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海と薪の匂いに包まれて

この4月は異動先での仕事の流れに慣れるために覚えることや確認することがたくさんあった。それに伴って普段より業務量が増えて自然と家に帰るのが遅くなっていた。そんな日々の中、子ども達と関わる時間が減っていることをふと仕事帰りの電車の中で思った。
その週末は妻が友人の結婚式で不在になる予定の週だった。じゃあ思い切って息子達と3人でどこか遊びに行こうかな…
と考え始めてすぐに
「キャンプに行きたい!」
と自分の欲求が浮かんできた。

帰って息子達にキャンプに行かないかと誘ってみると次男は

「やったー!チーバ県の海の近くのキャンプ場行きたかったんだよねー!」

とノリノリだった。それには対し長男は

「お母ちゃんと4人で行ける日でもいいんじゃない?」

と少し寂しそうな様子だった。
じゃあ次の日の朝までにどうするか決めようと話をしてその日は終わった。
翌日もう一度聞いてみると

「やっぱり楽しそうだから行く!」

と長男も言ってくれた。
今思い返すともしかしたら行きたくてはしゃいでいた次男と僕の気持ちを長男は汲んでくれたのかもしれない。

ギリギリだったにも関わらず、奇跡的に目当てのキャンプ場の予約を取ることができた。僕のnoteで何度か出てきている千葉県の館山にある富崎館だ。

「富崎館なら船に乗ったお刺身食べられるよね?」

長男が刺身好きになったきっかけの場所だ。舟盛りなんて贅沢だけど、ここのものは新鮮で美味しいのはもちろんのこと、値段も本当に良心的でびっくりする。魚好きの方はぜひ一度行ってほしい。ちなみに舟盛りは要予約。

こうして3人での初めてのキャンプが急遽決まった。妻からは「冒険者だな…」と尊敬と呆れが入り混じったようなコメントをもらった。


当日の朝一で荷物の積み込みをした。いつもはパンパンになってしまうトランクルームだが、妻1人分の荷物が少ないだけで余裕があった。それをみて少しだけ不安になった。

行きの道中は後部座席のシートベルトの確認で千葉県警の高速警備隊に確認されたくらいで、(何事かドキッとしたが、子ども達にとってはシートベルトの大切さを知る良い機会になった)無事にキャンプ場に到着した。

今回は全サイトが予約で埋まっているとのことだった。このキャンプ場は犬同伴もOKなサイトが複数あるため、犬連れのキャンパーの利用客が増えているらしい。食堂自体にも看板犬がいるので安心して利用しやすくなっているのだと思う。今回も5つのサイトの中で2組が犬同伴でのキャンプだった。そのことを聞いて動物好きの息子達は嬉しそうだった。

食堂のご飯が本当に美味しいので、このキャンプ場を利用する時はキャンプ飯は翌日の朝ごはんくらいにすることが多く、今回も昼ごはんと夕飯は食堂にお世話になることにしていた。
親1人子ども複数のキャンプをするにはかなり有難い環境だった。

美味しいご飯を食べて、テントの設営を始めた。子ども達も軽いものを中心に運んでくれたり、ペグ打ちをしてくれたり…しっかり戦力になってきた。
そのおかげで思っていた以上に設営が早く終わり、夜ご飯まで時間があったので3人で散歩に行くことにした。

曇りだったが、薄いオレンジ色になっていく空の様子や、すれ違う住民の方に「どこからきたの?」と話しかけられて少し照れつつも話す息子達の姿を見ながら、普段よりゆっくりとした時間の流れを楽しんだ。

いい時間になってきたので戻って夕飯を食べることにした。
席に着くと長男が楽しみにしていた舟盛りが届いた。全種類を一口ずつ食べながら

「これはコリコリしてるね」
「マグロの味に似てる!」
「少し骨があるね」

と長男が食べ比べを始めた。その横で魚の唐揚げを嬉しそうに頬張る次男の姿があった。その光景を見てとても幸せな気持ちになった。

その瞬間、自分の高校時代の記憶が蘇ってきた。

僕も自分の息子達に負けず劣らずの海好き、海鮮好きだった。家族旅行なんてほとんど行かないような家庭だったが、年に数回美味しい海鮮を食べに三浦や千葉の方に行くことがあった。
その記憶は三浦の漁港での食事の場面だった。

息子達と同じように目の前に届いた海鮮丼を食べ始めた当時高校生の僕を見て、父が「美味いか?」と聞いてきた。

「うん、めちゃくちゃ美味い」

と僕は言った。
それを聞いた父は普段の仏頂面からは想像できないような優しい表情で

「良かった。お父さんはこれがあるから仕事を頑張れるんだよ」

と言っていた。ふーんとその時の僕は何も思わずに目の前のご馳走に意識が戻った。



今ならその時の親父の気持ちがわかる気がする。自分の愛する家族が嬉しそうに食べ物を食べる姿は何ものにも変えられない多幸感がある。
そんなことを唐突に感じて涙が出そうになった。

それを悟られないように美味しい料理を食べ続けた。

夕飯が終わると子ども達の二つ目の楽しみの焚き火を始めた。
その日はすでに食事は済ませているので焼きマシュマロとココアを用意して、3人で眠くなるまでゆったりと過ごした。

このキャンプを通して、子ども達2人の大きな成長した姿と、父親としてほんの少しだけ経験を積んでこれたという実感を確かに感じることができた。

子ども達が僕の遊びに付き合ってくれるうちに、こうゆう時間をできるだけ多く作っていこうと強く思った。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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