歌詞勉強 Virtual to LIVE にじさんじ

作詞作曲:Kz

ここ数年で進化・変化しまくっているVtuber(virtual+youtuber)というカテゴリー。
そんな中から今回は にじさんじというグループの楽曲、『Virtual to LIVE』を研究します。
全体的にこれまでもこれからも一緒に頑張ろうみたいなイメージを持つ、王道の合唱ソングとなります。
映像的に言えば、ライブの終わりとかで、出演者が全員でそろって歌っているイメージです。
上物のキラキラとした音と爽快なドラムの、盛り上がりと感動が両立した楽曲です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どうしようもなく今を生きてる
この声が届く未来が
幸福だと 言えるように
ただ謳おう Virtual to LIVE」



サビ頭からはじまります。
"未来なんて分からない。今を生きるしかない。それでも未来が幸福であるために声高らかに謳おうよ"という歌詞です。
「謳おう」という漢字は常用外の漢字ですが、意味としては"強調して述べ立てる"や"褒める"などの意味を持ちます。
vtuber(NIJISANIではVliver)は、歌うだけでなく、実況や雑談放送といろいろなことをします。
歌うといった基本的に一つの意味しか持たない字より、謳うという字を当てた方が幅広いことを伝えられると考えたのだと解釈しました。


漢字のなりたちや本来の意味など、気になった言葉は調べましょう。
たとえば飛ぶ、跳ぶ、翔ぶなど漢字のイメージやルビの振り方などで、変わってきます。
どれが今の歌詞に合うのか考えて、使わなかった言葉もどこかに書いておくなどしておくといいと思います。
それが引き出しとなって、作詞の時に役に立つはずです。書いた歌詞は残しておくと、次同じようなイメージで作詞するとなった時に、助けになると思います。

今回は謳うという字が当てられましたが、歌うが不正解かといえば、そうではないと思います。
歌うという漢字の方が最適な場合も当然ありますので。


「進む先が見えなくたって
手探りでも歩き続けた
泥だらけの足元のまま肩を揺らす
ぎこちなくて震えた声を
一つ一つ積み重ねてく
「大丈夫」と誰かの声が手を握った」



Aメロは自らの境遇の描写です。ここでわかるのは、「第一歩」感でしょう。起承転結でいうところの起から承にかけてです。
vtuberという業界は新しめの業界で、やってみないと、言ってみないと分からないという業界の境遇を描いています。
ただ、この曲に関しては、というかキャラソンなどもある程度の数そうなのですが、自らの話をするとともに、誰かの共感を引き出せるような歌詞になっています。自分頑張れだけじゃなく、聞いた人が、自分も頑張ろう
と思えるような歌詞になるよう描かれていることも多いです。業界やライバーとしてだけでなく、多くの人に刺さるよう、バーチャルらしさ・イメージソングらしさはあまりないように思います。
また、性別関係なく歌えるように、口調などの色付けをしていません。


AからB、そしてCとだんだんとテンションを上げていくような構成はよく使われます。その方がサビでの解放感、爆発力が上がるように思います。

ストーリー性のあるもは起承転結がしっかり分かった方が、聞き手がイメージしやすく、内容がしっかり伝わると思います。ただし、説明口調にならないように。


「遠くから聞こえていた
足音はいつの間にか
笑いあう程近くに
感じられるよ」


Bメロです。ここでは人が集まってくることをイメージしているのかなと思います。
こういうイメージはパーティーソングやアイドルソング、キャラソンなどで使われます。
ラブライブやアイドルマスターなどは最たる例ですかね。グループで歌う場合は、みんながいて自分がいる というニュアンスの言葉や歌詞のテーマが多く使われたりします。


「君と僕を繋ぐこの糸
七色に掻き鳴らしてく
見てる明日が それぞれでも
歩いていこう
どうしようもなく今を生きてる
この声が届く未来が
幸福だと 言えるように
ただ謳おう Virtual to LIVE」


サビです。
「七色」は虹のことです。異なった色の線を糸に見立てています。一般的な虹のイメージは7つの色の線が束になっているもの
だと思います。異なった色=異なった人、性格、思いが集まって一つになるというイメージなわけですが、それは関係性もおんなじです。多様性や共存の象徴として使われる虹は、歌っているキャラクター、人物達に合っています。
そして「掻き鳴らしてく」ですが、繋ぐ糸をギターやベースなどの弦に見立てているということだと思います。
つまり糸=虹=弦というわけですね。この箇所に関しては他にもたくさんの候補があると思いますが、これは作詞家のその時のひらめきと思考によって変わります。


そして頭で使われたメロディ、歌詞がそのまま使われています。要はここが、この曲の伝えたいポイントになります。
繰り返すことでサビ感がより出ますし、言うのもあれですが、作家視点で言えば制作時間の短縮にもなります。
全体のバランスを見て、何度ならおんなじフレーズが使えるか考えましょう。


「止まることない時間の中で
窓に向かい笑い続けた
不恰好に投げた言葉で日々を綴る
瞬くたび変わる景色を
一つ一つ刻みつけてく
「大丈夫」と明日の誰かに言えるように」


2回し目のAです。スタートした後の今の自分についてが描かれています。
止まることない時間の中で は他の歌詞でもよく使われるフレーズですね。
窓に向かい ここに関してはvtuberらしく窓=パソコンの画面を表しているのだと思います。vtuberをしらない人でも、窓という表現なら想像できますし、孤独感や努力している感がでていますね。

