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映画『シン・ちむどんどん』感想

どうせ観るなら監督出演のプチ鹿島、ダースレイダーの舞台挨拶付きの回に行きたくてスケジュールを調整したかったのだが叶わず、期間ギリギリで配信で観ました。

沖縄の基地問題と言えば今年WOWOWで観た『フェンス』も素晴らしかった。本筋は米兵による日本人女性への性加害の方を描くドラマになっていたけど、辺野古の埋め立てについてのエピソードも本質的な部分に抉り込んでいた。地盤のこと。死んでいく珊瑚のこと。普天間の移転は事実上もうできないこと。工事が長引けば長引くほど儲かる人がいること。
終盤に出てくるおばぁの言葉がもはや役者のそれではなく、真に迫っていたのが印象的だった。

そしてそれをさらに裏付けるようなシーンがこの『シン・ちむどんどん』でも剥き出しになっていた。

出演2人の選挙って楽しい!もっと楽しもう!と言うオープンで無邪気な姿勢からやがて思いもよらない景色が見えてくる、と言う構成は前作と同じ。

沖縄国際大学の前泊教授との会話はとりわけ印象的。宗主国アメリカの巧みな交渉によりなぜか普天間のor辺野古の2択になり、そこには海兵隊が1960年代すでに調べ上げた上で見事に避けた軟弱地盤があり、リロケーション費用を日本で出すことを是とした契約の元に今の状態がある。非常にわかりやすく、それでいて絶望的な状況を僕らはようやく目の当たりにする。

ダースレイダー氏もそのお先真っ暗な未来に恐らく何も聞けなくなってつい、じゃあ玉城さんに今出来ることって何なんですか?とすごい質問をする。
それに対する教授の回答が
今までとは攻め方を変えないといけない、バイデンや習近平と直接会って交渉すべき、国民がその背中を押せるかどうかだと。この回答も凄かった。
つまり独立国家のような動きをすべきと言っているに等しいわけで、しかし確かにそれしか解決策はないかもと思わせる説得力。日本の中央に民主的な方法で頼んでも無効化されるわけだから。

キャンプシュワブの機動隊を前にダースレイダーのフリースタイルラップ。
ハロー民主主義!本当に凄かった。泣いてしまった。眉ひとつ動かさない機動隊を前に。間違いなく今作のハイライト。

何年かかるかわからない工事
何年かかるかわからない工期をストップして
なんかよくわからない飛行機が止まる場所よりも
ジュゴンが楽しく(?)泳げるように
この海を変えていければいいと思います

ダースレイダーフリースタイルより引用


高里さんの雑すぎるフリも最高だけど終わった後の一言
「ラップってすごいんですね」
に笑ってしまったと同時に嬉しい気持ちに。
途中で三板でリズムを取る人が現れるのもちょっと感動的。ヒップホップカルチャーがどうとかまるで関心がない人の心にも響くということ。
ラップの発音がラを強調する方の言い方(タップやスマップみたいな)なのも面白い。

知らなくても生きてはいける。現にこれからも特に沖縄のことばかりを考えて生きるわけではないと思う。それぞれの生活がある。
でも知ることで考え続けることで変わる。
実はヒルカラナンデスYouTube当初は毎週見てたんだけど、ある時期からあまりにエコーチェンバー化してるというか、一部の中でしか騒いでない虚しさを感じてちょっと心が離れてました。でもこうしてエンタメにしてくれて、全国の劇場でかかるように作品を作り上げてくれて、もっと大きなうねりに押し上げようとしてくれる動きには感謝しかない。

考えるのをやめるな
考えることを続けよう

ダースレイダーフリースタイルより引用

余談。アフタートークの大島新監督による田原総一朗ディスは唐突かつ強烈でびっくりしたな。お酒入ってたのかな?とにかくこの2人でやってください朝生。

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