起業家が顧客課題を発見し、”行動”するための「フレームワークの使い方と対話の方法」
ゼロワンブースターでは、「イントラプレナーアクセラレータープログラム(以下IAP)」を行なっています。これは、主に大企業の新規事業開発を、社内起業家を育成することを通して支援するプログラムです。
既存事業の枠組みに縛られすぎずに、大企業ならではの”アンフェアアドバンテージ”を活用して、ゼロイチの新規事業を一緒に作る活動を、アイデアフェーズから伴走しています。
そのゼロイチの新規事業開発の活動の中で、「行動の重視」を社内起業家の皆さまにお伝えしておりますが、正解がない中での活動になりますので、普段の業務とのギャップから行動が止まってしまう方がいらっしゃいます。
とくに、ゼロイチの新規事業開発においては、初期のフェーズは人によっては、リーンキャンバスやカスタマージャーニーマップなどを埋めていけば、事業ができると思っている方も一定数いるのも事実です。他方で、実際には一直線には事業は生まれないのも、また事実です。
今回は、そのような正解のない事業創造プロセスに慣れない中で活動するマインドセットとして、フレームワークを使うにしてもどう使えば良いのか、そのフレームワークを活かしてどのように仮説検証をすればいいのか、ということをお話します。
フレームワークは整理のために使う
繰り返しになりますが、事業創造の活動は、学校のテストのように正解がない活動になるので、一直線にユーザーインタビュー→ソリューション検証が進むわけではなく、ピボットをしながらグルグルと螺旋状に進むものです。
慣れない螺旋状の活動の中では、成長実感が少なく、自信を失いがちだからこそ、活動が止まりがちなのです。この非線形の螺旋状の事業創造プロセスにおいて、活動を止めないために、ゼロワンブースターでは、”あくまで整理用にフレームワークを使う”ことがあります。
「フレームワークはあくまで整理用」とお伝えする意味は、フレームワークは所詮はツールなので、それを埋めることで事業が生み出されるのではなく、事業を生み出すための行動のための道具として考えなければなりません。
取得したユーザー情報をフレームワークで整理することで、顧客とも会社とも仲間とも素早くコミュニケーションすることが出来るようになります。そのためには、拾ってきた情報をどう意味づけして、整理するかが大事になるのです。
行動を促す、止めないためには現在のご自身の状況をフレームワークで整理し認識し、行動が止まっていることを自己認知することが重要であり、次の行動につながると考えているからです。
フレームワークで仮説検証を明確に
それでは、どのようなフレームワークを、どのように使えば良いのでしょうか。例えば、フレームワークとして有名なものとして、価値提案キャンバス(The Value Proposition Canvas)があります(以下VPCと記載)。
*価値提案キャンバス(The Value Proposition Canvas)とはアレックス・オスターワルダー・/イヴ・ピニュールによる著書『ビジネスモデルジェネレーション』にて紹介された、顧客のニーズに合った事業を生み出すためのフレームワークです。
VPCは、ビジネスの肝である、顧客は誰で、顧客は何に困っていて、それをどう解決するのか、という非常に大切な部分を整理するためのフレームワークです。ここを間違えると、存在しない顧客に対して、価値のないソリューションを作ってしまい、ビジネスが失敗することになります。
具体的には、右側に皆様の顧客のプロファイル(顧客のが解決したいこと)を記入し、顧客の解決したい問題・解決されることで得られる嬉しさ・痛みを書いていきます。想像段階から書くのもありですが、実際に顧客から聞いたFactを記載するのが、理想です。
また、左側には上記の顧客のプロファイルを解決する製品・サービスを記載します。製品・サービスは嬉しさを生み出す・痛みを解消することの具現化でしかないので、顧客の痛みを解決するための手段はなにか、顧客の嬉しさを増幅させる仕組みはなにか、そしてそれは具体的な製品・サービスとして何か、という形で考えます。
これらの使い方も所詮は思考と行動整理のツールでしかないので、必ずしもこのように使うべきというものではありません。人によっては、フレームワークの使い方にこだわったり、計画づくりに時間を食ってしまったりすることがありますが、ぜひ遠慮せず整理しやすい使い方をされるのが良いと思います。
