gumi

※ すべてフィクションです。遺書として書き始めた文章が、気が付けばこれまでの人生を振り…

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※ すべてフィクションです。遺書として書き始めた文章が、気が付けばこれまでの人生を振り返る記録になっていって、だんだん楽しくなってきたので、死ぬのはやめようと思います。

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【01】 希死念慮

9/25 ここ数日、ずっと希死念慮が消えない。何一つ不自由のない幸せな人生なのに。恵まれた家庭で愛情を注がれて育てられても、愛してくれる家族がいて、金銭面で困る経験がなくても、何故か自死に惹かれてしまう。寝ても醒めても消えない自殺のビジョンを振り払うのにも疲れたところで、逆に考えてみようと思って、具体的な自殺の計画を立てはじめたのが、三日前だった。 できるだけ人に迷惑をかけないように。人が死ぬというのは大なり小なり迷惑がかかるし、自殺では特に叶わない望みであるのは重々承知

    • 【31】 ヤマハ子

      本店のオンキョウは、私ともう一人の上司の二人で運営していた。少し年上の美人で性格もいい彼女を、怒っているのを見たことがない!という尊敬と愛着の気持ちでもって、心の中で「菩薩さま」と呼んでいた。今まで生きてきた中でダントツー位の素晴らしくデキた人だった。 汚点が一つも見つからないのに嫉妬心さえ抱かせない謙虚さもある、そんな彼女は、音大卒のピアノ弾きだった。 本店内だけで行う小コンサートは完全に身内イベントだったので、企画から開催まで、全てオンキョウの私たちで行うことになる。そ

      • 【30】 仕事事情

        一方でその頃の私のお仕事事情 職場は楽器店に変わり、スーツを着て電車で通勤する日々。一階がピアノやLM商品、スタジオのある店舗、二階がヤマハ音楽教室、三階がその会社の本社事務所となっており、私は二階の音楽教室、通称「オンキョウ」の課に配属された。最初はアルバイトだったが、社員と同じ業務をこなす「ヤマハの受付のお姉さん」となったのだった。 元々ヤマハっ子だった私はその楽器店で習っていたし、コンクールで活躍することもあって、当時から勤めている社員や講師は私のことを覚えていてく

        • 【29】 料理たち

          Nさんが作る手料理も言じられないくらい美味しかった。素麺(ゆず胡椒入り)やレトルトの中華丼でさえ不思議と美味しく感じたのだけれど、特に記憶に残っているのが、鍋、かすうどん、お好み焼きだ。 鍋は丁寧にかつおと昆布で出汁をとる。嫌いだった白菜もすっかり好きになっていた。 大きめのタラも入れ、豚肉はしゃぶしゃぶ用で、食べる直前に鍋に入れる。 ポン酢と出汁つゆの二つの小皿を用意して、ゆず調椒をつけて食べる。(私のゆず胡叔好きはこの頃からはじまった)炊きたてのお米は少し固めで粒が立っ

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        【01】 希死念慮

          【28】 マンチ様

          音楽、アニメに加えて、もう一つ大きな楽しみとして、マンチがある。何を食べても美味しいのだ。 昔から料理が好きだったNさんは、もちろん食べることも大好きで、その細い身体のどこに吸収されるのか不思議なほど、よく食べた。 美味しい店もよく知っていて、特に和菓子屋さんのおはぎ、駅近のパン屋さんのあんバターが好きだった。どこのスーパーでもよくあるアップルパイできえ「この種類のやつが一番美味い」と言って拘っていた。買ったパンは絶対に再度トースターで温めて、一番の状態で食べさせてくれた。

          【28】 マンチ様

          【27】 神聖かま

          とても意外だったのが、神聖かまってちゃんも聴いてくれていたこと。「フロントメモリー」のライブ映像と「きっと良くなるさ」のMVを見てくれていた。 ファーストお付き合い後の別れている期間に見たらしかった。ずっとネガティブを爆発させていたという印象だった神聖かまってちゃんが、これらの曲で見方が変わったそう。 この頃の私はしばらくかまってちゃん離れしていて追えておらず、薦めてもらって初めてその2つの映像を見たが、確かに以前のような凶器めいた鋭さは感じず、大人っぽさを感じた。 「全

          【27】 神聖かま

          【26】 薦めたり

          他にも思い出せないくらいのたくさんの作品を知れた。知識豊富なNさんだったけれど、それでも私の好みからNさんに影響を与えられることもあった。自分の好きなものを、好きな人に好きになってもらえるのはすごく嬉しかったし、認められたような気分だった。 例えば平沢進の「パレード」「白虎野の娘」 映画好きのNさんはもちろん「パプリカ」から平沢進も知っていたが、「庭師KING」のライブ映像で衝撃を受けていた。(初見はびっくりするよね、あのレーザーハープ) その流れからP-MODEL「SP

          【26】 薦めたり

          【25】 えむぶい

          Nさんが映像関係の仕事をしているのもあって、撮るのはもちろん、見るのも好き、ということで、腰を据えてMVやライブ映像を見ることも多かった。フランス映画監督のミシェル・ゴンドリーが好きだということで、彼の手がけるミュージックビデオを見せてもらったが、どれも意匠の施こされた、初心者の私でも面白く見入ってしまう作品だった。 Kylie Mingue「Come Into My World」、The Chemical Brothers「Star Guitar」、「GO」 Daft Pu

