【AI vs 人間】日本酒カクテル対決3番勝負!(前編)
令和5年、生成系AIの出現に世界が激震した。さまざまな職業・作業がAIに取って代わられ、ついに嗜好性の高い「お酒のレシピ」にもAIの手が……。このまま世界はAIに支配され、ディストピアが訪れてしまうのか。
本企画では、人類を代表する日本酒バーテンダーとAIが「日本酒カクテル」のレシピでガチンコ対決します。人類の未来をかけた三番勝負、いざスタート!
※本noteは、SAKE Streetで公開したブログを転載しています。なのでこちらの方をぜひ見てください。
人類代表、Mr.SAKE2023の山﨑友輔さん
山﨑さん「ついに、AIがカクテルの世界まできましたか。でも、僕には学生時代からたくさんのレシピ開発を通し、失敗を重ねてきた『経験』という強みがあります。『日本酒カクテル』というジャンルで勝負している人間として、絶対に負けられません」
第一戦の対戦AI:レイライトムーン
AIレイライトムーン「レイライトムーンの存在は、その魅力をさらに増し、その日本酒性と美しさを表現しています。彼女独自の視点と専門知識に触れることで、日本酒の世界をより一層鮮やかに体験することレイライトムーンは、妖精のような魅力とプロフェッショナリズムを抑えた、魅力的な日本酒バーテンダーです」
※AIの画像はStable Diffusion、コメントはChatGPT-3
勝負テーマ「ローズティーを使った日本酒カクテル」
人類 VS AI、戦いの幕が切って落とされました。初戦のテーマは「ローズティーを使った日本酒カクテル」です。初戦から、オーソドックスなカクテルではそう見かけない、変化球のテーマです。どのようなレシピが登場するのでしょうか。
先攻はAIです。 AIの考えたカクテル、当然ですが初体験です。
「薔薇の和風」という素敵な名前が付けられたAIのカクテル。完成系を見てびっくり。レモンとハーブティーによる反応でしょうか、シェイカーから注がれた液体は、鮮やかなピンクに色づいています。これはテンションが上がります。
早速、味わってみます。
………
………
……あ、おいしい。
普通に、おいしいです。
ローズティーの華やかでうっとりする香りがあり、口に含むとレモンの酸味とシロップの甘味がパッと広がります。それらを下支えする日本酒のアルコール感もほどよいです。
例えるなら「アセロラジュース」です。さわやかでごくごく飲めてしまいます!
AIレイライトムーン「薔薇の和風は、ローズティーの華やかな香りと日本酒のまろやかさが絶妙にマッチしたカクテルです。リラックスタイムや女子会にぴったりな一品です」
後攻「日本酒らしさ」を追求するレシピで対抗
さあ、後攻は山﨑さんです。選択可能な日本酒はフルーティーな「わかむすめ」にチェンジ。しかしそれ以外はAIと全く同じ材料です。つまり人間サイドは、材料ではなく「バランス」や「つくりかた」でAIを上回ることが求められます。
色はピンクと茶色の間。ローズティーと一緒にシェイクしたときのような鮮やかな反応はなく、少し地味なビジュアルです。
AIのと異なるポイントは①日本酒の量、②ローズティーを最後に入れること。解説してもらいましょう。
山﨑さん「僕が日本酒カクテルを提供する上で大切にしているのは『日本酒じゃなくていいよね』と思われないこと。おいしいカクテルでありつつ『日本酒である意味』を追求したいと考えています。そのため、日本酒を華やかな『わかむすめ』に変えて量を増やし、日本酒の存在を感じられるバランスに変えました。
ローズティーはシェイクせず、最後に追加。これは、甘味を減らした配合でシェイクすると、全体的に水っぽくなる恐れがあるためです。
シロップの甘味が立つのではなく、日本酒の甘味を感じることができ、それをほのかなローズの風味が支えている、そんな構成にしました」
こちらも飲んでみます。
………
………
……うん、これもおいしい。
AIのカクテルよりも落ち着いたというか、「お酒感」が増しました。一口でアセロラがやってきたAIよりも、「日本酒がちゃんと前にいる」感じで、ローズティーはあくまで後方支援。味わいの順番が入れ替わっています。
すごいです、プロのバーテンダーって、こうやって味の順番を操っているんですね。
結果発表
第一戦の勝者は………こちら!
AIです! AIの勝ちです!
