。

その名も『コーセーの日常』 です。

コーセーの日常では、、お笑いに全振りした記事を書いていこうと思います。全力の笑いです。それと、チッテで愛しているで語られなかった、ほっこりエピソードです。どんどん上げていこうと思います。基本的には笑える記事を書きます。
ジャスミンとの話だけではなく、他の人もどんどん登場してきます。僕の日常で起きた笑えるエピソードを毎回2、3、4、話ぐらい投稿していこうと思います。

こちらは有料にさせてもらいます。ご興味がありましたらぜひ読んでみてください。

チッテで愛しているの、シリアスで胸が苦しくなりすぎましたら、コーセの日常を試しに読んでみていただきたいです。

それではみなさん、次の話で僕と待ち合わせをしましょうか?
じゃあ!いつもの場所で!!

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