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【AI vs 人間】日本酒カクテル対決ついに決着、勝つのはどっちだ!(後編)

AI対人間の日本酒カクテル対決三番勝負は、現在一勝一敗。ついに大一番を迎えます。

圧倒的な情報量と創造性を兼ね備えるAI、自ら失敗を重ねた「経験値」を土台に挑む人類、これまでの勝負では、両者その強みを発揮してきました。

最終戦のテーマは、これまた意外な「カカオバター」。トリッキーな材料はどちらに有利に働くのか……決戦のときです。

※本noteは、SAKE Streetで公開したブログを転載しています。なのでこちらの方をぜひ見てください。

人類代表、Mr.SAKE2023の山﨑友輔さん

山﨑友輔さん。日本三大銘醸地に数えられる広島・西条に育つ。甲南大学在学中には「日本酒研究会」代表を務める。バーで修業を積んだ後「日本酒カクテル」のプロとして独立。現在は八重洲ミッドタウン「TASU+」他、店舗やイベントなどで日本酒カクテルのレシピ提供・店頭での提供を行っている。2022Mr.SAKE JAPAN。最近ハマっていることは「お酒の味わいを擬人化すること」。

山﨑さん「第二戦のバトルで、AIにはカクテルの情報はあっても、日本酒カクテルの情報はそう多くないことがわかりました。勝負を決めます!」

最終戦の対戦AI

ケビン・クラーク。彼は独自のスタイルと豊富な知識を持ち、日本酒の世界を広める使命感を持っています。

AIケビン「創造力に富んだレシピや飲み方のアイデアを持っています。彼は独自の視点から日本酒を取り入れてカクテル、他のお酒との組み合わせやユニークなフレーバーの融合を試みることで、新たな楽しみ方をご提案します」

※AIケビンの画像はStable Diffusion、コメントはChatGPT-3で作成

あらためてルール説明
・AIと人間が1杯ずつカクテルをつくり、美味しさを競う。
・AIのレシピは、各回のテーマに沿ってCahtGPT-4で生成する。日本酒は「大那 超辛口 純米酒 火入れ」を使用。
・人間が使える材料は、AIのレシピと同じ。日本酒の銘柄は自由。
・審査はライターのクリーミー大久保が行う。3戦目なのでだんだん酔ってきている。

勝負テーマ「カカオバターを使った日本酒カクテル」

いよいよ最終戦、テーマは「カカオバター」。馴染みのない材料です。

山﨑さん「これは……難しい。カカオバターを使うカクテルって、あまりないんですよ。それにカカオバターは温めてやっと液体になるもの。冷たいお酒と混ぜた瞬間固まってしまわないか……そこが心配です」

では先攻AIのカクテルからいきましょう。レシピはこちらです!

タイトル「カカオ雪国(Cacao Yukiguni)」
材料:
・日本酒 45ml ※本企画では辛口の「大那」を使用
・カカオバター(溶かしたもの)15ml
・コーヒーリキュール 15ml
・ミルク 30ml
・氷
・カカオパウダー(お好みで)
作り方:
・カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、溶かしたカカオバター、コーヒーリキュール、ミルクを加えます。
・よく振って、氷を入れたグラスに注ぎます。
・お好みで、カカオパウダーを表面に振りかけて完成です。

コーヒーリキュールとミルク、この2つからは「カルアミルク」っぽい味かもと予想できますが、その結果は……。

見た目はきれいです。しかしよーく見ると、グラス内の上部にカカオバターの「層」があります。では、味わってみます。
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………
………
………

……おいしくない。

まず、液体バターが直接口に入るため、体が拒否反応を起こして「うっ」となります。脂分の後には、苦いコーヒーと、甘味が皆無な日本酒のアルコール感がやってきます。後味は、ただただえぐいです。

AIケビン「カカオ雪国は、カカオバターのまろやかな風味と日本酒の深い味わいが絶妙にマッチしたカクテルです。リッチな味わいで、デザート感覚で楽しむことができます」

黙れケビン。

どうしよう、最終戦でやばいカクテルが誕生してしまいました。

……ここは、観覧席で見学している二戸編集長にもぜひ感想をいただきたいところです。味はいかがでしょうか?

