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フリーデザイナーの人生設計 その3 営業先を見つける

フリーランスのグラフィックデザイナーはどのように営業先を開拓すればいいだろうか?もともと営業が苦手だからフリーランスになったという、矛盾した状況の中で、それでも背に腹は代えられないので定期的に営業しなくてはならない。会社を辞めて二十数年。営業が苦手なデザイナーの経験談も交えて紹介したい。

理想は紹介

当たり前の話だが、理想は知人や紹介やが一番堅い。少なくとも最初はそれなくしては、食っていけない。最低限のツテがなければ、会社を辞めてフリーになることはリスクが高すぎるだろう。今でも売上げの多くを占めているのは、知人や仕事先から紹介してもらったクライアントが多い。しかし、10年20年、それだけではなかなか広がっていかない。特に人付き合いが苦手なタイプはなおさらだ。それならばどんな営業先があるだろうか?

フリーランスの仕事先とは

フリーランスのグラフィックデザイナーの仕事先は大きく分けて二つだ。一つはクライアント直。もう一つは代理店など間に何かしらの会社が入るパターンだ。大企業とクライアント直というのはなかなか難しい。多くのフリーランスがクライアント直という場合、個人、中小企業などが多いのではないだろうか?WEBデザイナーではそういうパターンが多いような気がする。いい会社と取引できれば、それに越したことはないが、それこそ紹介などでもなければ、ちょっとリスクが多い。ホームページで仕事を受けるような業態のデザイナーは、そうしたリスクをうまく対処しながら経験を積んでいくのだろう。残念ながら私はそういったパターンで仕事をしたことはない。
二つ目のパターンは、より一般的だ。代理店、印刷会社、制作会社などの外注先として働くのである。特に社内に制作部門がなく、外注で仕事を出すことがスタイルとなっている会社と仕事が出来れば、複数の担当者から定期的に仕事を受注できる。フリーランスにとって理想的な営業先だ。

どうやって営業先を見つけるのか

では、どうやって営業先を見つけるのか。ズバリ、検索するしかない。「グラフィックデザイナー」「外部スタッフ」「外部パートナー」「外注スタッフ」などなど。都内近郊ならば、結構な数がヒットするだろう。ただその先がどんな仕事をして、本当に需要があるのかを見極める必要がある。コロナ禍の今、正直営業自体が難しい状態にある。全く見ず知らずの人間に一度も合わずに仕事を出すのは勇気がいるだろう。以下、私の経験はコロナ前の、少なくとも相手の企業に面談できていた時代の話になる。
会ってくれるかどうかは相手が決めることだから、検索に引っかかった企業には片っ端にメールを送るのも手だが、ホームページを見ればも少し詳しい情報が見えてくる。多くの企業は実績やWorksなどのページで自分たちの手がけた仕事を紹介している。グラフィックデザイナーと一口に言っても、私の場合、広告や比較的少ないページのカタログやパンフレットなどが専門だ。ホームページを見てみると、グラフィックデザイナー募集とあっても、パッケージやPOP、エディトリアルなど私の専門外の仕事が中心の会社も多い。そういったところには、無理にメールを打っても、あまり興味を示してくれないだろう。
また、その企業がどんなスタイルで仕事をしているかも知っておく必要がある。採用ページでデザイナーの新卒募集があれば、社内に制作部門があることになる。ディレクター募集のみなら、制作は外注のみの会社の可能性が高い。一見、普通の企業のように見えて、実は個人事務所だったなどと言うこともある。実績や会社概要、住所までも見ながら判断し、より自分にあった会社を見つけよう。
ホームページの作り方にもヒントが隠れている。きれいに作ってあり更新も頻繁なサイトは、常時外注先を探している可能性は高い。しかしそういった企業は逆によほどの人材でなければ、新たに会ってみようとはならない場合もあるし、少々ブラックで安さ優先の仕事しかない場合もあるので、一概にいいとは言えない。逆に更新の滞っている感じのサイトは、ただ掲載しているだけで、外注募集はあまり積極的ではない場合が多い。ただ、そういうところと上手くタイミングや需要がマッチングすれば、実はいい営業先のことがあるのも事実だ。
私の一番のメインクライアントも、今でも外注募集のページがあるが、新しく外注先を見つけたという話はここ10年くらい聞かない。つまり募集してるが、よほど気になる相手でなくては、会ってみようとはならないのだ。だから、そういった一見地味なところにもメールを数打つことが大事で、何十件もメールを送って一件くらしか返事がないと言うことも覚悟しておくべきだ。そhしてタイミングも重要だ。1度ダメでも数年後には担当者も企業の実情も変わっているかもしれない。同じ会社に再度応募してみるのも無駄ではない。

