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食べ物の価値

"空腹は最高のスパイス"
とは、うまいことを言った方がいますが、
"体験は最高のエンタメ"だと思います。
さて、今回はお餅屋の主役[餅米]の話です。

今年の春からお世話になってきました、
【自然栽培米 ひえばた園 hiebata farm】での最高にエンターテインメントな体験の話。

僕たちは何も知らずに食べている
お餅屋でありながら、僕はお米の作られ方を知らない。
米屋さんから餅米を仕入れ、お餅を作り、お客さんの元へと届けていた。
お餅の作り方は知っているけれど、餅米の作り方を知らない。そのチグハグな状態で今日までお餅屋を続けていました。
だから、農家さんが餅つきをする姿に圧倒されたこともあるし、なんだかものすごく差を感じたこともある。
そんな状態の中、冬が明けるタイミングでひえばた園のひえなえさんからお誘いがありました。
「米、作ってみようよ!」
これをキッカケに、足を運ばせていただくようになりました。

僕たちの想像しているスケールは思い違い
さて、春から始まった米づくりプロジェクト。
始まりは用水路の掃除です。
用水路のイメージって、田んぼの横に細く流れている感じじゃないですか。
でも、ひえばた園は全然スケールが違います。
魚津の山間部にある田んぼということで、用水の始まりは山の中から。

水の始まりが山。
冬の間に倒木したり土砂が用水をせきどめしていたりするので、それをスコップでキレイにしていきます。
途中、足を踏み外したら崖から落ちるような細い道を通ったり、土砂が重たくてなかなか進まないところがあったり、想像の遥か上をいく大変さ。
何人もの人の力を使ってキレイにしていく。
用水が流れなければ田に水を張れない。

僕の住んでいる魚津は海と山が直線距離で25キロしかありません。
それだけ急勾配な土地なので、様々な条件の地面があります。
町中の田んぼとは用水のスタート地点も違うし、スケール感も違った。
始まりから大冒険でした。

最高の息子たちが次世代のエース
僕たちが食べているお米は実は2番手だという。
苗を育て、田植えをしてお米ができるのですが、苗はお米からできる。どのお米を使うか。
そこなんです。
実は最高の1番。エースが次の年のお米になるんだそう。
その年にできた最高のお米を春まで保存しておき、
春になったら一度あっためて起こして、
冷たい水で顔を洗うように冷水で目を覚ましてあげて、またあったかくして苗になるまで育てる。
その苗が今年のお米になる。
次代を担うエースは僕たちの口に入らず、次の年のお米に生まれ変わっていく。
そうやってその土地に合う、最高の苗が生まれていきます。

まっすぐにまっすぐに
土が元気。
気温も高くなってきた頃。
いよいよ田植えが始まるときにまたお誘いしてもらって、一緒に餅米を植えました。
まっすぐに進んでるつもりがガタガタ曲がってしまったりして。
実際やってみたら難しいのなんのって。本当に自分がいまどこを中心にして進んでいるのかわからなくなるし、土もやわらかいとこ、水が溜まりやすいところとかあって、なかなかまっすぐ進めません。
田んぼのまっすぐ美しいラインは芸術ですよ。
皆さん、近くで田んぼ植え始めたらそのラインを見てみてください。あれは芸術技です。

(めちゃたのしい顔しとる笑)

総合力Aが必要な世界
田植えからしばらく。
梅雨も、夏の炎天下の中もスクスク成長するお米さん。
同時に成長する雑草。
お米の成長と、雑草の成長の追いかけっこが続きます。
草刈りもしないといけないし、大雨が降れば水量調整もしないといけない。
雑草にかまってばかりもいられないし、放っておくのもいけない。
このバランス感。全体を見て、何を優先するかの判断力。
求められる能力の種類があまりにも多いのが農業の世界。
何か1つに特化するのではなく、多くを感じ、行動を決めていくのが農業。すごい。

田植え後もちょくちょく様子を見に畑へ。
大雨も炎天下も乗り越えてグングン成長する。
さすが、エースの遺伝子。
前年最高のお米のパワーを浴びにいく日が続きます。

台風にも負けズ
季節は移ろい、秋。
ついにやってきたお米の収穫の時です。
夏の力強い緑から変化して、輝く黄金色に。

キラキラしてます。
ついにキタ。

餅米のキング。
新大正米。

刈り取り開始!
僕も刈り取りやらせていただきました。
が、チキンすぎて前進、後進の操作以外何もできず、、、笑
田植えの時もそうでしたが、この刈り取りはそれ以上に頭がパニックになりました。

ひえばた園では"はさがけ"もやっています。
お米を乾燥する昔ながらのやり方。
日本の原風景。
一度見てみてほしい。感動します。
手作業で積み上げるこの"はさがけ"。
なんでだろうか、色なのか、匂いなのか、風の音なのか、全身がすーっと軽くなるような気持ちの良さを感じられます。
このお米をパクッと1粒口にして、水分量をみておられました。
プロフェッショナル。
自然と一体化したナチュラルな景色がここにあって、僕が知らない世界は物凄く、豊かだった。

これから乾燥と脱穀が始まります。
そうして精米したお米が僕たちの家庭に届く。
春から始まったお米づくりの体験がここでひと段落つきました。

あまりにも遠い食べ物との距離
用水掃除から始まった僕の米づくりの体験。
お餅屋をやりながらも、餅米ができる姿を知らなかった自分。
体験してみてまず思ったことは、
現代人は食べ物から遠い場所にいて、何も知らない。
知らなすぎる。
新しいアプリの使い方や電子マネーの事は知っているのに、毎日食べるお米の事は知らない。
なんだかとっても変なことが起きている気がします。
食べ物が手に入るのが当たり前のような、お金を出したら手に入るのが当たり前で、知らないことは重要なことではないような。
そこが変だな、と思いました。
確かに知らなくてもお米は買えるし食べられるけれど、僕は今までとは違う感覚になってきています。

体験がもたらした最高のエンタメ
お米が今までより何十倍も大切に感じられる。
少なくとも、ひえばた園で今年育てた餅米は僕にとっては日本一大事な餅米です。
日本一です。ナンバー1餅米。
内心、個人消費で自分だけのものにしたくなるぐらい大切に思っています。
ここぞという場で食べたい。
我が子がいたとして、我が子を手放したくない親の気持ちがこれに近いかもしれません。
ある意味、この餅米の熱狂的なファンです。

この状態になっている僕が一番楽しんでいる。
体験して知ることによって、僕はこの餅米のファンになった。
体験は熱狂的なファンを作る、最高のエンタメだ。

最高のエンタメを元に
僕がお餅屋をやっていたこの3年間は餅米のことを知らない3年だった。
しかし、今は餅米が大好きな餅屋になっている。
体験を一通り終えた今なら、食材そのものから想いを感じとれるし、その想いを元にお餅をつくることができる。
この感覚を得たことは物凄く大きな財産です。

体験というエンタメで素材のファンになって、
その大好きな素材を使って商品をつくる。
なんだかお餅屋さんらしくなってきた気がする。

あとがき
食べ物って毎日食べるじゃないですか。
だからこそ、食材にもっと目を向けた方がいいと思うんです。僕は今回の体験でそこに目が向きました。
身体をつくるのは口にする食べ物ですよね。
その食べ物を知り、体験をすればあっという間に特別な存在に変化します。
そんな食材が増えていけば、日々の暮らしももっと豊かで素敵になると思いますよ。
読んでいただきありがとうございました!

#米 #農業 #体験 #自然栽培 #自然農

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