笑ってはいけない警察学校
ダッシュボードを見て、noteを始めてすぐの頃に書いた警察学校の記事が最近も読まれ続けていることに気付いた。
実は今までの記事の中で1番読まれているのがこちら。なんでだろう?意外すぎる。
というわけでテレビで見る警察24時的な感じで一定のウケを狙えるっぽいので久々に書いてみようと思う。
※私が入校していたのは10年以上前です。
あくまで当時の話であり、全国共通のものではありません。
・当番という仕事
学校というだけあって色々な当番がある。
名称は伏せるが、
授業の記録と準備をする日直(日替わり)
朝晩の学校敷地の見回り当番(月1回、1日)
教官室に常駐する当番(月1回、3日間)
が主に定期的に回ってくる当番だ。
この当番活動を通じて、報告書、装備品の取り扱いや申告形式、部隊活動を身体に叩き込むのである。
・当番は死と隣り合わせ
当番活動は常に教官から見られている。
活動記録、言動、当番同士の協力…文字通りすべて見られている。
ある程度当番活動はマニュアル化されているものの、勝手に個人で判断し報告を怠るなどしようもんなら即ペナルティがくる。
ちなみに私がくらった当番中最大のペナルティは、装備品の金具を紛失し、3日間その日の当番全員で敷地内すべてを捜索するも発見できなかったときである。
このときは「いつ、当番の誰が紛失したのかすら分からない」ことも重罪だった。
結果、当番全員で
ジャンピングスクワット20分の刑
(回数はもはや不明)
に処された。
太ももの筋肉がイカれてまともに歩けなくなった私は教官から病院行きを命じられ、血液検査の結果γ-GTP値3000を叩き出した。(平常値50以下)
もちろんドクターストップである。
3歩以上は駆け足、と言われる警察学校で絶対に走るなと言われた。
しかし私の同期内ではγ-GTP値が一時的に爆上がってドクターストップがかかる奴が入校以降何人か出ており、
「和香ちゃん3000?雑魚じゃんwww」
と数値10000を出した奴に鼻で笑われた。
50000で10日入院した奴には「お大事に」と微笑まれた。
その後しばらく「私のγ-GTPは〇〇です」とフリーザ様ごっこが流行ったので私の同期は全体的に頭が悪い。
話を戻そう。
そんな当番の中でも教官室に常駐する当番が1番緊張を強いられる。
6人一組で3日ごとに交代するため、この当番中の3日間は緊張しっぱなしである。
朝は起床時間前に教官室に行き、清掃や国旗掲揚に始まり出勤してきた教官の飲み物の準備など、戦前の丁稚奉公並の気遣いと働きをしなければならない。
外線の電話はもちろん内線もワンコールで取る。
聞き間違い、伝え間違いは死に直結する。
プレッシャーの中で冷静に判断できるかを教官全員がこっそりチェックしている。
警察学校の教官は"仕事ができる"人が多い。
刑事の教官は刑事課歴が長い人だし、武道の教官は元機動隊である。
何より警察官として実績を残してきた人たちばかりなので観察眼という点ではプロ。
ついこないだまで高校生や大学生だった若造なんぞ速攻で性格と思考傾向は把握されてしまう。
ということは。
嘘や誤魔化しはもちろん手抜きも即バレる。
「これ今しといたがいいよなー…
いや、まぁいっか。大丈夫やろ。」
で流したことを
「お前はあの時点で気付いてたはずだよな?
なんで確認しなかった?」
と教官室の端で私の視界にも入っていなかった教官(刑事)に後で詰められたときはマジで怖かった。
そんな教官室での当番中に一気に緊張が走ったときがあった。
時刻は定時過ぎ。
教官達は半分ほど帰宅し、その日の当直教官の他数名だけが残っていた。
ある教官の私用携帯が鳴った。
「はぁ〜い、もしもしぃ〜?」
絶対家族だ。
このトーンの相手は間違いなく教官の娘(4歳)だ。
教官、そんな声出るんですね。
当番員の視線が交錯し無言で意思が統一される。
絶対に会話に反応するな。
おもっくそ聞こえてるけど聞いてないフリしろ。
笑ったら終わる。
「ウンウン、そっかぁ〜
パパもうすぐ帰るからね、ウン」
パ、パパ…!だめ…!やめて…!
2、3人山に埋めてそうな顔なのにパパ…!!
笑わせないで…!!!
きっと家では優しいパパなんだろうな。
パパ、怒ると怖いんだよ。
気軽にグラウンド50周(1周200M)走らせるんだよ。
「ウン、じゃあね、は〜い」
…
……
………地獄のような沈黙。
「なんや。」
「い、いえ…」
絡まれる同期。
バカ!教官見るなよ!死にたいのか!
「……フッ。」
娘との電話を聞かれて照れ隠しもあったと思う。
教官は少しご機嫌で帰って行った。
リアル笑ってはいけない警察学校だった。
もう二度と入りたくない。
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