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失敗のケア~共感から推進力をもたらす対話術~
前回の補足ですが、失敗したときのケアとして共感が必要なのは落ち込んだ気分を自分で受け入れられるようにするためです。これは落ち込まないようにするとか自分を奮起させるといった前段階といえます。
人間の感情は複雑なので喜怒哀楽だけでは表現しきれない微妙な心情があります。日本語は特に感情を表す言葉が繊細だと思うのですが、その時の自身の気分をしっかりと言いあてる言葉があるかどうかは感情を整理するためにはとても重要なことなのです。
共感はこれらの一緒に整理する役割を担っている他、その気持ちを表現するための言葉を一致させていく作業としての役割も担っているといえます。
こうした言葉と感情の一致によって自己表現がより高度になっていくと同時に、こうした共感を経て自分の感情の整理がつくようになって初めて前向きな気持ちが生まれると考えています。
今回のタイトルはシンプルな対話での振り返りですが、私の文章整理の拙さもあって結論は終わりにあります。気長に最後までお付き合いください。
何か失敗があったとき
① 「ああ、またやってしまった。自分はダメなんだ。」
② 「ああ、またやってしまった。落ち込むなあ。」
と考えるのは似ているようで大きな違いがあります。
両方とも落ち込んではいるけど、①は感情を抜きにして存在や技量を否定してしまうのでこれ以上成長がないと暗に決めつけてしまっている状態です。②もネガティブではありますが、存在や技量を否定してはいません。あくまで感情を吐露しているのであり、<現在の自分の状態>をよく受け止めていることができていると考えられます。
改善や再チャレンジを促す場合にもっとも良いのはこうした今の気分を適切に共有している状態です。
以下に例を作成しました。登場人物をタケル君(仮称)とお父さんです。
算数の問題を解いていて徐々にレベルが上がっていく。これまでなんとなくひらめきがあったのでここまで続けてこられたが、どうしても解けない、理解が追い付かない問題にあたってしまった。
宿題になったので家に持ち帰って再チャレンジを試みたものの、どうしても解くことができない。いよいよ困り果てて今にも泣きだしそうな気分だ。
「どうして解けないんだろう?」「何がいけないんだろう?」「自分にはその力がないのかもしれない・・・。」
様々な考えがよぎる中、気分はますます落ち込んでいく。
そこにお父さんがやってきて一言「どうした?」
「算数でどうしても分からない問題があるんだ。」
「そうなの。それで、どんな問題?」
「コレ・・・」
「へえ~、もうこんなところをやってるの。それで、教えてあげようか?」
「自分で解けるもん」
「解けなくて困ってたんだろ?」
「そうだけど、たまたまだもん。」
「そう。じゃあまあ自分で頑張ってみたら良いね。」
「うん。」
しかしこれでもまだ分からない。
父「どうした?」
「分からない!自分には無理なんだもういいいよ!」
「まあまあ、気分を落ち着けなさい。問題が解けなくて悔しかったのね。」
「もういいよ!」
「そう。じゃあやらないでもいいんじゃないか?」
「だけど宿題なんだもん!」
「そうか、じゃあやらないといけないのか。これまで算数は楽しそうにしてたもんな。じゃあ今すぐは無理かもしれないから、少し時間を空けて後でやってみたら。」
「そうする。」
テレビを観たりご飯を食べたりして過ごし、ひと段落したところでs
「そういえば、さっきの問題どうなった?」
「・・・まだ」
「そうか。やらなきゃいけないもんな~どうする?やってみる?」
「うん。」
「自分で解けると思ったら解けばいい。どうしても分からなかったら聞けばよいから、隣でやったら。」
「そうする。」
これは僕が実践した方法を家庭向けにアレンジしました。僕のときはこの時間を空けること、そしてなるべく自分の意志で解きたいという気持ちを尊重して、最終的には宿題を終えることができました。
子どもとは不思議なもので目の前の課題に価値を見出せば見出すほど、「先に自力で進みたい!自力で進みたいけどちょっと分かるきっかけが欲しい!」と考えます。
この状態を共感によってふたたび取り戻すことで新しい活路を見出そうとする推進力が生まれるのです。
さて、本題であり結論ですが、ただ「今日はどうだった?」「今の気分は?今日はどんな気分だった?」と質問するだけでは自分の推進力を取り戻すことにはつながりません。
日常の中で起こった出来事が何より実感の持てる体験であり、またその体験に即した感情と言語の一致を行っていくことが重要です。その上でしばらく間を置いたり気分転換をしたり、あるいは一緒になって調べたり解決策を探したりし、自力が感じられる状態を創り出してあげましょう。
そして最後の「やったあ!」という気持ちをぜひ一緒に共有してください。
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