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楽しくて美味い一日

友人が車を乗り換えた。彼とは学生時代や独身時代はよく遠距離ドライブをした仲だったので、乗り換え記念に久しぶりに遠くに行こうという話になった。

長野や栃木など、これまでは日帰りギリギリで行ける場所に行っていたが、もうお互い家庭を持っているということもあり、比較的に近場の千葉に目的地を定めた。
事前に決めたのは集合時間が8時ということと、鋸山に登ること。あとは成り行きに任せる。彼と遊ぶ時はいつもこんな感じだった。


当日、きっかり時間通りに到着した彼の車はミニバンだった。
「お前がミニバンに乗り換える日が来るとはねー!」
「もう利便性しか考えてない。本当に乗りたい車は子どもが自立したらかな」
そんな会話をしながら短い旅が始まった。久しぶりの助手席だ。それだけでも特別感を感じた。

まずは鋸山を目的地に定めて車を走らせる。
彼は運転が抜群に上手い。上手いというより運転の運が良いという表現の方が正しいのかもしれない。彼が運転していると不思議と渋滞に巻き込まれることがないのだ。

今回も当日は日曜日。場所や時間帯によっては混んでいてもおかしくない日で、目的地も行楽地。でも全く混んでいない。快適そのもの。
お互いの身の上話をしているうちにあっという間に鋸山に着いた。鋸山山頂までの道のりがジュラシックパークのワンシーンみたいでおじさん二人で興奮した。

鋸山という名前だけあって、断崖絶壁だった。その日は晴天だったこともあり、360度全て絶景だった。
彼は高所恐怖症だった。久しぶり過ぎて僕はそのことを忘れて鋸山を提案していた。現地ではっと気づいたのはここだけの話。

あらかた見終わって下山。
もうこのあとは完全にノープラン。まずは昼飯だ。
「とりあえず海岸線をひたすら走りながら良さそうな店を見つけよう」
そこから1時間海岸線を走りながら飯どころを探した。景色が良く信号が少なくて、ドライブには最適な道だった。

「あの寿司屋はどう?」
看板をみつけた。その案内通りに右折して小道に入って行った。しかし外観だけでは開店しているか微妙な雰囲気だった。
道路が狭かったので少し開けたところまで行ってからUターンして再度確認をすることにした。そのまま道を進んでいくと漁村が見えてきた。それと同時に食堂の旗も視界に入った。そのまま横を通り過ぎた。

その瞬間
「ここがいいな!」
僕が言おうとしていた言葉が友人から発せられた。満場一致で場所が決まった。

Uターンをしてお店の前に着いた。駐車場の場所がわからなかったので、先に僕が降りて店内に入った。
「いらっしゃいませー!」
数キロ先の人にも聞こえそうなハキハキとした声が厨房から聞こえてきた。声が大きいのではなく通る声ってこうゆう声なんだな。
そんなことを思いながら駐車場の場所があるかを聞くと
「ご案内します!」
どこまでも爽やかで聞き取りやすい声で案内してくれた。

友人も到着して席に着く。
まだ注文すらしていないが、この店まで粘って良かったと2人は確信していた。僕は刺身定食を、友人は魚のフライ定食をオーダーした。地魚100パーセント利用という謳い文句がなんとも言えない魅力を放っていた。

もう本当にこの定食が抜群に美味しかった。
メインの刺身は鮮度抜群で食感も味も見た目も最高だった。小鉢や味噌汁など付け合わせまで全てが美味くてご飯が進む。元々結構良い盛りっぷりのご飯をおかわりしてしまった。
締めに頼んだアイスコーヒーはこの地域では有名な珈琲屋さんのものを使用しているらしく、これまた絶品だった。

鋸山に登り、この食堂でご飯を食べることができて、もう完全に満足してしまった。
今日はこのお店を見つけることができただけでも大収穫だ。
そんな充足感をたっぷり感じさせてくれる、とても素敵な定食屋だった。

その後も海岸線をまったり走り続けた。このまま茨城まで行ってしまいたい気持ちをぐっとこらえて帰ろうとなったのは銚子だった。

帰り道も例の如く、彼の運転のおかげて渋滞にはまることなく、しっかりお土産を買う時間も確保しつつ、最後まで快適なドライブだった。別れ際にその日の走行距離を見るとなんと500kmを超えていた。
近場が良いよねと千葉にしたのに、走った距離はなかなかあったので二人で笑ってしまった。

後日、刺身定食の味が忘れられず、検索してみると、その定食屋はキャンプ場も併設していることがわかった。そして父娘経営していることを知った。あの店内に流れる阿吽の呼吸となんとなく落ち着く雰囲気の理由が理解できた気がした。
ドライブの日は留守番をしてもらっていた家族達にもあのお店の美味しい料理と雰囲気を味わってほしいと思い、キャンプ場の予約をした。

今からその日が楽しみで仕方ない。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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