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曾祖父の歌をiTunesStoreで購入した話

嘘みたいな本当の話。
きっかけは最近シベリア抑留絡みの展示を複数見かけたことだ。
祖母の伯父がシベリア抑留されたときの話を自費出版してたはず。
ググったらヒントが出てくるかな…と思ったら、誤って検索したかった人物の弟、祖母の父、わたしの曾祖父の名前を検索していた。曾祖父は岩手県盛岡市の農家兼職人で、決して歌手ではない。

一発目に出てきたのが、国会図書館だった。本を書くようなインテリ系でもなかったはず。意味がわからない。書名を確認する。日本民謡集。出版年1982年。収録1941年。

検索に検索を重ねて以下の事実が判明した。
・NHKが戦前から日本全国の民謡を録音していた。
・1982年に日本民謡集が出版された。
・その「日本民謡集」が1992年頃に「日本民謡大観復刻版」としてCD化された。
・さらに2010年にデジタル音源が配信され誰でも聞けるようになった。
・現在AppleMusicでも配信されており、月額料金を払っていれば聴けるし、一曲153円で購入も出来る。

現在資料がないが、曾祖父はおそらく明治40年前後生まれだと思う。よってこの音源は、曾祖父が30代~40代で録音したと思われる。曾祖父の写真を見たことがあるが、わりと容姿がよく、母曰く性格もよく、スカートを履き(これが謎)母によく「オープンってどういう意味?」などと英語の意味を質問していたそう。おそらく好奇心旺盛で明るい人柄であったことが推測される。母方の実家は、祖父が1950年代に当時の大卒の初任給より高かったカメラを購入しており、伯父は県外の私立に、母は県内の私立に進学する程度の所得はあった模様で、金銭的に著しく困窮した話は聞かない。しかしさすがに曾祖父の(曾祖父が生きていた1970年代前半までの)カセットテープの音源が残っていることはなかった。よって、曾祖父の肉声は聞いたことがない。それが今。明治生まれの曾祖父が、昭和前半に録音した曲が、平成にあらためてCD化され、(多分祖母も母も知らないまま二代すっとばして)令和にデジタルデータを購入した曾孫が聴いている。

わたし自身、音楽鑑賞が好きだし、ライブに行くのも好きだし、職場で簡易バンドを組んでエアギター&ボーカルしたこともあるし、一人カラオケに行くくらいには歌うことも好きだが、民謡にはあまり興味がなかった。曾祖父の歌がうまいのか、それなりなのかはよくわからない。(それでも曾祖父に白羽の矢が立ったということは、子孫のひいき目かもしれないが、地元ではそれなりに上手であったのではと推測される)歌詞もよくわからない。ただ、曾祖父の歌声は決して大きくない身体のわりにパワフルで、いい感じにこぶしも効いている(多分)。

わたしの先祖がかつて生きていて、生きた証を残していて、その歌声は亡き後も永遠に生き続けている
という事実だけで、崇高なものに思えた。

ひいじいさん、NHKさん、Appleさん、夢のような体験をありがとう。



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