【読書記録】2021年4月(後半)

ごきげんよう。ゆきです。

4月後半の読書記録です。今月は学校が舞台or学生が主人公という基準での選書なのですが、なんと傑作揃いなこと!大満足だった前半に続き、後半も唸るほど良い作品に出逢えました。

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オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。

4月前半で『神様ゲーム』を読み「麻耶雄嵩さん凄いな……?!」となったので続けて選書。こちらは大学生が主人公。

あまりにもお決まりの舞台設定なので、序盤は「あれ、ちょっと期待してたとの違うかも」と思っていた。ミステリーの読みすぎからかメインの叙述トリックは早々に勘づいたし、「この人カギ握ってるな」と思った人物はずぶずぶに絡んでいったし。しかしそこは巨匠、最後の最後まで予想不可能な展開が続き、結局すっかり筆者の手の上をコロコロさせられた。ちょっと無理矢理な仕掛けも、『神様ゲーム』で慣れていたので特段気にならない。むしろそこが麻耶雄嵩の味だと思っている。

本書で気がついたのは、叙述トリックで騙されるのは読者だけではないのだということ。もしかしたら私たちが得ている情報が、登場人物には知らされていない可能性だってある。そんな可能性を鮮やかに見せられ、目からウロコが落ちた。どうやったらそんな発想が生まれるのか。

秀逸だったのはエピローグ。色々な考察があるらしいが、私はイニシャル説を推したい。気付いた時の「うぉぉぉおおおああああ?!?!」という私の雄叫びが、誰かに伝染したら嬉しい。ネタバレになってしまうから詳しく語れないのがもどかしいので、もしこの読書記録を読んで『螢』を手に取った方がいたら是非教えてください。語りましょう。

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小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。

読書記録を始めてから、コンスタントに米澤穂信さんの本に手を出すようになった。これで4冊目だが、本当にこの著者は本によって印象が変わるから凄い。カメレオン俳優ならぬカメレオン作家。

本書を読み終えた感想は「平和〜〜〜!」だった。誰も死なない日常系ミステリだが、美味しいココアの作り方や試験中に突然瓶が割れた理由など、本当に害も何もないゆる~い展開。でもちゃんと筋の通った推理が展開されたり、登場人物の過去などがちょっと匂わせてあったりして、まんまと続きが気になってしまった。文章の読みやすさは本書でも健在なので、既刊を一気読みしてもあっという間に読み終えられそう。

『氷菓シリーズ』が好きな方は、おそらくこのシリーズもハマると思われる。

個人的には、米澤作品はライトミステリじゃない方が好き。ちょっとクセのある高校生の日常より、がっつり本格の方がより著者の魅力を詰め込める気がしている。まぁ何を書かせても結局面白いのだけれど。次は何を読もう。

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夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

『神様ゲーム』といい本書といい、小学生が主人公のミステリーを何故ここまで絶望的な物語にしたのか。小一時間ぞれぞれの筆者に問い詰めたい。

中学生の頃だったか、突如父親が私の部屋に入ってきて「面白かったよ」と置いていったのがこの本だった。日頃から父親とあまりコミュニケーションを取る方ではなかったのだが、私の感性は完全に父親譲りなので面白いと思った本はよく貸し借りをしたものだ。懐かしい。しかし当時の私は内容に惹かれず、読むことがないまま家を出てしまった。月日は経ち、今月読む本を選書中に非常に評価の高い本書と再会し、次に父親と会った時の話のタネになれば、という気持ちも込みで選んでみた。

内容はあらすじの通りで、それ以外を述べようとすると要らぬことまで書いてネタバレを踏みそうになるので、あまりここに記すことは無い。ただ、めちゃくちゃ面白かったということは明言しておく。読みやすい文体で初めからサクサク進むのだが、後半の怒涛の展開で「いや、もうちょっと整理する時間ちょうだい!!!」と思うくらいスピード感がすごい。最終章はあえてゆっくり、1文1文をしっかり消化するように噛みしめながら読み進めた。

叙述トリックというかなんというか……もう何も疑わずにクリーンな心で読んでほしい。幾多の驚きの後、途轍もなく重い気持ちで読了することになるが、この読書体験はしておいて損はない。

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今月の選書テーマ、大正解でした。ハズレがない、なさすぎる。時機を見てまた同じテーマで選書する月を設けようと思っています。読みたくても読み切れていない本がまだたくさんあるので。

来月の選書テーマは「短編集」。最近長編の比率が高くなっていたので、いっそ1カ月間短編縛りしちゃおう、という咄嗟の思い付きです。ひと月短編ばかり読んだら、いったい何話読めるのでしょう。わくわくです。

今月もお付き合いいただきありがとうございました。

またお会いしましょう。ゆきでした。

See you next note.


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