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夜陰(140字小説)

夜が好きだ。
陰であればあるほど胸が高鳴る。
夜陰に乗じて、一人ハイヒールで歩く時のトキメキは格別だ。
コツコツという音が、やがて恍惚を伴い、脳を経由して、いつの間にか私自身がハイヒールの音そのものになる。遠く近く、やがて夜陰と同化する。
この激しくも静寂でさえある時間を楽しめる幸せよ。


とは言え、ひとりの夜歩きは怖い。
一緒に歩いてくれるのは誰?
妖怪よりも、幽霊よりも、怖いのは人間かしらね。

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