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シーカヤックでの長く短い旅

   9月10日〜12日に、先日と同じく自然環境リテラシー学の活動に参加させていただきました。今回の活動場所は鳥羽の海です。前回のマリーナ河芸ではカヤックで港周辺を1周するだけでしたが、今回はカヤックに必要最低限の荷物だけを詰めて沖に出て、離島を巡る片道約15kmの旅に出かけました。

1日目 9/10(土) 小浜港〜答志島

   この日は天気も良く風も少ない、まさにカヤック日和でした。小浜漁港近くの広畑に集まり、まずはガイダンスです。波や風を遮る物も障害物を防いでくれる物も無い、ありのままの海に出るだけあって、より一層天候の判断と諸注意が欠かせません。ルートを確認するための海図は初めて見る物で、いよいよ本格的なシーカヤックでのツーリングをするんだなと実感しワクワクしました。また、鳥羽市水産研究所の岩尾さんから海藻のお話を聞かせていただきました。近年、浜にテトラポットができたことや、農薬が使われなくなったため畑から窒素化合物などの栄養が海に流れ込まなくなったことにより、三重県をはじめ全国各地で浜の海藻が減少してしまっているとお話されていました。ヒトの安全を守るための改善策が生態系にとっては必ずしも善ではないからこそ、やはり自然とヒトとの共存は難しいのだなとつくづく思いました。
 
    昼食を終え、荷物をカヤックに詰め、いよいよ出発です。この日は答志島まで向かいました。自分は2人乗りのカヤックに先輩と乗せていただきました。海に出るとすぐに漕ぐ感覚を取り戻し、他のメンバーにもなんとか着いて行くことができました。また前回はカヤックが少し揺れる度に怖がっていましたが、今回は水面を滑っていく感覚の心地良さ、腕の疲労感、そして何より景色の美しさの方が勝りました。

答志島に行く途中、休憩に訪れた無人島で撮影。
人生初の無人島上陸でした。


   

答志島に行く途中、休憩に訪れた無人島で撮影。
スマホ用防水ケースの性能には驚きです。


   

   鳥羽は海の水が非常に澄んでおり、島々は緑豊かです。この日の良天候もあって本当に素晴らしい景色を拝むことができました。写真に収められなかったのが非常に残念なのですが、特にカヤックを漕ぎながら見た水平線の景色は別格でした。波風の優しい音と他のメンバーの僅かな話し声以外の音は聞こえず、穏やかな波の動きや日光の反射、遠くに見える山の青、昼と夕方の間の少し白んだ空が合わさり、文字通り夢のような景色を描いていました。
   もちろん鳥羽の海の魅力は景色だけに留まりません。この地域の地質が関係しているのか分かりませんが、浜辺は赤、ピンク、青、緑、黄、白など色とりどりの小石で溢れています。石を眺めるだけの1日を過ごしていたいほどです。
   
    約8kmの旅を経て答志島に着きました。ここまで誰も人のいない大海原をただひたすら進んでいたので、港があったり車の音がする人の住む島がなんだか新鮮に感じました。浜にはミズクラゲが沢山いました。今回の活動で最も沢山見た生き物は間違いなくミズクラゲです。これだけ沢山いるのだから夕食の材料になってくれないかなと思ったりもしました。
   夕食を終え(クラゲは食べてません)、カヤックのスペシャリストの鈴木さんからお話を聞かせていただきました。大怪我を乗り越え生きることの素晴らしさを知ったこと、様々な世界の国々へカヤックで向かい自然の偉大さを知ったことを聞き、こんなに素晴らしい生き方があるのだなと、また一つ世界の見方が広がりました。

ちょうどこの日は中秋の名月でした。
しかしあまりにも写真が下手です。

2日目 9/11(日) 答志島〜菅島

   この日も清々しい天気。しかし前日より少し風が強く、波が高くなっていました。この日は答志島の泊まった場所から約7km離れたところにある菅島の港へ向かいました。
   岸に沿って進んで行くので、大小様々な岩が行く手を阻みます。波に流されそうになったり、岩を避けられるか心配で焦ったりもしましたが、さすがは先人の叡智が生み出したシーカヤックです。落ち着いて体のバランスを保ち、パドルを正しく動かしさえすれば、ちゃんと思い通りの方向に進んでくれます。そう言えば、前日のお話で拝聴したのですが、カヤックは元々アザラシの皮を縫い合わせて作られており、当時から形状はほとんど変わっていないらしいです。昔の人は数式や教科書を使わずとも力学を理解し、最適な形の舟を開発できたのだと考えると、人類の叡智は凄まじいなと改めて思います。

   漁船で賑わう菅島の港に着き、昼食を終え、次は菅島の小学生たちに向けてのシーカヤックの講習会です。少し前に教えられたばかりのことを、今度は自分たちが早くも教える側に周るということで、ちゃんと教えられるかやや不安もありました。しかし、パドルの漕ぎ方は自分の体が覚えてくれていたので難なく教えることができました。その上、菅島の小学生たちは健気で明るい良い子達ばかりで、とても話しやすかったです。また、実際にカヤックを体験してもらった際、誰も怪我をしなかったので本当に安心しました。

菅島の漁村で撮影。独特の雰囲気がとても好きです。

   本来なら3日目の朝にはここまでの約15kmの道のりを引き返してカヤックで小浜港まで戻るはずだったのですが、途中から体調を崩してしまったため、苦渋の決断で自分だけ菅島〜近鉄鳥羽駅の連絡船で帰ることになりました。

3日目 9/12(月) 菅島〜鳥羽駅

   

菅島の港で撮影。自分もこんな素敵な場所で
小学生時代を過ごしたかったです。


   体調悪かろうがやっぱり鳥羽の海は綺麗だな、と思いながら連絡船に乗っていると、気がついた頃にはもう鳥羽駅に着いていました。当たり前かもしれませんが、自分がここまでカヤックで頑張って来た道のりが、大きな船ならこんなにも早く行けるということがかなり衝撃でした。けれども大きな船の中では、パドルで水を押しのけていく感覚、そして波や風、目の前の景色との一体感は味わえません。やっぱりカヤックでの旅ができて良かったなと心から思いました。

   最後になりますが、私が体調を崩した時に気にかけてくださり助けてくださった先生方、先輩方、インストラクターさん方、そして他のメンバーの皆様、大変お世話になりました。ありがとうございました。

   ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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