「不格好に投げた」 というどちらかといえばマイナスな言葉が使われています。マイナスなイメージの言葉は、普通マイナスなテーマの曲で多く使われます。当然ですが。
ただ、ポジティブな曲や応援をテーマにした曲でもポイントで使うことで、テンションの山ができます。
例えば、「今は何も見えない」 というフレーズ。ただ後ろに 「それでも信じて突き進む」 と書くだけで、マイナスな言葉がプラスへ向かうためのエッセンスとなります。効果的に使えば歌詞に深みを持たせることができます。

後半3行ですが、ここでは「自分のやってきたことが、誰かの希望、道しるべになりますように」という想いが書かれています。1回し目では受け手だった自分が今度は渡し手として書かれています。
「一つ一つ」「大丈夫」という言葉が一緒でも、前後の言葉を変えることでイメージをを変え、1回し目と同じ言葉が印象深くなります。


「少しずつ築いてきた
たくさんの昨日たちと
飾らないこの気持ちで
明日も話そう」



2回し目のBですが、ここも2回し目のAと同じで承の部分が書かれています。
現在進行形でやっていること ということです。
上で書きましたが、1回し目と似た、若しくはおんなじ個所があります。「歩き続けた」と「笑い続けた」、「一つ一つ」、「大丈夫」です。歌詞内容の構成もどことなく似ていますね。歌いやすさ、覚えやすさにもつながります。
また、歌詞を書く上でも考えやすいです。2回し目が思いつかないという時は、1回し目の構成や、てにをはの箇所から考えてみるのもいいかもしれません。



「君と僕を繋ぐ境界
七色に響かせていく
向かう先が それぞれでも
進んでいこう
どうしようもなく今を生きてる
この声が届くかぎりは
幸福だと 言えるように
ただ願おう Virtual to LIVE」



2回し目のサビです。ここでも1回し目のサビと少し変えるという手法が使われています。
「繋ぐこの糸」が「繋ぐ境界」、「掻き鳴らしてく」が「響かせていく」、「見てる先」が「向かう先」「歩いていこう」が「進んでいこう」、「届く未来が」が「届くかぎりは」と似た印象を持つ言葉に変えています。
同じ言葉をできる限り使わず、それでもイメージが変わらないような言葉選びをすることでサビとしての全体のまとまりを崩さずに、同じ過ぎてつまらないというのを防いでいます。


「手を合わせた 窓の向こう
君のその笑顔まで
少しでも 伝えたくて
遠く遠くに叫ぶ
いつまででも いつからでも
くだらない話で笑おう
君の 近く
もっと 近くに行くから」



Dメロです。ここでのDの役割はラストのサビへ向けて、熱量を上げる というものになっています。
窓という上で使われた単語を使うことで、物語が続いているというイメージを持たせています。
「君の近く もっと近く」と 近くという単語をわざと2回使うことで、絶対に行くという意志に対してより熱量を含ませています。 


自分の場合、使う単語の数は基本的に、一人称なら1~3回、それ以外なら1回~2回というのを決めて書いています。
あまりに使いすぎると、くどい様に感じてしまうからです。 それでも印象的にしたい単語なら使いつぶすくらい使いますが。
なので、同じ単語が同じ節の中で何度も出てくるということは、それだけそこに対して 熱量が欲しいんだ という解釈をしています。

「君と僕で作り上げてく
七色に輝く世界
見てる明日が それぞれでも
歩いていこう
どうしようもなく今を生きてる
この声が届く未来が
幸福だと 言えるように
ただ謳おう Virtual to LIVE」


最後のサビも上のサビ同様、一部の言葉を変えています。
大団円感を出すために、より壮大なイメージになっています。糸、境界、世界と規模が大きくなっていっていますし。
他の箇所は1回し目のサビと同じになっています。ポップスのサビは同じ言葉を使う時、1回し目と3回し目を同じにして、2回し目を違くするのが王道なのかなと思っています。まったく同じサビを離すことで、飽きを回避しつつ、一周回ってきた感じを出すことができます。


「La La La La La La La La La
La La La La La La La La La
La La La La La La La La La
La La La La La La La…」



そして最後は全員でハミング。合唱曲っぽくていいですね。
この曲は男女関係なく、誰でも歌えるようにハイやロウになりすぎないようにしたり、歌いにくさを回避させたり、覚えやすい歌詞にしたりとアーティストに対する配慮が所々で見えます。
自分で歌う場合や、ボーカロイドに歌わせる場合は無理ができますが、人に歌ってほしい場合は、音域や歌いやすさも考えながら制作しましょう。 歌詞のはめ方が難しい場合、歌ってみせるのも一手です。勿論、やりたいと向こうがOKした場合は挑戦していいです。


にじさんじを含め、vtuberは最近、自分も見ています。ニコニコなど見てきた自分からすると、少しの懐かしさと新しさを感じます。あの時代から続いているものが、媒体や姿見が変化しているのだと思うと、とっつきやすいかもしれません。

以上。乱雑かとは思いますが、長文を読んでいただきありがとうございました。これが正解かどうかは分かりませんが、ちょっとでも考察や作詞の勉強の参考になればと思います。気づいたことや、修正箇所などあればまた修正してまいります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?