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日常_自意識過剰と女子高生ズとコメダ珈琲

ときたまコメダ珈琲で作業することがある。wifiもあるし電源もある。席も広い。当然コーヒーだって出てくるし軽食も食べられる。控えめに言って快適。

以前は客席が空いているのをいいことに、かなり長時間居座ってしまっていた。ある程度時間が経つと店員さんが水を持ってきてくれる。僕はそれを優しさだと思っていたが、実は「そろそろ帰るか追加注文するかしてや」という合図だったことを知り、ひどく申し訳ない気持ちになった。

先の疫病によりコメダに行く機会は減っていたが「感染ったら感染ったでもう仕方ないやん」と徐々に開き直る世論に流される形で僕のコメダ通いも復活している。「店員さんからの水が出てくるまでには作業にキリをつけなければ…」というプレッシャーに気圧されるが。

今日も僕はコメダの玄関ドアに手をかけていた。店内に入り、居心地の良さそうな席を探す。ようやく見つけた特等席に腰をおろすと、はす向かいに女子高生のグループ。3人ほどの若人がおしゃべりしている。青春だ。

呼び鈴で店員さんを呼ぶ。アイスコーヒーにソフトクリームが乗ったやつ(クリームコーヒー)を注文する。僕はアイスコーヒーも飲みたいしソフトクリームも食べたいのだ。背の高いグラスにソフトクリームが高々と乗せられており、縁起も良さそうである。

店員さんに注文後、ふと気づく。
今から僕のテーブルへなかなかに目立つグラスがやってくるが、それを見た女子高生たちは何を思うだろうか。

薄ヒゲが伸びたおっさんが年甲斐もなくソフトクリームを食う姿を好奇の目で見るだろうか。それとも嘲笑の目で見るだろうか。

いや、彼女らは変な目では見ないだろう。そもそもこちらのことなど視界に入っていない。頭では分かっているが、自意識が邪魔をする。

僕は若い女性の集団が怖い。何か陰口を言われているような気分になる。老若男女関係なく陰口を言う人は言うものだと頭では分かっているが、やはり若い女性には怯えてしまう。

30〜40代くらいの女性の店員さんがバックヤードからクリームコーヒーを持ってくるのが見える。やはりグラスの大きさゆえ存在感がある。あっ、女子高生のひとりがクリームコーヒーを目で追っている。やめて、僕の急所を見ないで。

「クリームコーヒーになります!」

店員さんが僕の目の前に立っている。もう少し声量のつまみを絞ってほしい。周りに注目されたくないのだ。

店員さんはちょうど僕を女子高生ズから隠す位置に立っている。いま彼女らはうずたかく積まれたクリームコーヒーを頼んだ滑稽なおっさんの様子を見んと、こちらに視線を向けているだろうか。

どうか、どうかこちらを見ていませんように。

店員さんが僕の目の前を離れ、徐々に視界が開けていく。再び女子高生ズが僕の目の前に現れる。

彼女らはこちらのことなど一切見ていなかった。楽しそうにおしゃべりをしているのみである。

まあそりゃそうだろう、当たり前である。僕はいったい何に怯えているのだろう。
また今日も自意識に操られ、感じる必要のないプレッシャーを感じてしまった。クリームコーヒーはいつも通り、甘くて苦かった。










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