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次世代の都市評価指標の特徴と方針:街づくりカルテ【エリアクオリア指標】のトリセツ⑤基本的な考え方



こんにちは noteメンバーシップ:ツギ・マチ・ラボ(次世代の都市・街づくりラボ)を運営する松岡です。私たちの研究会FIACS で開発している街づくりのカルテ【エリアクオリア指標】の取説について解説する第5回目は、この指標の特徴と基本方針についてです。

よろしくお願いします。


【内容】

⑴ エリアクオリア指標の5つの特徴

⑵ エリアクオリア指標の基本方針



⑴ エリアクオリア指標の5つの特徴

クオリアとは「主観的に体験される様々な感覚」を表する哲学用語で、「〇〇らしさ」や感覚質を意味します。

Aria Index of Qualia(AIQ:エリアクオリア指標)を、都市の多様な主体による感性や質感を反映する FIACS が目指す次世代の都市評価指標の名称とします。


エリアクオリア指標には5つの特徴があります。

①大都市単位のランキングではなく「民間企業&街づくりソフトの工夫が反映できる評価指標が欲しい」と言うニーズに応えるため、エリアマネジメント(以下エリマネ)が活動する設定範囲を中心に、「街(駅)単位」を評価の対象とします。

②満足・好嫌アンケートによるランキングではなく「データ・エビデンスを元に改善方策と効果が確認できる評価指標が欲しい」と言うニーズに対応し、「ワザワザくり返し訪れる人が多い街=共感人口が多い街=魅力ある街」と定義し、行動データを基にした共感人口を定量計測し最重要視します。

③画一的・総合的な優劣ではなく「街の個性や文化的魅力が反映される評価指標が欲しい」と言う視点を生かし、既存のオープンデータによる文明系評価指標を参考にしながら、Twitterトレンド解析を基に街の個性や文化的魅力を定量分析した指標設定を行います。

④成熟社会化やコロナ禍に伴う「次世代のライフスタイル・価値観に対応した柔軟な評価指標が欲しい」と言う指摘を生かし、インフラ・ハード整備だけでなく、改善努力やソフト活動を反映できる評価指標を継続的に計測します。

⑤SDGsへの対応やエリマネの活動等、「ソフトな貢献が見える化できる評価指標が欲しい」と言う要望に対応し、街づくり事業者の貢献価値を可視化する為、総合的に指数化し9段階に格付けします。


⑵ 基本方針


具体的に説明します。

① 街単位の評価対象範囲

既存の都市評価指標の対象範囲は都道府県単位あるいは市区町村単位でした。

これは指標の元となるオープンデータが自治体単位でしか入手できなかったからですが、この対象範囲では、自治体行政の成果や励みにはなっても、民間ディベロッパーを中心とする街づくり事業者にとっては、広すぎるため有用ではありません。

そこで FIACSではエリアマネジメントの活動範囲を基本の評価対象に設定します。

ⅰ)エリマネは活動範囲を明確に設定している事

ⅱ)エリマネの範囲は駅周辺など中心市街地活性化の対象と重なる事などがその理由です。 さらに「パリの15分都市圏構想」に代表される、欧米都市におけるウォーカブル街づくり(徒歩圏で生活利便性を享受できる街づくり)の潮流にも合致すると考えます。


② 行動データによる共感人口計測を最重要視

既存の都市評価で分かり易い「好嫌アンケート」は話題にはなりますが、漠然とした質問結果では、改善方策も対応しようがありません。

しかも「自分には長所があるか?」の設問(内閣府:平成26年度子ども・若者白書)に対して先進国中で最下位という自己肯定感の低い日本人に、街に愛着があるのか?魅力的な人が住んでいるか?などの質問をしても、謙遜バイアスが掛かってしまうと推察されます。FIACS指標では KDDIとの連携により、行動データから居住や通勤ではなく、わざわざ繰り返し街を訪れる人の数を共感人口として計測し、最重要指標として採用します。

都道府県別ブランドランキングでは毎年1位を獲得する北海道なのに、一向に移住が進まないというような矛盾も無くなります。


③ 特化文化の重視

成熟社会化した日本の都市部では、防犯や衛生分野はもちろん一定水準の生活利便性は担保されていると認識します。

その意味で「Liveable Well Being City調査」に採用されている教育施設や健康・介護施設の有無など都市の必要条件施設の評価だけでは、魅力は測れないと考えます。

FIACS指標では角川アスキー総研との連携により、Twitterトレンド分析データのキイワードによって、その街の「街の話題流通量」を計測評価します。

エンタメ施設関連データで話題になった後、来場者数が増えるなどの相関関係が示されており、共感人口につながると想定します。

さらにキイワード解析によってその街の強みが把握でき、街づくり施策の効果検証と「次の一手」の検討データを提供可能です。


④ ソフト重視の街づくりを経年評価

街は一度作ってしまうと変え難いハードな基盤や施設と、努力と工夫で進化させ続けられるソフト施策から成り立っています。

もちろん広い公園や立派な劇場なども重要ですが、その公演や劇場で開催されるイベントやプログラムも評価されるべきだと考えます。

FIACS指標では街づくりのハードと共にソフトも重視した指数設定を行います。具体的には、行動データ及び情感データの影響評価が約50%になるように指数化します。

イベント数も計測しますが、街づくり活動の活性化に伴い増加すると推定される「街の話題流通量」を評価します。サレにソフトな街づくりの成果として、来街者が回遊することで滞留時間が長くなり、リピーターになってくれる「共感人口の活動量」も増加すると推定します。

ハードを作って終わりではなく、継続的なソフト施策の評価は重要です。

飲食店経営の通説では「3回来店すれば常連になる確率が高まる:3回常連説」があります。わざわざ繰り返し街を訪れる人の数は街づくりの努力の成果だと考えます。


⑤ 街づくりを格付け

「世界の都市総合力ランキング」や「住みたい街ランキング」など街の評価ではランキング形式が多いようです。

毎年首位の街に注目が集まったり、順位の上下に一喜一憂する事も面白いですが、継続的な努力が必要な街づくりの特性とのズレも気になります。

FIACS指標では、様々な指標をスコア化しそれをランキングではなく、九段階の格付けとして表します。

もちろん格付けや指標・スコアの根拠を示すことによって、街の強みや改善分野を明らかにし、街づくり施策の参考につなげます。

ボルドーワインの格付けのように分かり易い指標化によって、街づくり事業者の貢献度合いの可視化を図ります。

街はそこで活動する記号にとっての経営資源であるという認識のもと、エリマネなどの街づくり事業者に対して「イベントを何回開催したのか?」「何人集客できたか?」だけではない、総合的で分かりやすい評価指標を提供したいと考えます。


最後までお読みいただき有難うございます。次回以降では、エリアクオリア指標の効用などを説明していきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。



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