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【法学部?文学部?】誰も知らない「法哲学」という学問分野

 法律を学習していると、「実質的平等に鑑み」とか「当事者間の公平の観点から」といったフレーズをしばしば目にするが、よくよく考えてみると「平等」や「公平」とは一体どういうことを指すのだろうか。
 このように、法律の根底にある基礎的な概念について検討するのが「法哲学」という分野である。

 先ほどの例を具体的に考えてみよう。平等と言われたら多くの人はまず、互いに等しく何かを有している状態を想像するだろう。 

 だが、この定義によると、仮にAさんの年収が400万円、Bさんの年収が600万円の場合、両者の均等を実現するために、Bさんから200万円奪ってもよいという非合理的な結果が肯定されてしまう(これを「水準低下批判」という)。

 これに対して、平等とは、状態それ自体ではなく、取り扱いが公平であることを指すとの反論が考えられる。かかる定義によれば、Bさんが200万円奪われるという結論を免れることができる。

 また、そもそも他人と比較して少ないという、平等それ自体を重要視するのではなく、絶対的に不足していることこそが問題だと開き直ることもできる(これを「十分主義」という)。
 この考え方によれば、仮に年収400万円が十分量だとする場合、AさんBさん共に十分量を保有しているので、それ以上問題にならない。

 もっとも、どちらの考え方によってもさらに検討課題は出てくる。前者で言えば、「公平な取り扱い」とは具体的にどういったものが該当するのかが問題となるし、後者だと「十分量」の基準、例えば衣食住に困らないレベルまでなのか、たまには贅沢できるレベルまで指すのか、といったことが問題となる。

 このように、私に言わせれば正解のない議論をひたすら続けていくのが法哲学である。

 法学部で学ぶことができる法哲学という分野はさらに細分化して分類することができる。具体的には、「そもそも法とは何か」について考える法概念論、「法とはどうあるべきか」について考える法価値論(正義論)である。

 かかる問題提起は一般人からすると、実生活とは無縁な話に感じられるだろう。だが、これらの問題を具体化してみると、案外興味がわいてくるのではないか。

 例えば、力仕事は男性がすべきというルールは認められるべきか。一般的に女性より男性の方が力があるので、男性がそれを担う方が効率的かもしれない。一方で、男性のみに力仕事を課すのは平等ではないかもしれない。

 また、飲み会で割り勘にするのは平等なのだろうか。確かに、形式的には支払額は皆等しくなっている。一方で、収入の多い上司とそうでない部下の支払額が同じで良いのだろうか。他には、たくさん食べた人とそうでない人が同額を支払うことになってもよいのか。

 これらは実際に法哲学で扱えるテーマの一つであるが、とても興味深いことだろう。だが、残念なことに大学入学前にかかる分野を知っている者は当時の私を含め皆無だと思う。
 しかしながら、このような話を聞いて新たに法学部に興味をもってくださった方もいらっしゃるのではないか。

 端的に言ってしまえば、法哲学という分野は高校で学ぶ倫理(現代社会)に似通っている。また、文学部志望者であっても、思想・哲学専攻希望者にとってはどこか刺さる内容だと思う。

 残念ながら、近年、法哲学を学ぶことができる大学は減ってしまっているようだ。それでも、とある教授曰く「法律学は法哲学から始まり法哲学で終わる」というぐらい重要かつ奥が深い学問分野である。


参考:法哲学(有斐閣)=瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕


参考:法哲学に関する動画

①新潟大学法学部の模擬講義(15分)
私が法哲学の授業の初回で学んだ内容とまさに同様だった。
講義内容をさらに知りたい場合、おすすめの動画。


②慶応義塾大学大学院法学研究科の進学ガイド(5分)
文学部(思想・哲学系)に興味がある方には特に見ていただきたい動画。


冒頭写真:pixabayより


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