VPCで整理した内容の中でも、検証すべき内容を明らかにしていき、仮説検証の行動を促してほしいのです。繰り返しのメッセージになりますが、「フレームワークは情報整理、事業創造のためにとにかく行動しながら学んでみてほしい」のです。どうしても、ユーザーの困りごとのような事実・真実は人に聞かないとわからないので、行動が第一になるということです。
この部分をぶらしてしまいますと、情報整理やデスクワークで時間が過ぎ去ってしまいます。次のユーザー仮説やインタビューにつなげていくことが大事になります。そして、フレームワークでの情報整理→行動のあとに、また(必要であれば)フレームワークでの整理→行動を繰り返すことで、行動を促すリフレクション(内省)の良いサイクルが生まれます。
顧客と対話するための行動を起こす
行動行動と申し上げてはいますが、具体的な行動についての補足として、最後にユーザーインタビューについて、お伝えしたいと思います。というのも「ユーザーインタビューの方法がわからない」というお悩みごとが非常に多いため、ぜひ簡単に大事な部分をお伝えしたいと思います。
まず、ユーザーインタビューにおいては、「顧客はだれか(特徴)」、「どんな問題を持ち、どう解決するのか」、「どう確認するのか」、「何がわかるといいのか?」といった仮説を確認しに行くが大事になります。
こういったときに、特にユーザーインタビューの方法で困るケースとしては、「質問の設計がわからない」方が多い印象を覚えます。例えばですが、「どうインタビューをしていますか?」と聞いてみてると、「これが問題でしょうか?」とクローズドクエスチョンで聞いている方がままいらっしゃいます。
これに対して、顧客の事実や行動を知ることが大切になりますので、まずはオープンクエスチョンから始めるのが良いと思われます。例えば、「習い事の送迎をあったら便利か?」と聞くのではなく、「送迎のシーンで何に困っているか」とまずはオープンに聞くのが良いでしょう。
そのときに、「雨が降ってきて大変なんです。」、「仕事の残業が出来ない。」といった困りごとをおっしゃっていただけることがあるかと思います。ここであなたが解決したい問題が存在するとわかったときには、特に重要なのが、must haveか、Nice to haveかを確認することです。
違う事例で恐縮ですが、「美容院に行きたいのに、いけていない。」、こんな問題を女性から聞いたときに、「女性なら美容に気を使うので、Must haveになるかもしれない問題だ」と、早とちりしてしまうこともあります。いわゆる、バイアスがかかっている状態ですが、実際にはそこまで問題ではない=Nice to haveであることもあります。
このようなお話に進んでいくと、当然ながら、「Must haveか、Nice to haveかどうかをチェックするためにはどうすればよいか?」というご質問もいただきます。これに対しては、究極的にはお金を払うかどうか、という点が問われます。なぜならば、人は「イイね」という意見を言うけれど、実際に行動を見てみると、買ってくれない、お金を払ってくれないことは往々にあるからです。
そして、お金を払うこと以外にも、「実験やヒアリングなど、自分に時間をたくさんくれる」、「話している人の熱量が高い」ことから、課題の確からしさを確かめることも出来ます。また、筋の良い仮説であれば、「10人くらい聞いてみると大体良い反応が予測できる。」という自信を持てるようになった段階で、ソリューションの検証に映るのも良いでしょう。正解がない活動なので、何人に聞けば事業が必ずできる、ということはありません。
また、顧客の困りごとについては、インタビュー以外にも、顧客の行動を拾える方法があります。SNSでの行動を見たり、困りごとに関するセミナーや相談会を開いて、インタビューできる顧客を集めたり、ランディングページを作り発注を見たり、実際に顧客がどう動くかをぜひチェックしてみてください。検証サイズを小さくし、クイックに検証していくのがおすすめです。
ぜひ、市場のリアルと皆様のビジネスアイデアの認知GAPを埋めていき、また行動に繋げるということを意識してみてください。ゼロワンブースターは、皆様の事業創造を応援しております。
(資料提供:ゼロワンブースター森博樹、構成・編集:ゼロワンブースター冨田到)
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