          【25】 えむぶい

          【24】 大麻音楽

          ( ※ すべてフィクションです。) 大麻を吸って数分たつと、だんだんTHCは本領発揮し、少し目眩を感じたのでNさんのベッドに横にならせてもらう。Nさんの優しい匂いのするふかふかのお布団に包まれているのが、信じられないくらい気持ちよくて、ぬるま湯に浸かる心地よさと同じものを感じた。 目を瞑って微睡みながら幸福感に浸っていると、Nさんが音楽を流してくれた。ダフトパンクのライブアルバム「Alive 2007」だった。 「この人たちは絶対大麻を知ってる」と思った。素面のときには聞

          【24】 大麻音楽

          【23】 ハッピー

          ( ※ すべてフィクションです。) 最初は、Nさんが吸う大麻の副流煙をもらうだけだった。ラリって頭がおかしくなることに慣れていたし、それだけでは勿論なんの変化もない。横でブリってるNさんを眺めるだけ。 羨ましくて何度も「欲しい」と言いかけたが、がっついて遠ざけられてはいけない、と冷静になる。目の前でお預けをくらう日々がしばらく続いてから、ようやく、初体験を許可してもらえたのだった。 塩のふいたナグを細かく切り刻んでパイプに盛り、空気穴を塞いで、ターボライターで上から炙る。

          【23】 ハッピー

          【22】 はししし

          こんな堕落したクズな生活を続けていたある日、夜中に知らない電話番号からの着信があった。通話ボタンを押して無言で待っていると、むこうから聞き慣れた声、癖のある高めの声、すぐにNさんだと分かった。嬉しかった。 あちらから電話をかけてきてくれるということは、私への負の感情は一段落したのだろうか、とにかくイヤな雰囲気は全くなく、ただただ楽しく雑談した。 「煙草が切れたのでコンビニへ行く」と言って一旦切ろうとしたが、「俺も行くから待ってて」とのこと。ローソンの前で待っていると、以前と

          【22】 はししし

          【21】 身体だけ

          Nさんと別れた時期が確か22才頃で、このあたりから不特定多数の男性と遊ぶようになる。ここまでもずっとブロンはやめられないままで、適当なバイトをしながら稼いだお金はすべてブロンに消えている。費やした金額については考えたくもない。 インターネットとスマホがあれば、会える男性はいくらでもいた。よく事件にまきこまれなかったものだと思う。顔が可愛ければきっと危なかった。

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          【21】 身体だけ

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          【20】 ゆめ日記

          私の誕生日には、MidiキーボードとCubaseを貰った。そこまで音楽に詳しいなら、お前も何か作らないと才能が勿体ない、とのことだったので、一つ作品を作ってみた。 その頃「ゆめにっき」というフリーゲームが流行しており、プレイはしなかったが、ニコニコ動画で見られるゲーム実況にハマってよく見ていた。最後にはプレイヤーの操作する主人公の少女が投身自殺する、というバッドエンドしかないそのゲームが好きで、特に音楽がどれも良く、ゲーム内の効果音といろんなBGMを繋げてアレンジしたメドレー

          【20】 ゆめ日記

          【19】 音楽制作

          10年長く生きている先輩なだけあって、Nさんは全てに余裕を感じた。私はそのとき初めてホテルに入ったけれど、Nさんは自然な流れを乱すことなく、ずっとスマートにエスコートしてくれた。 これまで人の前で裸になるのはSくんだけだったし(それでも全裸になることはほとんどなかった気がする)すぐ脱ぐことに抵抗があるくらいにはウブだったので、シャワーは別々で浴びさせてもらった。鏡張りの天井を仰向けで見たときの、私に覆い被さるNさんの体の細さが印象に残ってる。本人はガリガリ体型を嫌っていたが

          【19】 音楽制作

          【18】 年上彼氏

          話は閉鎖病棟、退院時に戻る。 Nさんとは付き合いたかったが、また会ってあの顔を近くで見られるなら、あの声をまた生で聞けるなら、まぁ友達のままで良いかとも思った。退院してすぐ連絡し、再会の日程を決める。 Nさんがショートヘアの女性が好きと言っていたのを思い出し、すぐに髪を切った。人生で初めての、そしておそらく最後のショートヘア(びっくりするほど似合わなかった)恥ずかしかったけれど、切ってしまったものはどうしようもないので、その姿で会いに行く。 待ち合わせ場所にいたNさんも、

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          【18】 年上彼氏

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          【17】 彼氏彼女

          誰にも言わない、内緒のお付き合いがスタートした。たまに一緒に下校したりして、バレー部の陽キャに噂され「付き合ってるの?」と聞かれることもあったが否定した。他人にスキャンダル的に持ちあげられるような軽々しいものにしたくなかった。 その一方で、筆箱につけているキーホルダーをお揃いにして(私はガチャピン、Sくんはムック)匂わせめいたこともしていたので、気付く人もいたとは思うが、おおごとにはならないまま、中学校は平和に卒業した。 Sくんも音楽が好きで、Radiohead、Nirv

          【17】 彼氏彼女