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スパイス×日本酒の新世界! 五味を超える新しいペアリング(wacca、Shizuku)

巷で「本格的なスパイスカレー」が流行している昨今、日本酒好きな私は「スパイスで日本酒を飲む」ことに注目しています。

「スパイス」というと「辛い」イメージがありますが、インド食材店などにずらーっと並ぶスパイス(粉とホール)には、日本でいう「さしすせそ」どころじゃない、多種多様な種類があります。

スパイスを操る系の人たちは、それらを組み合わせて多様なスパイス料理をつくります。スパイス慣れしていない日本人の私にとっては新鮮で興味深く、つまり「酒のつまみ」として強いのです。

南インド料理「スリマンガラム」のカレー以外のスパイス料理。酒がすすみます。

さらに、本家・インドは宗教上お酒を飲まない人が多いため「お酒と楽しむ」ことへの背徳感や、未踏の地をのぞく探索欲があるのもポイントです。

八丁堀にあるwaccaと、上板橋にあるshizukuという、スパイスと日本酒を楽しめるお店にお邪魔してきました!

【wacca】オリジナルスパイス料理を「熱燗」で味わう

1軒目は東京・八丁堀にある「Japanese Spice Curry wacca」。昼はカレー営業、夜はスパイス料理の居酒屋になります。訪れた日はイベント営業。「日本酒の熱燗×スパイス料理」のペアリングを提供していました。

横浜にあるカレー×熱燗のお店「やぶや」の店主がおかんを振る舞っていました。

ペアリング①ダヒプリ×仁井田本家 薄濁り

「ダヒプリ」? 見知らぬ名前を見て思わすお願いしました。聞くと「インドのスナック菓子」的な食べ物で、薄い生地の揚げたボールの中にマッシュポテトや玉ねぎなどをつめ、上からヨーグルトソースをかけたものだそう。

ヨーグルトソースの濃い酸味と、なぜか日本っぽい甘辛ソースが口の中で混じり合い、口が「よくわからんけどとにかくおいしい」状態になります。

合わせる日本酒は、ヨーグルトっぽさがあるにごり酒。「乳酸の酸味」があることで、料理とお酒がマッチするのだそうです。さらにお酒が温かいことで、ダヒプリの「よくわからんおいしさ」が増します。

ペアリング②芝エビアチャール×仁井田本家 樽酒

「アチャール」とは簡単にいうとスパイス漬物です。野菜や果物をはじめ、だいたいどの食材でもスパイスの人たちにかかれば「アチャール」になります。

食べて、お酒を飲むと…これはすごい、「カレーライス」だ。

スパイスのいろいろな刺激(詳しくはわからない)があり、噛むとエビの味がひろがります。そこに樽酒の熱燗が入ってくると、ちょうどまとまり「一皿」になるのです。カレーだこれ、カレーだ、とぐいぐい進みます。

アラカルト カレーどて焼き×カルダモンハイボール

どて焼きというより、カレーです。濃厚なカレーです。牛すじがごろっと入っていて、それがとろけて全体的にねちょねちょした物体になっています。
パキスタンカレーにある「カラヒ」とか「ニハリ」に近い印象です。

お酒はカルダモンの香りのハイボール。カレーのスパイスと、お酒の清涼感がいいです。一気に流し込んでくれます。本当にインドではお酒を飲まない人が多いのか、不思議になるほどのおいしさです。

【shizuku】店主こだわりの発酵×スパイス×燻製の店

ミラーボールがあるお店です

次は、上板橋にあるShizuku。スパイス・発酵・燻製に魅せられた店主による独特な滋味のつまみと日本酒を楽しめます。

店主。このタイプの帽子って、カレー屋さん以外見たことないです。

何味かわからないけどおいしい「百合根キーマ」

写真は非常に暗くて地味なのですが、おいしいです。ただおいしいではなく「不思議においしい」。百合根のシャキシャキ食感と、スパイスのビシッとした刺激、清涼感があります。大量に持って帰りたいです。

日本酒は70種程度。他、日本ワインや日本ビールなどもあるそうです。
写真の日本酒は「君」。とろっとした舌触りと甘さが、百合根のさわやかさと混じります。何がどうあっているかわからない別々の味なのに、妙に癖になります。

不思議とお酒にあう「自家製タンドリーチキン」

自家製のヨーグルトにつけこんだタンドリーチキンに、モロッコの調味料「ハリッサ」を追いスパイスしたものです。

これには熱燗があいます。ヨーグルト系の酸味って、日本酒の奥〜の方にある乳酸と妙に相性がいいのです。

また、shizukuは調味料も自家製のものが多いのも特徴。自家発酵の醤油麹やヨーグルトソース、それに自家熟成、自家燻製した肉や魚など、あまり見たことのない不思議な料理がどんどん出てきます。

2週間かけてつくったという鶏ハム。調味料に漬けて、燻して、を繰り返すそう。

日本酒はパワフルな味わいの「裏・蛇形」の熱燗。2週間鶏ハムは噛めば噛むほど旨味が出てくるので、パワー系の日本酒にも負けません。

スパイス×日本酒は、凸凹が楽しい

とんこつフォーキーマカレーという謎の〆をいただきました。うまいです。

スパイスと日本酒の組み合わせ、おもしろいです。

まず、「スパイス」は日本の料理の味ほど身体に馴染んでいないので、味の方向性がいちいち新鮮。その刺激があるだけでまず十分に楽しいです。

加えてスパイス料理は、食べ進める途中にホールスパイスが弾けて別の風味がでてきたりと、一口ごとに違う印象になり、味の変化の「おもしろさ」が最初から最後まで続きます。

shizukuの店頭にあるミラーボール。杉玉だと思ってたので驚きました

そこに日本酒が入ってくると…もうこれは「合う」「合わない」という基準を超えてしまうのです。

スパイスによる味の凸凹に、お酒がある瞬間は同調したり、別の瞬間ではお酒の味が目立ったり、次の一口では食材の味が出てきたり、「味と味」のつながりがどんどんかわっていきます。電飾があちこちでチカチカしているような感じです。

スパイスと日本酒の世界はおもしろい。
そして多分、知れば知るほどおもしろい。

ある一定の年齢になると、スパイスからカレーをつくる人が増えるのも、なんとなくわかります(つくりはじめました)。未知の味や刺激はおもしろくて、お酒との合わさり具合は、わからないからこそ楽しい。

今年はスパイス飲みをすすめていきます!


もちろん、お酒を飲みます。