だめだ、編集長が心を閉ざしてしまっている。

早く口をリセットしたいです! 人類代表・友輔さん、カクテルをお願いします!

後攻:カカオバターは「香り」程度に抑え、正反対のアプローチを目指す

人類がAIに勝つ、最後にして最大のチャンスが訪れました。山﨑さんが選んだ日本酒は「Tsuchida 菩提酛」。さすがのチョイスです。濃密な甘味・酸味は、きっとコーヒーやミルクに負けないはず。人類、いっけーーーーー!

材料:
・日本酒 60ml ※Tsuchida 菩提酛
・カカオバター(溶かしたもの)10ml
・コーヒーリキュール 10ml
・ミルク 15ml
・氷
・カカオパウダー(お好みで)
作り方:
・カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、コーヒーリキュール、ミルクを加えます。
・よく振って、氷を入れたグラスに注ぎます。
・溶かしたカカオバターを数滴垂らします。
・お好みで、カカオパウダーを表面に振りかけて完成です。

こちらが山﨑さんバージョンの「カカオ雪国」。同じ材料を使っていることもあり、見た目の変化はさほどありません。

山﨑さん「カカオバターは香り付け程度にし、シェイクせずにスプーンで垂らしました。全体の構成は、コーヒーやリキュールを抑え、反対に日本酒を立たせています。AIとアプローチを逆転させた、そんな一杯です」

こちらも飲んでみます。

………

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………

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………

……微妙。

確かに、日本酒が前にいます。しかしそれは、AIカクテルで感じたえぐい後味(日本酒由来の部分)がアタックにきただけで、順番が変わった、という感じです。

……どうしようこれ。


だめだ、編集長も固まっている。私がちゃんとジャッジしなければ。

決めました。

結果発表

結果は………………


ドロー!ドローです!!

ごめんなさい、どっちもどっちです、このカクテルは。シンプルにおいしくない。

それにせっかくの対決シリーズ、こんな結果で終わるのはあんまりです。延長線をお願いしたいです。

まさかの延長線に突入!

AIと人類の日本酒カクテル三番勝負、なんと延長に突入です。
次こそ本当に最後の最後。決着をつけにいきましょう!

次回、人 VS AI 日本酒カクテル対決 最終戦「ウイスキーを使った日本酒カクテル」です!

※ちなみに、味見をしていたSAKE Streetのぽん店長は「友輔さんのカクテルの方が、分離していない分まとまっていて好きです」とのことでした。


(延長戦に続きます)

【AI vs 人間】日本酒カクテル対決延長線!ウイスキーを使うカクテルを開発せよ

AIと人類の日本酒カクテル対決、クライマックス!

人間の日本酒バーテンダー・山﨑友輔さんとAIバーテンダーによる「オリジナル日本酒カクテル対決 三番勝負」を繰り広げてきました。

これまでの結果を振り返ってみましょう。

【第一戦】

第一戦は、AIバーテンダーのレイライトムーンと「ローズティーを使った日本酒カクテル」で対決。レイライトムーンの考案した「薔薇の和風」に軍配が上がりました。

【第二戦】

続く第二戦は、AI岩井賢介と「シナモンを使ったカクテル」で勝負。

AI岩井が「桜の花びらをトッピング」というおしゃれな技を繰り出すも、日本酒を「熟成酒」にチェンジした人類・山﨑さんのカクテルが勝利。「インターネット上にあるカクテルレシピから学んでおり、日本酒に最適化されていない」というAIの欠点を見抜きました。

【第三戦】

そして第三戦、AIケビン・クラークとの戦いのテーマは「カカオバター」。意外な材料をいかに取り入れるか、互いの知識と技が正面からぶつかりあう展開でしたが……まさかのドロー。

三番勝負の結果は「一勝一敗一分」。互角。
そこで勝負は延長線へ。改めて、最終決戦を行うことになりました!

