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フリーデザイナーの人生設計 その1 はじめに

私が会社を辞めてフリーになったのは、もう二十数年前である。当時はMacの黎明期。デスクトップパブリシングという言葉が広まり始めている頃だった。それ以前は、デザイナーにフリーという概念はなかった。一人前になったデザイナーやアートディレクターが新たに事務所を起こす、いわゆる独立である。都心に事務所を借りて、OA機器一式リースして、スタッフも雇ってという具合だ。しかしMacの登場で、机ひとつあれば、自宅でも仕事ができる時代がやってきた。
そんな時代からフリーランスのデザイナーを続けている私の人生設計とはなんだったのか、振り返りながら書いていきたい。半ば昔話のようになるかもしれないが、ご了承願いたい。

そもそもフリーランスになるつもりはなかった

そんな当時の状況であるから、当初会社を辞めてからフリーランスとして働くつもりもなかった。深夜残業の連続に正直疲れたので、しばらく休んだら転職先を探そうと思っていた。柄にもなくサイパンでバカンスを楽しんだり、のんびりしていた。実際、当時の社長は私が単に疲れて休息をとりたいがために、辞めるなどと言い出して、きっとしばらく休んだらまた戻ってくるだろうと思っていたらしい。
しばらくすると、ちょっと仕事を手伝ってくれないかと、会社から声がかかるようになった。

実は家でも働けることに気づく

元の会社から仕事をもらって気づいたことは、今までやっていた仕事が家でもできると言うことだ。しかも給料の何倍ものギャラが入る。そうこうしているうちに、以前から取引のあった印刷会社の営業さんから、仕事をしないかとのお誘いをもらった。カタログやパンフレットなどの仕事だ。以降、その会社がメインクライアントになっていく。四畳半の部屋を仕事場にして、A4のインクジェットプリンターひとつで始めた仕事、これが今で言うフリーランスデザイナーだったのだ。

フリーランスで生きていく決心

フリーランスで生きていく決心はなかったが、当初、仕事は順調に入ってきて、収入はサラリーマン時代の倍以上になっていた。通勤もしなくていい、上司の顔色もうかがわなくていい。いいことずくめの仕事環境で、このままいけるなら行きたいという思いだった。20年後、30年後の人生設計など考えてもいなかった。
今のデザイナーはどうなのだろう?同じようなパターンもあるだろう。辞めた会社のつながりで当初は仕事を始める人は多いだろう。中にはほとんどキャリアがないのにフリーになる人もいる。私のところにも何度か、相談に来る若者がいた。大体は会社勤めになじめないタイプだ。人の事はいえないのだが、せめて一人前のキャリアを築いてから辞めた方がいいと忠告する。残念ながらフリーランスになってから自分のスキルを伸ばすのは、会社勤めで先輩からの叱咤激励の中で過ごすのと比べると、かなり大変なのだ。

まとめに

今回は私のフリーになった当時の話を書かせてもらったが、こんな中途半端な思いでフリーになった私でも、数年もたてば将来のことに不安を抱くのも当然だ。長いフリーランス生活の間に、メインのクライアントがなくなるなど、危機も幾度かあった。そもそも今、コロナ禍で、しかも私は50代半ばのフリーランスである。ちょっと先の状況も見渡せない。デザイナーとしては老齢にさしかかった、私の不安と試行錯誤の歴史と今後の人生設計を考えることで、同業者の参考になれば幸いである。

フリーランスの準備1 健康保険

このnoteではフリーランスのデザイナーになるにあたって準備するべきことを、紹介していきたい。健康保険や国民年金などはまず、考えなければならない最初の手続きだ。特に国民健康保険の高さには最初驚くことだろう。多くのサイトでも紹介しているが、デザイナーであればお勧めは文芸美術国保への加入だ。加入には加盟団体への所属が条件となる。グラフィックデザイナーなら日本グラフィックデザイナー協会(以下JAGDA)である。私はなぜか会社員時代から上司のすすめで加入していたが、加入には実務経験とJAGDA会員の推薦が必要である。知り合いにJAGDA会員がいない場合でも相談に乗ってもらえるようだから、デザイナーとしての実績があれば、問い合わせてみるといいだろう。収入が300万円以上あるのであれば、文芸美術国保の方がお得だ。


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