どうにか胃カメラを回避したいアラサーの悲哀

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【医学的な話が出てきますが、僕はズブの素人なので参考にしないでください】

今年の3月ごろ。洋式便座から立ち上がって後ろを振り返ると便が黒っぽい。怖っ。

すぐさまスマホで「便　黒い」と検索する。検索するヤツが悪いのだが、症状に関連した病名が次々と画面に表示される。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、、、

スマホが揺れて見えると思ったら僕の手が震えていた。

胃などの上部消化管で出血が起こると、血液が酸化して黒くなり、それが便と混ざり出てくるとのことだった。潰瘍でも出血するし、がんでも出血するらしい。

「ワシの胃から血が出とんか？」
動揺の余り心の中のノブが岡山弁でわめいている。千鳥がテレビに出過ぎているせいで脳内言語がノブだ。サークルの飲み会で「クセがすごい」を連発するアホな大学生みたいなものだ。

そういえば最近たまに胃が痛い気がする。
ふと手のひらを見るとなんだか生命線も短くなっている。
こないだ目の前を黒猫が通った。
茶柱が立つどころか湯呑みのどこにも無かった。
不吉な点と点が線でつながってしまった。そんな伏線回収要らんねん。

検査は基本的に胃カメラかバリウムらしいが、胃カメラの方が確実のようだった。

僕は胃カメラがとても怖い。硬くて噛みきれないうどんみたいなのを無理やり胃まで突っ込まれるなんて信じられない。胃の様子が見たいからっつってバカ正直に口or鼻から胃にカメラ突っ込むヤツがあるかよ、と思う。時代は令和だぞ、なんかもっとスマートなやり方が無いのかよ、と思う。

どうしても胃カメラはしたくない。胃カメラしなくてもいい理由が電子の海に漂流していないか、僕は血眼になってネットサーフィンをした。するとある記述を見つけた。

「イカ墨や海藻など色素の濃い食べ物を食べたときは便が黒くなることがあります」
「腸内に悪玉菌が増えると便が黒くなることがあります」

僕は何か色素の濃いものを食べただろうか。いくら考えても昨日の夕飯が思い出せない。胃と脳をコンボでやられている可能性が出てきた。

腸内に悪玉菌が増えている可能性は多いに考えられる。肉と油ばかり食っているからだ。どうせ魚と野菜を食べろと言うんだろう？ヨーグルトを摂れと言うんだろう？そうなんだろう？

そうだった。

僕はその日から、色素の濃い食べ物と肉を控え、魚と野菜をかっ喰らい、飲むヨーグルトをガブ飲みした。胃からの出血以外の可能性を探るためだ。

これでもし便の色が戻ったら、胃カメラしなくても良いだろう。噛みきれないうどんを突っ込まれる前に魚と野菜とヨーグルトを突っ込んでみるのだ。

毎日便の様子も確認した。小さな個室の中で自分の出したモノをまじまじと眺める。ふと自分をメタで見てしまい切なくなった。

毎日見ているうちにいったいこれは何色なのかよく分からなくなってきた。最終的に「黒とは何なのか」という根源的な問いにぶつかってしまった。

黒いっちゃ黒いが、濃い茶色と言われたら同意できないこともない。アンミカさんが「白って200色あんねんで」と言っていたが、彼女は鳥のフンでも観察していたのだろうか。

「上部消化管から出血している場合の便の色」を知りたくてネットで画像検索した。あれほどたくさんの人のモノを見たことはないし、今後も見ないだろう。

写真の写りによって色味は異なるし、結局よく分からなかった。他人のうんこを見たという事実と激しい後悔だけが残った。

さっさと病院に行け、と思う読者もいるだろうが、とにかく僕は胃カメラが怖いのだ。101回目のプロポーズで浅野温子が発した「私怖いの」くらいの必死さで怖いのだ。

武田鉄矢よろしく「僕は死にましぇーん」と言えればいいのだが、身体に不調を感じる手前そうにもいかなかった。

そんなこんなで半年くらいが経ったが、依然として黒っぽい便が出ることがあった。

いよいよ不安になってきた僕は、ようやく重い腰をあげた。苦しくない胃カメラをしてくれるであろう、カリスマ胃カメラマンを探すことにした。

引っ張るほどの内容でもないが、記事が長くなってきたので今日はここまでにしようと思う。次回記事では「病院に行ってみた」編を書こうと思う。