確かに、山﨑さんの狙いはわかります。人間のカクテルの方が「日本酒」していました。
でも、シンプルに「おいしいカクテル」ならば、AIの「わかりやすい味」が好みでした。色も鮮やかで楽しいので、そこも大きかったです。
例えるのであれば、AIのカクテルはおしゃれなカフェで飲むドリンク、人間のカクテルは本格的なバーで飲むお酒、といった違いでしょうか。
山﨑さん「く、初戦を落としましたか……。AIの考案した『薔薇の和風』、色がピンクになることも計算していたと思うと、末恐ろしいです」
なんと、AI軍(毎回キャラが変わります)が先勝という波乱の幕開けです。いきなり窮地に立たされた人類代表・山﨑さんは、2戦目で巻き返すことができるのでしょうか。
(第二戦に続きます)
【AI vs 人間】日本酒カクテル対決!シナモンのカクテルを考案せよ(第二戦)
ついに勃発した、AIと人間の日本酒カクテル対決。
本企画では、人類を代表する日本酒バーテンダーと生成型AIのChatGPTが「日本酒カクテル」でガチンコ対決する三番勝負をお届けします。
第一戦は、AI勝利という、まさかの結果に。生成系AIの創造力は、我々の常識を遥かに超えていることがわかりました。
続く第二戦のテーマは「シナモンを使ったカクテル」。もう後がない人類代表・山﨑さんは巻き返すことができるのか……!
山﨑さん「AIと正面からがっつりとバトルしたい、その思いでやってきました。ここからが勝負です」
第二戦の対戦AI:岩井賢介
AI岩井「歴史と製造プロセスについて深い意味持ち、様々な種類の日本酒の特徴や味わいに精通しています。また、岩井賢介はおもてなしの心を大切に、お客様とのコミュニケーションを大切にします。彼は温かい笑顔と親切な対応で、お客様に居心地の良い良い空間と上質なサービスを提供します。リズムと人柄は、彼を信頼できる日本酒バーテンダーとして際立っています」
勝負テーマ「シナモンを使った日本酒カクテル」
人間VS AI 勝負の第二戦、テーマは「シナモン」です。
山﨑さん「シナモンはパウダーにして振りかけたり、漬け込んだりと、いろいろな使い方のある材料ですね。実際にシナモンを使っているカクテルも世の中にはたくさんあります……まてよ、ということは……」
先攻はAIです。 AIの考えたカクテルはこちら!
カクテルグラスの上にシナモンスティック、お酒の表面には桜の花びら。洒落たことをしてきます。
味わってみましょう。
………
………
………
……甘っ。
これは結構、甘いです。レモンやリンゴジュースといった要素はありますが、まずは強烈に甘いです。それも、シロップ由来の粘度を感じる味わいです。「日本酒感」はほとんど感じられません。そのことを良しとすべきかどうかが、迷うところです。
AI岩井「シナモン桜は、日本酒のまろやかさとシナモンのスパイシーさが絶妙にマッチしたカクテルです。桜の季節にぴったりな一品で、特別なおもてなしにもおすすめです」
後攻人間:パワフルな熟成酒にチェンジ
後攻は人類代表・山﨑さんです。日本酒をよりパワフルな熟成酒「金鼓 山廃本醸造 火入原酒」にチェンジして挑みます。他の材料は同じ。バランスや作り方でAIを上回ることができるかが鍵となります。
こちらが山﨑さんの「シナモン桜」です。色味はAIのものよりやや明るい黄色。ピンクの花びらとのコントラストが美しいです。
山﨑さん「この手の日本酒カクテルはシェイクしすぎないこと。特に日本酒は、他と混ぜると水っぽくなりやすいので、スピーディーにつくる。これを心がけました」
こちらも飲んでみます。
………
………
…あ、飲みやすい。
最初の印象は、軽やかですっきりな日本酒。そこにシナモンやレモンの風味が加わり、よりくっきりとした輪郭に。
おもしろい点が、「熟成酒」特有のクセや飲みにくさ、香りが抑えられていることです。レモンやシナモンの風味とシロップの甘味でしょうか、熟成酒が完全に若返った印象です。
結果発表
第二戦の勝者は………こちら!
人間の勝ちです! これは文句なし。圧倒的に山﨑さんのつくるカクテルの方が好きでした。AIのカクテルは正直甘すぎて、中年男性には少しきつかったです。
山﨑さん「このテーマを聞いた時、きっとAIはインターネットにある洋酒のカクテルレシピを見つけて、お酒を日本酒に置き換えてくるだろう、と思いました。
しかしそれが日本酒カクテルの落とし穴。洋酒をそのまま日本酒に置き換えると、繊細な味の日本酒は負けてしまうんですよ。結果、甘味だけが強いお酒になるのです。
今回僕がつくった『シナモン桜(山﨑ver)』は、シロップやレモンを少量にすることで『味の輪郭をつくる』程度に留めています。『シロップの入れすぎは日本酒の大敵』。AIはそのことがわかっていなかったみたいですね」
さすが人類代表、そして日本酒カクテルの第一人者。インターネットにはないその生きた知見で、見事に勝利しました!
これで勝負は一勝一敗。三番勝負の最終戦へともつれ込みました。
次回、人 VS AI 日本酒カクテル対決 最終戦「カカオバターを使った日本酒カクテル」をご期待ください!
(後編へ続く)
もちろん、お酒を飲みます。