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スージー・クアトロとヴィンテージアイテムとシースルー

今日の午前中に時間が空いたこともあって、スージーのThe Wild oneを大音量で流してクローゼットから服を全部出してきた。クローゼットというのは語弊があって、私は18歳から一人暮らししてるのだけれども大学生向けの狭い部屋にほとほと嫌気がさしていたので、働き始めたらとにかく部屋数のある家を借りるようにしていた。つまり、ウォークインクローゼットのような大きな収納がなかったとしても、部屋一つをクローゼットとして使っていたのだ(地方都市ならではの部屋使い)。その部屋は常にカーテンを閉めて(服が日に焼けないように)、どんなに愛しているキューリ(うちの猫)と言えども立ち入り禁止にしている(なぜなら猫毛がつくから)。つまり、私のクローゼット部屋文化は37歳になってもいまだに続いていて、今日も正確には、そのクローゼット部屋から服を引っ張り出してきたわけ。

クローゼット部屋といっても、部屋いっぱいに大量の服あるわけではない。なぜなら私の服は、どんなTPOにも対応できるよう最大限の着回しを考慮して、押さえるべきアイテムと小物をちゃんと厳選しているから。今すぐに高級レストランにも行けるし、今すぐに泥まみれの乗馬にも行ける、今すぐにセクシーなベビードールでベッドにも横たわれる。どれも私にとっては大事な服で、その瞬間に着ているだけで気分が良くなれるよう、そういう意味の厳選。

服には機能性というものが付きまとうのが世の常で、それはその服を着て何をしたいか、ということなのだと思う。乗馬には滑らないボトムが必要だし(なんでこんなに乗馬の話が出るかというと、私の最大の趣味がウェスタン乗馬だからです)、仕事をするにも動きやすさ、初対面の人にどう見られたいのか、そういうニュアンスも服に求められている機能性なのだと思う。フランス人が本当に服が少ないかは知らないけれど、あまりに服が少なすぎたり、自分が着たいという意識から離れたところにあるようなオーソドックスな服ばかりに囲まれると、クローゼットは途端につまらないものになってしまう。

そういう意味で、私が持っている服の中でなかなか着る機会もなく、なんの機能性も持たないけれど、まるでお菓子のように魅力的なのは、ヴィンテージアイテムたちだと思う。ヴィンテージとは言っても、私の中でのその服たちの立ち位置であって、実際には60年代、70年代のリアルヴィンテージもあれば、私自身が10代の時に購入した15年モノのアイテムや、ヴィンテージアイテムをリメイクしたもの、どうってことない古着屋で買ったいつのものだかわからないものもある。

どこまでが前置きなのか、よくわからなくなってきたけれども、今日引っ張り出して着た服の中にも、そのヴィンテージアイテムたちも、もちろん混ざっていた。最近は自宅で仕事をしていることもあって、なかなか着ることがないけれども、こうやってたまにご機嫌伺いをする。なんせ年代物なので生地も弱っているし、縫製も決して完璧なわけではないので、一枚づつ優しく優しく取り出して、眺めたりスタイリングしてみたりする。

例えば、ストラップにアンティークビーズが縫い付けられている、ヴィンテージ服の生地でリメイクしたシースルーのタンクトップ。ノースリーブでシースルーのため下着選びが難しい上、露出度も高いので気温が上がらない雪国の夏に活躍することはなく、なおかつ腕を囲むようにぐるっとビーズがついているため、肩にかけるバッグなども持てないという、非常に着るタイミングが難しい一枚。

例えば、フランメンコダンサーのように袖がボリューミーな花柄のシースルーのブラウス(そう、私はシースルーがとても好き)。一歩間違えるとフラワーチルドレンの生き残りのようになるし(わからない人はググってね)、今となっては息を止めないとボタンが閉まらないけれども、眺めているだけで幸せな一枚。

例えば、ヨーロッパヴィンテージのコットン素材の半袖のニット。コットンなので夏にぴったりで、鳥の羽のようにぱやぱやとした糸を使っているので、一枚でゴージャスな雰囲気になる。13年ほど前に大好きなお店で買って、その時にすでに年代物だったけれども、ほころぶこともなく、いまだに現役の一枚。

仕事用に買っていたワンシーズン着ただけでボロボロになるようなファストファッションのアイテムたちは、ばんばんゴミ袋に入れられていく中で、ヴィンテージアイテムたちは大事に大事にたたまれて、また定位置に戻っていく。

流行りもすたれも断捨離もない、どこかに着て行くためでも、何かをするためでもない、私だけのために存在している世界へ。スージーのヒステリックな歌声を聴きながら、今年特に厳しかった北国のこの冬が終わったら(まだまだ気が抜けないけれど)、たまにはヴィンテージアイテムで出かけようかなとぼんやり思ったりするのだった。



スージーのThe Wild Oneが気になる方は、こちらからどうぞ。服装もツボ。



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