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カレー×日本酒の不思議ペアリング体験! 関内【やぶや】スパイス料理で熱燗が進む

私の好物は、酒とカレーです。スマホのカメラロールは、「酒」「カレー」「飼い猫」が多くを占める状態になっています。

実際のカメラロール

今回、そんな2大好きなものを同時に楽しめる「スパイス料理と日本酒を合わせる店」がある、しかも「ミールス(インドの定食)を一緒に楽しめる」と聞き、早速行ってきました。

インドってお酒ダメな場合が多いのに…日本酒と合うの?
スパイスみたいにパンチが強すぎるものには、日本酒は負けそう…?

などなど、うっすらと心配を抱きながら向かったのですが、とても楽しかったです。スパイスと日本酒は、キワモノではなく、自然な組み合わせでした。

関内にあるSpice Drunker やぶやさんをレポートします!

スパイス料理のコースと日本酒ペアリング専門店

ちょっと入りにくい

横浜、関内。繁華街の路地裏にある雑居ビルの外階段を上がった場所に、お店の真っ赤なドアがあります。

酒瓶が並ぶカウンター。いい眺めです。

「やぶや」の店内はカウンター席のみ。居酒屋さんの特有のお酒の香りと、スパイスの複雑な香りが漂っています。つまりはじめての香りです。

メニューは「おまかせコース(4品)」8000円のみ。ペアリングの日本酒(熱燗)・またはノンアルコールドリンクがつきます。さらに飲みたければオプションで追加注文も可能です。

こちらが店主の藪さん。ワンオペです。
本ボクサーという経歴の持ち主で、スパイスは南インドカレー「エリックサウス」や、バングラディッシュカレー「カラチの空」でスパイス修業。日本酒は「燗酒Bar Gats」で学んだそうです。

スパイスと熱燗、どんな組み合わせになるのか。コーススタートです!

1品目:スパイスつまみ盛り×にいだしぜんしゅの樽酒

1品目は3つのおつまみがのったプレート。
左から「ホタルイカのアチャール」、「ホタテのギー焼き」、南インドの「魚の唐揚げ」です。とくにアチャール、結構辛いです。おいしい。

ひとり1とっくりで提供されます。

これに合わせる日本酒は福島県「にいだしぜんしゅ 樽酒」です。

「これは加水燗です。一度升に入れて木の香りを移した水を加えて熱燗にしています。『旅館ででてくる、おひつのごはん』だと思ってください」(藪さん)

スパイスの尖った香りと、樽酒の丸い香り…不思議な組み合わせです。合わせてみると…おお、おもしろい。日本酒の丸い味の上で、いろいろなスパイスがピリピリと動き回ります。樽酒ってすごい、単体でもくせがあるのに、スパイスとあわさると「ほどよい調和」に落ち着きます。

居酒屋さんとかではよく「あの日本酒は〜」「あの店行きましたか?」みたいな日本酒界隈の話題になることが多いのですが、ここではさらに「カレー界隈」の話題に花がさきます。会話も「日本酒×カレー」が混じっていて楽しいです。

【2品目】ベンガル風アクアパッツァ×神鷹 水酛仕込み

あさりを多くいれすぎちゃって…と、途中で追加のあさりが提供されました

魚とあさりたっぷりのベンガル風アクアパッツァです。インド料理とかでよくある「(丸ごとゆえに)骨がたっぷりあって食べづらいけどとにかくうまい」タイプの料理です。手がオイルでべたべたになります。

お酒は静岡県「英君」の5年熟成酒です。
「このお酒は、パンです。それも全粒粉のパン。カレーにあわせる『ロティ※』だと思ってください」(藪さん)

※無発酵のパン。インドやパキスタンでカレーにあわせるもの

アクアパッツァは辛さ控えめながらじわじわと汗が出てくるタイプ。日本酒は穀物系の甘さで…本当だ、パンだ。焼き立てのパンだ! 日本酒とのペアリングというより、日本酒をカレーにあう主食に見立てているのが面白いです。

