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妄想人物名鑑 【佐藤 映見の場合】

※2017年くらいに書いた記事を転記しました。


拾ってきたフリー画像の人物をもとに、まっつんの妄想だけで脚色する『妄想人物名鑑』。
すべてフィクションです。

まっつん:こんばんは、佐藤さ、、あれ、もう飲んでるんすか?早いっすよ〜
佐藤:やっと来た!遅いよ、ほら、早く座んなよ。

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氏名:佐藤 映見(さとう えみ)
性別:女性
年齢:29歳
出身:静岡県
職業:食品メーカーの営業企画主任
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まっつん:主任になってから、やっぱり仕事忙しいんですか?
佐藤:そりゃそうよ、主任よ主任。毎日胃がちぎれそうだっての!
まっつん:ストレスですよそれ。気をつけてくださいね。そもそも佐藤さんって、なんで食品メーカーに入られたんでしたっけ?
佐藤:そうねー、、まっつんてさ、人生の中で忘れられない味ってある?

そう言って彼女はジョッキのビールを飲み干した。

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20歳の彼女は、イタリアにいた。
海外なんて行ったことなかったし、イタリア語はおろか、英語もおぼつかない。
だが彼女には目的があった。
ルチアおばさんのピザ、もといピッツァを食べるということだった。

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まっつん:急に誰なんだよ!ピザでいいよ!
佐藤:まあまあそんなに青筋立てんでもええやん。

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ルチアおばさんは、私が小さい頃、長らく文通をしていた人だった。私が書いた手紙は、いつも父がエアメールで送ってくれていた。

でも、私は幼いながらに気づいていた。
母がいない私を不憫に思った父が、ルチアおばさんになりきり、私に手紙を書いてくれているのだと。

それに気付きながらも文通を続けていたのは、純粋にルチアおばさんとのやり取りが楽しかったから。それが父親かどうかは、当時の私にはそれほど重要なことではなかった。字は汚かったけれど。そして日本語だったけれど。頻度はまちまちだったが、それなりに手紙のやり取りは続けていた。

大学進学と同時に、私は親元を離れ、一人暮らしをはじめた。

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まっつん:けっこう大人びた子供だったんすね。
でもそしたら、イタリアに行っても、ルチアおばさんいないですよね?
佐藤:そうそう、それはね、、

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”あなたももう20歳になるのね。イタリアに来ない?美味しいピザ、もといピッツァをご馳走したいわ”

久しぶりに連絡が来たのは、19歳の秋だった。相変わらずの汚い字が並んでいた。

”私が20歳になるからって、お祝いでもしてくれるつもりなのだろうか”
”別に悪い気はしないし、行ってみてもいいか”

そんなことを心の中で呟きつつ、本当はとても嬉しかったことを覚えている。

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まっつん:ほうほう、それでイタリアに。
佐藤:行くんですねー。

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20歳になった私は、イタリアにいた。
待ち合わせ場所まで、春の陽気で満たされた街並みを歩く。

待ち合わせ場所に着くと、
幼い頃から見慣れた初老の男性が、こちらを見て微笑んでいた。

”もっと驚いてもいいんじゃないか”
父はそう言った。

”ずっと知ってたよ”
私は応えた。

”ピザ、もといピッツァがもうすぐできるんだ”

”ピザでいいよ”

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まっつん:ピザでいいよ、をここで被せる高等テクニック!みなさん気付きましたか?
佐藤:誰と話してんの?笑
まっつん:愛すべき読者ですけど。ていうか、結局ルチアおばさんって何者だったんですか?

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”ルチアおばさんって何者なの?”

”お前のお母さんだよ”
ピザを食べる手を止め、父は言った。

私の母は、私が物心つく前に病気で亡くなったと聞いた。
それは本当だった。

”お母さんが亡くなる前に、お前に手紙を書いたんだよ。成長したお前とコミュニケーションを取りたいって。
なんとなく、自分に先がないことが分かってたんだろうな”

”お母さんの名前、ひかりっていっただろ?
イタリア語でルチアは、光って意味なんだよ。知ってた?
お母さんなりのシャレだな”


いつしか、ピザを食べる手が止まっていた。

”でも、お母さんは一通しか手紙を書けなかった。
その後すぐ、いなくなってしまった”

”お前がなんとなく文字を理解できるようになったとき、お母さんから預かっていた手紙を見せてみたんだ。

お前、とても喜んでなあ、、
それを見て、手紙のやりとりを続けてみたくなったんだ。

それからのルチアおばさんは、僕だ”


父は、たばこをふかしながら続ける。

”お母さん、イタリアに留学してたことがあるんだよ。その時にピザ、もといピッツァ屋さんでアルバイトをしていたらしい”

”今日作ったのも、昔お母さんから教えてもらったレシピなんだ。お母さんと3人で、20歳のお祝いができるんじゃないかと思ってな、、”


涙が止まらなかった。
確かにお母さんはそこにいた。
ルチアおばさんと、ピザもといピッツァは、両親の愛そのものだった。

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まっつん:なんなんすか、めっちゃいい話じゃないですか。つまんない。いい話すぎてつまんないですよ。
佐藤:そのとき私は、
「食べ物には思い出が宿る」
「食べ物は思い出を映す」ということに気づいたんだよね。だから食品メーカーに就職した。いい仕事だよ。

まっつん:ええ、、いい話の応酬じゃないですか、、イタリアだけに欧州じゃないですか、、
佐藤:しょうもな、、

まっつん:なんか、ピザ食べたくなってきましたね、、
佐藤:最後の最後でピッツァて言わんのかい。そういえば近くに、うまいピザ屋があるから行ってみようか。
まっつん:佐藤さん、ピザじゃない、ピッツァですよ。
佐藤:裏切り者めが、、


おわり


※この記事はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
あしからず。











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