本をつんだ小舟によせて 03

〜 司馬遼太郎著 龍馬がゆく 〜 

 西原 理恵子氏の名言のひとつに"龍馬が偉いのではなく、書いた司馬さんが偉いのだ"という言葉からも伺いしれるように、彼の文章は人をひきつけてやまない。中学の誕生日に父がくれたのも司馬さんの小説だった。 

 司馬さんは小説の所々で取材した際の小話のようなものをいれたりする傾向にあり、それが面白かった。  
 龍馬は若くして亡くなったが、私自身も三途の川を渡りかけたことが数回あった。ひとつが20才での首つり、もうひとつが40才での心肺停止である。 
 驚くべきことに30才の時にそのことを予言していた方がいた。 

 当時私は高齢者のデイサービスで働いていた。ある日新しく利用する方がこられると聞いたため、その方と面識のある職員から、年齢、性別、家族や心身の状況等の聞き取りを行った。話が進むうちに職歴の話になり、その方がつい最近まで占い師をしていたことがわかった。   

 その方の名をAさんとしよう。Aさんは朗らかな方ですぐにデイサービスになじんでいった。 

  ある日のこと、僕はふと、Aさんが占い師であったことを思いだし、軽い気持ちで占ってほしい旨お願いしてみた。 

  するとAさんは僕の顔を見て一言

  "40の時、心臓がぶっこわれる" 

 10年後川で溺れ、九死に一生を得たのは近くにいた息子が周りの人に大声で助けを求めてくれたからだ。

 司馬さんの記念館は僕の母校の近所である近鉄布施駅の近くにある。