最後のテーマは「アイラウイスキー」です。独特の香りを持つパワー系のウイスキーが日本酒と合わさったら何が起こるのか、まったく予想がつきません。

AIの圧倒的な情報量が勝つのか、山﨑さんの経験が勝つのか……最後の戦いがスタートします!

山﨑さん「ウイスキー……難しいテーマですね。普通に考えると、確実に日本酒が負けます……」

延長戦の対戦AI

田口真理子(たぐちまりこ)

AI田口真理子「田口真理子は、に対して深い愛と情熱を持ち、その魅力をお客様に伝えることに喜びを感じています。彼女は日本酒のバリエーションや味わいの広さを見据えて、お客様の好みやニーズに合わせた最適な日本酒のご提案を致します。人間味は、田口真理子を信頼できる日本酒バーテンダーとして際立っています」

※AI田口の画像はStable Diffusion、コメントはChatGPT-3で作成

決戦「アイラウイスキー」を使った日本酒カクテル

今度こそ最後の戦いです。先攻AI田口真理子のカクテルからいきましょう。レシピはこちらです!

タイトル「煙る桜(Kemuru Sakura)」
材料:
・日本酒 30ml
・アイラウイスキー 20ml
・オレンジリキュール(トリプル・セックなど)10ml
・アンゴスチュラビターズ 2ダッシュ(約2ml)
・オレンジピール
・氷

作り方:
・カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、アイラウイスキー、オレンジリキュール、アンゴスチュラビターズを加えます。
・よく振って、氷を入れたオールドファッションドグラスに注ぎます。
・お好みで、オレンジピールをツイストして香りをグラスに移し、飾りとして添えて完成です。

ウイスキーと日本酒以外の材料は「オレンジ」と「ビターズ」です。

山﨑さん「なに……まさか『オールドファション』や『サイドカー』を日本酒でつくるつもりか……いやまさか」

※オールドファッション:ウイスキーとビターズを使ったカクテル。サイドカー:ブランデーとオレンジを使ったカクテル。

こちらが、AI真理子のカクテル。シェイクの後に加えた、オレンジピールの香りが華やかです。
では、いただきます。
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……いけます。おいしいです。

オレンジの香りが、アイラウイスキーのピート香をうまく覆い隠します。飲むとビターズの苦味が効いていて、オレンジとウイスキーの甘味をしっかりまとめています。

ただし、日本酒はどこにもいないです。

山﨑さん「オールドファションとサイドカー、その間のようなカクテルでしょうか。ひょっとすると、オレンジの果肉を数切れ加えると、より飲みやすくなるかもしれません。さすがです」

AI田口真理子「煙る桜は、アイラウイスキーのスモーキーさと日本酒のまろやかさが絶妙にマッチしたカクテルです。スモーキーでスパイシーな風味が、食事の後やくつろぎの時間にぴったりな一品です」

田口真理子、やります! 大人な魅力全開の一杯をいただきました。

ではこれで本当に最後の最後、人類代表・友輔さん、カクテルをお願いします!

後攻:熱燗の「ホットカクテル」で勝負!

最後の人類ターン、山﨑さんは日本酒を「生酛」造りの「大治郎」にチェンジ。一貫した「日本酒の個性を活かす」アプローチです。最後までぶれません。

大治郎 生酛純米 吟吹雪

材料:
・日本酒 45ml
・アイラウイスキー 10ml
・オレンジリキュール(トリプル・セックなど)5ml
・アンゴスチュラビターズ 1ダッシュ(約1ml)
・オレンジピール

作り方:
・ちろりに日本酒、アイラウイスキー、オレンジリキュール、アンゴスチュラビターズを加えます。
・香りが立ち上るまで(温度の目安は48度程度)温めます。
・グラスに注ぎ、オレンジピールをツイストして香りを移し、飾りとして添えて完成です。

なんと山﨑さん、お酒を温める「熱燗=ホットカクテル」にすることに。独創的です。

完成です。温めているため、オレンジとウイスキーの甘く枯れた香りが強調されます。

では、いただきます。

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………

……おいしい…!

