うろ(樹洞) ショートストーリー 836文字
私が幼い頃から通い慣れた道に、大きな木がそびえている。何の木か知らないままに、私は老人になってしまった。木にとっては60年、70年はあっと言う間であったのだろう。
私はこの大木が幼い頃からずっと好きだった。悲しい時、悔しい時、寂しい時、そう、いつだって木は私の内にも外にも寄り添ってくれたのだ。
木登りができなくなって久しいが、木の温もりは、私の幼い頃と変わりないように思える。
この木には私の目と同じくらいの高さに、赤児の頭ほどのウロがある。大きめのお椀が半分だけ木にくっつ