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人生で一番たくさんの人に声をかけた日

「お父ちゃん、この看板って何?」

最近好奇心が益々旺盛になってきた長男が指を指しながら尋ねてきた。

その先にあったのは選挙ポスターの掲示板だった。
近日行われる選挙の準備のために至る所に掲示板が突如として現れたことに気づき、不思議に思っている様子だった。

どう説明したら良いか少し考えた後、みんなが住んでいる場所をもっと住みやすく楽しくしてくれるまとめ役を誰にするのかを考えて選ぶことが選挙で、その人がどんな顔をしていてどんなことを考えている人なのかを見るためのポスターを貼る板だということを伝えた。すると

「選挙ってどうやってやってるの?どんなことしてるの?」

と続いた。

この質問を聞いて、僕は選挙という言葉は知っていても実際にどんなことをしているのかは全然知らなかったことに気づいた。

「確かに…それはお父ちゃんもちゃんとわからないなぁ。今度図書館に行って調べてみようか」
と伝えた。

そんなことがあった数日後、SNSで選挙活動のボランティアを募集している情報をみつけた。

ボランティアを募集している場所は赤羽駅付近。東京都北区の区長選の一人の立候補者だった。百聞は一見にしかずと思い切って担当者に連絡をした。
すぐに返信が来た。選挙活動が始まってからは毎日できるだけたくさんの人手が必要なようだった。あいにく仕事の都合上一日しか行けそうにないことを伝えた。それでも手伝ってもらえるなら助かるという返答だったので行く手筈を整えた。

ボランティア当日。

僕は指定の時間より少し早く着いてしまった。とりあえず立候補者の事務所に行ってみることにした。昼休みの時間になっていて僕ができそうな作業は中断していたので、次の集合場所と時間を聞いて赤羽をぷらぷら歩くことにした。

昼の赤羽は初めてだった。これから手伝いが控えているので飲むわけにはいかない。カフェを探すことにした。
なかなか見つからなかった。赤羽の洗礼。

しばらく歩き回ってやっと見つけたお店でコーヒーを頼んだ。その日は気温が高かったのでテラス席を利用した。これから初めての選挙ボランティアをする。役割は立候補者の思いが込められたチラシを配ること。
いったいどのくらいの人がもらってくれるのか…少しドキドキしてきた。

しばらくゆっくりした後、指定の場所へ移動した。すでにチラシ配りの準備は始まっていた。とりあえず30枚ほど渡された。
さて、これがどのくらい捌けるのか…とりあえずやってみよう。

立候補者の名前と簡単な経歴などを伝えながら配っていく。最初は声をかけるのに恥ずかしさがあったけど10人を越えたあたりからは特に抵抗感はなくなった。
確か15人目くらいで初めてチラシを受け取ってもらえた。
嬉しくて、心の底から「ありがとうございます!」という言葉が自然と出た。
そこからはどうしたら受け取ってもらえる確率が上がるか自分なりに試行錯誤する時間になった。
声色や声量を調整してみる。自分の姿勢。渡す際の近づき方。言葉の内容…いろいろ試した結果、自分の中では3つのもらってくれるポイントを見つけた。チラシ配り上級者にとっては当たり前のことかもしれないけど…


まずはチラシの渡す向き。途中までは何も考えずに自分の方向に向けたまま配っていた。途中で相手側から見える向きで見せた方が見やすくて目に留まりやすいに決まってるよなと気づいた。
これだけで20人に1人くらいだったのが15人に1人くらいのペースでもらってくれるようになった。

次は挨拶だ。基本すぎる項目な気もするけど、どの世界でも基本は大事だと思う。
「こんにちは!」と最初にはっきり発して立候補者の名前や説明にすぐに入らず、一瞬の間を作る。
すると、もしかして私に声をかけてきてる?と意識や視線を向けてくれる人が多くなった。意識や視線を集めてから立候補者の名前と説明をしてからでも遅くはない。むしろ伝わっている感が格段に増した実感があった。

そして最後は目線だ。今この瞬間、あなただけに声をかけています。という風にしっかり相手を見ながら挨拶や立候補者の名前を発する。すると受け取ってくれなくても、会釈をしてくれたり、「もう受け取ったので大丈夫です」等々…
反応が返ってくることが多くなった。

いろいろ試しながらやったチラシ配り。ずっと動き回り言葉を発していたのでなかなか体力のいる作業だった。途中で雨が降ったのも影響があったかもしれない。
楽しかったがこれを連日行っている立候補者自身や支援者達の気持ちの本気度たるや…
これは何か強力で大きな思いがないとできることではない。そう思い知らされた。

その後、立候補者本人や支援者と少し話す機会があった。本気でこの地域を良くしたいという思いがひしひしと伝わってきた。きっとそれはどの陣営も同じなのかもしれない。
けれど周りの支援者の様子も含めて、今回関わった立候補者の熱はとても高くて素直に応援したいと思ったし、少しでも力になれたことが嬉しかった。

今回、ボランティアをするまでは、選挙の立候補者ってなんか胡散臭かったり、お金持ちっぽかったり…正直あんまり良い印象を持っていなかった。
でも、実際にその中に入ってみて、たった一日だけだけど、その強い思いや姿勢に触れる経験をしたことで、印象がガラッと変わった。

僕は北区には住んでいない。というか東京にすら住んでいない。なので写真を見ればわかるけど、あえてその人の名前は出さないようにしてこのnoteを書くことにした。
たくさんの立候補者がいる中で、それぞれが強い思いや志を持って、その地域…しいては日本を良くしたい、みんなが幸せになるにはどうしたら良いかを本気で考えながら選挙活動をしているということを目の当たりにしたからだ。

これからはどの政党だとか無所属だとか、そんなことは関係なく、チラシを配っていたらまずはもらって目を通すようにしよう。
もしもらっていたら「もうもらって拝見させてもらいました」って声をかけよう。
街頭演説をしていたら時間があれば少し聞いてみよう。

そんなことを強く胸に誓った。

長男の疑問から始まったこの一件。結果、僕にとってとても良い経験になった。
またこのような機会があったら今度は息子達も一緒に連れていって実際に経験してもらいたいと思った。

北区の選挙は明日4/23だそうです。
北区の方はぜひ期日前投票会場や当日の選挙会場に足を運んで自分が良いと思う方に投票してください。選挙に行かないのはもったいないです。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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