まずは見てもらう

多くの場合、外注募集のページはフォーム形式になっている。文面は当たり障りのない文章を事前に用意しておけばいいだろう。大事なことは自分のホームページを見てもらうことだ。許可をとる関係で掲載しづらい作品もあるだろうから、作品ページにはパスワード設定したり外部に非公開にする。見せたい作品をすべて見てもらえる状態にしておこう。難しければ、ポートフォリオをPDFにして、ダウンロードしてもらうようにすればいい。
ただ数を見せるのではなく、やはり質が大事だし、見せ方も重要だ。ページものなら見栄えのするページを選んだり、営業だから時には実際に出稿したものにちょっと手を加えてもかまわない。例えば没になった案も、立派な作品だから世に出ていなくても人に見せるだけなら自由だ。

商談にこつはあるのか

相手が興味を持ってくれて、直接面談と言うことになれば、仕事に結びつく可能性は大きい。面談にコツがあるのかと聞かれれば、正直わからない。面接の結果、仕事をもらえなかった場合、その理由を聞くことはできないからだ。しかし感覚として、よほど印象が悪くない限り、面談前に作品を見て先方は大方決めているのだと思う。あとは金額の確認や仕事の進め方などの確認だ。仕事をもらえなかった場合の理由の多くはタイミングの問題のような気がする。また、一部の企業はとりあえず、可能な限り全員に会うというスタンスの場合もあるので、そういう場合は相性が悪かったと諦めるしかない。
直接会うことで、こちらが初めてわかることは多い。相手の会社の規模や、外注先に求めるもの。実際の取引先や仕事内容などだ。そういったことを知るとおのずと仕事が来そうかどうかもその場でわかってくる。需要がわかれば、それに応える実績や経験があること(あればだが)をその場でアピールしよう。またそのとき縁がなくても、数年後、実績が変われば状況が変わることもあるだろう。

まとめ

自分の営業の基本はこうした外注募集への応募だ。なれてくれば次第にホームページを見て、実際の企業の実情が読み取れるようになる。そうなれば、募集をしていない企業へのアプローチも無駄ではない。どの企業のサイトでもお問い合わせのページはあるので、確率は低いかもしれないが、特にこれはという会社には募集がなくても問い合わせてみるといいだろう。ここまで読んでいただければおわかりかもしれないが、営業の苦手なデザイナーにとっては、一にも二にもポートフォリオが大事と言うことになる。口が上手いだけのデザイナーを欲しがっている企業はないからだ。しかし知らない優秀なデザイナーよりそこそこの気の知れたデザイナーの方が使いやすいと言うことも事実だ。

クラウドソーシングについて

最後にクラウドソーシングについても書いておきたい。フリーランスになるとやはり仕事のあるなしは不安になる。精神安定の意味で登録しておくのはいいかもしれないが、クラウドソーシングで食べていくのは現実的ではない。特にコンペは、個人的な感想として参加するだけ無駄なような気がする。しかし、地方に住んでいるとか、年齢や経験などからクラウドソーシングしか選択肢がない人もいるだろう。やるからには本腰を入れて研究すれば、ブラックなクライアントの見分け方(ほとんどのような気がするが…)、より受注できる方法など見えてくるかもしれない。またクリエーター専門のエージェントも存在するが、多くがWEB系やゲーム、UI/UXなどエンジニアリングに近い仕事が中心で、グラフィックデザイナーの案件はほとんどないのが実情のようだ。

フリーランスの準備3 就業補償保険

フリーランスにとって健康は最重要なテーマだ。事故や病気で仕事が出来なくなれば、即座に収入が途絶える。そんなときのために最低限の就業補償保険には入っておきたい。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)に加入すると民間の就業補償保険に団体割引で加入できる。またGMOのフリーランス向けサービス「フリーナンス」も非常に安い掛金で就業補償を受けられる。いずれも他の生命保険同様、健康状態の審査はあるので、若いうちに加入しておくことがお勧めだ。


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