日本酒の「熱燗」と同じで、香りも味も「開いた」印象です。

飲んだ瞬間に柑橘全開の甘味とウイスキーの味が上り、追いかけるようにスモーキーな香りをまとった日本酒の「酒感」がやってきます。

日本酒で例えるなら、貴醸酒のような、強い甘味と苦味が同居している、かつ温かくてじんわりと染み込むような、不思議な一杯です。

山﨑さん「これは……正直悩みました。前回までの3杯は、自分の中ですぐに味のイメージができました。しかし今回は、ビターズとオレンジのバランスをどう変えていくべきか、手探りな部分も多かったです」

結果発表

AI VS 人類の日本酒カクテル対決、延長最終決戦。いよいよ結果発表です。

オレンジの甘味と苦味で妖艶な雰囲気を生み出したAI田口真理子か、日本酒を軸にホットカクテルで味をまとめた山﨑さん。勝つのはどっちか。

発表します!

……

……

……

AIか……
人間か……
人間か………!!?
AIなのか……!!!!?

人間です!人間です!!

勝者は人類代表、日本酒バーテンダーの山﨑友輔さんです!!

どちらもおいしいものの、山﨑さんのホットカクテルは1杯の味がまとまっており、心地いい味わいでした。見事、勝利です!!

とはいえ田口真理子もなかなか素晴らしい一杯。最終決戦にふさわしい名勝負でした!

勝利者インタビュー

山﨑さん、勝利おめでとうございます!見事、AIバーテンダー集団を破りました。人類と日本酒カクテルの未来を守ることができましたね!

山﨑さん「ありがとうございます!AIのカクテルは、世の中のカクテル情報をもとに生成されており『他のお酒でも成立する』ものだったと思います。

対する僕は、日本酒カクテルという世界を打ち出していることもあり、『日本酒を使う意味』を無くしてはいけないと、ずっと考えていました。

厳しい戦いでしたが、最後になんとか勝つことができてよかったです」

AIは日々成長しています。再戦の可能性はありますでしょうか?

山﨑さん「ええ。今回は世の中に情報の少ない『日本酒』だったため、人間が有利な面もありました。次は、より厳しい戦いになりそうです」

日本酒カクテルは、日本酒という選択肢を広げる第一歩

激闘が終わり、平和が訪れた酒ストリート2階のバトル会場。山﨑さんは、余った材料を使って即席の日本酒カクテルをつくってくれました。

勝負後のリラックスした雰囲気での一杯。ひょっとすると、一番おいしかったかもしれません。

山﨑さん「日本酒ってあまり混ぜる文化がないですよね。そのためか、『日本酒カクテル』というと難しいものだと思われてしまうことが多いのですが、こんなふうに気軽に混ぜてみる、というのもおいしいんですよ。

『日本酒は、瓶一本を飲み切れるかわからないから買いにくい』という声を聞くことがあります。飲みきれないなと感じても、他のお酒やジュースと混ぜてみると、おいしく飲めることもありますよね。

カクテルという方法を知っていれば、日本酒を買うハードルは下がるんじゃないかな、と」

山﨑さん「僕の理想は、お客さんに『日本酒』と、それを使った『カクテル』を一緒に提供することです。

日本酒が好きという人もいれば、カクテルの方が好みという人もいるでしょう。どちらでもいいんです。そこをきっかけに日本酒をおいしいと感じて『今度、買ってみようかな』と思ってくれればいい。

おいしいと感じるきっかけが増えることで、普段のお酒選びで『日本酒』という選択肢が増える。そんな未来を、日本酒カクテルで目指します」

山﨑さん、日本酒カクテル対決、本当にありがとうございました!


AIは今この瞬間も、人類の経験を猛スピードで学習し、成長を続けています。私たちの道は、「戦い」以外にはないのでしょうか。

もちろん、お酒を飲みます。