間違ってても伝えたいこと…
彼女はとても傷ついていた。
生ける屍の様にと言うのはきっと今の彼女のことをいう。ただずっとぼーっと過ごしていた。何を話しても目も合わせず少し微笑むだけ。その微笑みがカラカラしててに話しかけると僕の心には後悔がやってくる。
「大丈夫」そういう彼女は全く大丈夫なんかじゃない。カラカラした声でそう何度も言う彼女は、自分に言い聞かせるでもなくただ機械的に、まるでお店に入ったらセンサーでいらっしゃいませという機械の様に大丈夫と言う。
僕は彼女とまた話をしたいのにそれは全く伝わらない。カラカラの彼女がまたみずみずしくなる様になにかで君を満たしたい。君にとってのそれは何なんだろう。
半年間ずっとそばにいてずっと話しかけても彼女はまだ大丈夫とカラカラした声で言うだけ…僕の声も気持ちも行き場がなくてシャボン玉の様に彼女の大丈夫で弾けて何もなくなってしまう
彼女を傷つけたやつはそんな事忘れたかの様に普通に生活してるのに彼女はあの時のまま時間が止まってしまっているかの様で……奴が何事もなく生活してるのを見るのを見ると悔しい気持ちになる。
ある日カラカラの彼女と話した帰り道彼女を傷つけたやつを見つけた。普通に生活してわらっているのを見てイライラして僕の頭は何故なぜ何故ってなった。
お前も苦しめ。
カラカラになった彼女を思いながらぼくは気付けば奴に馬乗りになり殴り続けていた。初めの1発は気持ちがあったのにその後は周りが止めに入っても関係なしにゼンマイじかけの猿の様にただただやつを殴り続けた。
僕は間違ってる。彼女がカラカラになってしまって悔しくてもそれが奴を殴っていい理由にはならない。間違ってるのはわかってるのにどうしてもとめられなかった。そんな事しても彼女には何も伝わらない。その事を知ってしまったら彼女は忘れようとしていたのにまた思い出してしまうかもしれない。もっとカラカラになってしまうかもしれない。警察の中で僕はそんな事をずっと思っていた。
翌日傷だらけの僕は彼女に会うのを躊躇ったけどいつもの習慣で気づけば彼女のところへ向かってた。どうせ僕の方なんて見ないんだし…そう思って彼女に会う事にした。
いつも通り彼女に話しかける。どうせまたきっと彼女は大丈夫と目を合わせずに言うだけだ。目を合わせずににカラカラな笑顔をつくる。そう思いながら話を始める。
すると彼女は僕の方を見て「ありがとう」と小さな声で言った。一瞬の出来事だった。僕は間違えてたのに……彼女はカラカラなのに奴らが普通に生活してるのをみて間違えてもいいから苦しめたかっただけなのに…間違えてた僕に彼女は聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう言った。
すると突然今まで痛みを感じてなかった傷が傷み始め体中が痛くなってきた。体のいたるところに痛みを感じやつとの争いの激しさを実感した。殴られて殴ってってしてる間僕はずっと彼女の事を考えてた。カラカラした彼女がずっと頭の中にいた。間違えてるとわかっていながらやめられなかった。痛みなんてなかった。ただ彼女を次は僕が傷つけてしまったかもしれない。そう思うと伝え方もやり方も全部間違えて行き場のない僕の気持ちがふわふわとシャボン玉の様に揺れてパチンと弾けた。何もそこにはなかったかのよくに…
なのに今日彼女と目があった。彼女が大丈夫じゃなくてありがとうと言った瞬間、僕の身体中の傷やあざから痛みが噴き出した。彼女はそのあとまたカラカラになったけど。
翌日からも彼女はカラカラで僕と目も合わせず俯いたまま「大丈夫」という。カラカラの笑顔をつくっても目は合わせない。それでも僕の中では何かが変わっていく様な気がした…あの日を境に何も変わってない様に見えるけどゆっくりとゆっくりとそおっと何かがすでに変わり始めてる様な気がしている。ぼくは間違えてでも君を守りたい。間違えててもキミに伝えたい…
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