街かどの教育学~国語・漢字~
漢字をうまく書けない姿を見ると「漢字を覚えていない。」と判断されてしまうようですが、必ずしもそうとは言い切れません。
これまでの生徒の中にも「覚えているけれど適切な使い方が分からない。」という場合がありました。
これはどういうことか。
自分の読んでいる本や漫画に登場する漢字、あるいは教科書の漢字を読むことはできるけれども書くことができないのです。
そのため筆記主体のテストでは書けずに落ち込み、覚えられないと自責の念に駆られてしまう。
でもそれは違います。
読めるということはその文脈の中で漢字がどのような意味をもち利用され、そしてその読み方も把握できているので記憶にはちゃんととどまっています。
ではなぜ書けなくなってしまうのでしょう?
それはインプットよりアウトプットの方が大変だからです。
通常、他の勉強と同じく習う漢字は子どもの興味関心とは関係ありません。
だから習った漢字はそもそも記憶に留まりにくい、という点で子どもが日常的に接する本などに比べて不利です。定着する優先順位が
普段から接する本や漫画 > 学校で習う漢字
なんですね。
特に発達課題を抱えている子供はインプットのときの注意が定めにくい、アウトプットのときに誤信念(自分の中で正しいと思っている正解)にとらわれやすい、さらに想起がうまくいかない(適切な情報を思い起こすことができない)などの理由から
書けない、あるいは書きはするが他の漢字と混同されている
などの事態が発生します。
繰り返しますが記憶力がないのではありません。そして覚えられていないということとも違います。
覚えてはいるしある文章の中で使用されている分にはちゃんと読むことができるので、問題はどのようにアウトプットするか、です。
① 自由に記述する
アウトプットは基本的に自由な状態から始まります。そのためまずは自由に漢字を筆記させてみましょう。これは子供の中に「記憶に残りやすい漢字と記憶に残りにくい漢字があること」を伝えるためです。(つまり学校のテストで書けないのは仕方がないねということです)
*このと極端に漢字が筆記できない場合は別な理由があります。
➁ エピソードと一致させる
覚えていることを確認出来たらその漢字をどこで覚えたのか尋ねます。
発達課題のある子供はエピソードに無頓着なので初めは『知らない!』とか言いますが、次第に漫画や本と一致させて少しずつ語ることができるようになります。
③ 焦らせない
覚えていることを確認したのはあくまで、何も覚えられないという悲観から脱却するためです。思い出せたからと言って学校での漢字も覚えられるわけではないのです。
④本や漫画を積極的に読んでもらう
エピソードを確認出来たらなるべく本や漫画に没頭できる機会を設けましょう。インプットの量を増やすためです。
発達課題のある子たちも現状のまま知的活動が止まることはありません。
そして読んでもらった漫画や本について積極的に共有し、エピソードが定着するようコミュニケーションを取ります。
⑤書いてもらう
子供は漢字が書けると分かったら(それまでの抑圧されていた反動からなのか)自分の漢字や興味関心に沿った漢字を徐々に書き始めるようになります。このときの書いてもらい方はなるべく自然で、かつ子供から社会にとって有益である(他者にとって有益である)ようなアプローチが最適です。
時間が経つと次第に作業的な記憶も行えるようになります。するとそれまでの漢字と連合させたり熟語の組み合わせを行ったりと漢字で自由に遊ぶようになります。
以上のことから子供は覚えていないのではなく、各プロセスにつまづいていることが分かります。
書けない = 覚えていない
と結論付けるのは少々強引ですので、こうした背景に目を向けてみてください。
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