「杜氏の手はキレイ」という説があります。麹を触るから? 酒粕に保湿効果があるから? 事実、世の中には「日本酒成分の入ったスキンケア商品」が多く存在します。
でも、本当に、本当にきれいなのか?
もし、麹や酒粕を扱うことが手のキレイさに直結するのであれば、杜氏だけでなく酒造りに従事する人はみんなキレイということになるはずです。
手の写真+アンケートで検証
その疑問を解決すべく、実際に酒造りに従事する方を対象にアンケート調査を実施しました。リアルな現場の声から「杜氏の手はキレイ」説を検証します。
杜氏の手はきれい、早速検証! まずは説通り「杜氏(または醸造責任者など、醸造全体の業務を行っている人)」の3名の手事情から!
土田酒造さん(群馬県)の手
https://tsuchidasake.jp/
ーー微生物や菌との共存を大切にされている土田酒造さん、さぞかしきれいかと思いきや…それは「水仕事をしない」ことが前提でした。現代の杜氏は大変なのですね。
森酒造場さん(長崎県)の手
ーーゴム手袋!!そうか、いまは令和の時代。衛生面を考えると「手袋」も当たり前の装備にはいってくるのですね。ちなみに、荒れ具合と関係なくもっとも美しい指をしている杜氏が森酒造場さんでした。
村井醸造さん(茨城県)の手
ーーこちらも土田酒造さんと近い意見です。水仕事の多い酒造り「あっという間」に荒れまくるそうです。薬局の方に激推しされたという「ロコベースリペアクリーム」気になります…。
ここまでは、主に「杜氏」とされる3人の手を紹介しました。ここからは杜氏以外の酒造りの工程を担当されている方々の「手」事情も紹介します。
宮泉銘醸さん(福島県)の手
ーー他の方の話では「杜氏は手作業をしないから」とありましたが、「手作業をする」立場の方からするとまた違った意見。「荒れるからケアする、ゆえにきれい」というパラドックスがうまれました。3種のハンドクリームはさすがです。
下村酒造さん(兵庫県)の手
https://okuharima.jp
ーー「食品・飲食品を扱う以上、(微生物学的に)きれいであるべき」という、硬派な解答をいただきました。美容的な観点でアンケートをとっていた自分が恥ずかしいです。酒造りにおける「きれい」の定義は2つあるのですね。
以外にも、ここまで手がきれいになる要因とされていた「麹」といった言葉はさほど出てきていません。では「麹」を専門に行う「麹屋さん」の手はどうでしょうか?
おかしなこうじやさん(兵庫県)の手
ーー絶対嘘!!最後のアンケートにして、企画がゼロになりました。
昔の杜氏は、本当に綺麗だったのかも?
アンケートの結果、水仕事の多い杜氏・酒造関係者は「むしろ手が荒れやすい」傾向が強くみられました。
その一方で、土田酒造さんからは次のような見解もいただきました。
ここに、「(昔の)杜氏は主に米や麹のチェックを行っていた」という点を考慮すると…「昔の杜氏」は本当に手が綺麗だったのかもしれません。ロマンっぽいものを感じてきました。
また、酒蔵の仕事と聞くと「手作業」のイメージがありますが、実は口に入る商品を扱うという、徹底した衛生管理が必要な環境。見た目のきれいさとは異なる「手がきれい(=清潔)」という点も重要なのですね。美しさ以上に、衛生の観点から手をケアしているという、真摯な姿勢も多く見受けられました。
ご協力いただきましたみなさん、ありがとうございました。
最後に、シンプルにきれいな指先をもつ森酒造場さんの「手の平側」の写真を貼り、検証を終えます。
寒いなか毎日お酒づくりに向き合っている多くの「手」に感謝しつつ、お酒を美味しくいただきます。