【3品目】マトン×にいだしぜんしゅ にごり

続いてはがっつりマトンです。これをヨーグルトと塩で煮込んだ料理ですが、とにかく肉の重量とうまい油がすごい。いっぱつでもたれるメイン系です。
「合わせる日本酒は『にいだしぜんしゅ』の濁り酒です。にごり酒を、煮込みの『ヨーグルト』と同調させる狙いです」(薮さん)

本当だ。にごり酒の乳酸っぽいところが、料理のヨーグルト感をぐっと引き立てます。酒というより「調味料」を足しているような印象です。

ちなみにこのお酒は、先ほどよりも小さめの酒器でいただきました。小さいほうがお酒の甘みが強調されるのだとか。

お酒によって器がかわるので、酒器が渋滞していきます。

【4品目】〆のミールス×花巴 水酛

〆のラーメンならぬ、〆のミールスです。ミールスは簡単にいうとインドの定食。数種類のカレーや惣菜たちをご飯にかけて、混ぜながらいただくものです。
アチャール(すっぱい漬物)が数種類乗っているのもうれしいです。

お酒は奈良県は花巴の水酛×水酛。室町時代の製法「水酛」でつくったお酒で、さらに水酛を醸すという個性派。じゅわっと甘酸っぱい味が特徴です。

「花巴は『青梅のコンポート』だと思ってほしいです。個別のお酒ではなく、ミールスのなかにあるひとつの料理だと思って、食べながら一緒に飲んでください」

混ぜる!

他のペアリングのように「調和する」のではなく、はっきりとした「異物感」があります。料理の中の「コンポート」ですから当然です。

でも、そもそもミールスとは、いろいろな味を混ぜて、組み合わせの妙や発見を楽しむもの(と思っています)。辛さのなかに突然アチャールの酸味が顔を出すように、花巴のぎゅっとした甘酸がアクセントになり、ごはんが進みます。

ちなみに、他のおかず同様に「ミールスにお酒をかけて混ぜたら」どうなるかというと…「絶対にやめたほうがいいです」(藪さん)とのこと。お酒はお酒、あくまで口内調理なのですね。

特別なお酒もおもしろい!

ここまでがコース内容ですが、やぶやではいつでも追加でお酒をオーダー可能です。なかでもおいしかったのが「ハタハタの骨酒」

ひとり1合!

「出汁割?」かと思うくらいしっかりと魚の風味がうつっていました。これはペアリング関係なく、コース中にずっとちびちびいただいていました。

さらに「燗酒モヒート」。鼻に抜けるミントの香りが新しいです。こちらはミールスのときの追加注文。「これはペアリングというよりも、いろいろな要素を混ぜる楽しさがあるミールスにはない、ミントの要素を加えたものです」(薮さん)とのこと。そうか、混ぜることが前提の料理の場合は、「新しい要素を加えてみる」という方法になるのですね。

カレーと日本酒は、王道の組み合わせだった!

はにかむ藪さん

カレーと日本酒のペアリングコース、おもしろかったです。
どんなにトリッキーな組み合わせになるだろうかといろいろ想像していたのですが、味わってみるとどれも違和感なくしっくりといただけて、それがむしろ意外でした。なんというか、普通に良質なつまみでお酒が進のです。

「変わったことをしようとはしていなくて、スパイス料理をおかず、日本酒をごはんやパンと捉えているんです」(藪さん)

なるほど、パンやごはんなら、お酒を飲まないことの多いインドの料理でも、普通に組み合わせられているもの。だから違和感なくすすむのですね。

おいしすぎてちょっと残していました

あと、繰り返しになりますがものすごく美味しかったホタルイカのアチャール。キロで買いたい。

日本酒はさまざまな料理の味を「膨らませる」「寄り添う」食中酒だといわれることがありますが、スパイスの世界においても、その魅力は発揮されました。すごいです、スパイスと日本酒。

やぶやさん、ご馳走様でした!


もちろん、お酒を飲みます。