短編「学園の番人」

 この学校には危険な男子が居る。

 女子の弱みを握り、大勢でその女子を慰み者にする男達。

 被害者は何人も居た。

 でも、教師や親にその事を言えず、その男子たちは今も学校で平気な顔をしている。

 私には関係のない話……そう思っていたけど、そんなことは無かった。

「なぁ~なぁ~千絵(ちえ)ちゃ~ん」

「これ何の写真か分かるぅ?」

「………」

 空き教室に呼ばれた私を待っていたのは、男子生徒が4人。

 彼らはそう言いながら、私の着替えを盗撮した写真を見せつける。

「もしこれがネットに流出したら大変だよねぇ~」

「特定されて、襲われちゃうかもよぉ~」

 そう言いながら笑う男達。

 ゲス、そんな言葉がぴったりだと思った。

 あぁ、私の初めてはこんな形で奪われてしまうのだと、私は半分あきらめていた。

 女子は体力も力も男子には勝てない。

 しかも大勢の男子相手では勝ち目はない。

 悔しかった。

 こんな奴らに私は体を弄ばれ、好き勝手されてしまうのだと思うと反吐が出る。

 だからだろう、私の瞳から涙が流れるのは。

 悔しい、どうあがいてもきっとこの男達に私は衣服を脱がされ、辱めを受ける。

 なんで私がこんな目に……。

 関係ないと知らんぷりをしていた罰なのだろうか?

「へへへ~可愛い顔してんじゃん」

「さぁ~最初はスカートから脱いじゃおうか~」

 男の一人が私のスカートを脱がせ、あとの二人が私の腕を抑える。

 怖い。

 怖くて声が出せない。

 嫌だ!

 気持ち悪い!

 他人に体を触られるのがここまで不快だとは思わなかった。 

 男の一人が自分のズボンのチャックを下ろし始める。

 あぁ、本当は好きな人に初めてはあげたかった。

 まさか、こんな事で初めて失うなんて思わなかった。

 抵抗しようと腕に力を入れてもそれ以上の力で押さえつけられる。

「大人しくしてな、四人相手にしたら終わりだからよぉ」

「おい、早くしろよ」

「わかってるって」

「や、やめて……」

「あはは、やめてだってよ!」

「やめるわけねぇじゃん!」

 男たちはそう言いながら私の体を触って来る。

 もうだめだ。

 私がそう思った瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。

「あぁ、居たね。しかも真最中、証拠も十分だね」

「なんだテメェ!」

「何開けてんだよ!」

 入って来たのは見慣れない男子生徒だった。

 痩せ型で背は男子の中では普通くらい。

 ニコニコしながら、その男子は教室の中に入ってきながら写真を撮る。

「えっと、お前らだろ? この学校の女子を凌辱しまくってるの? 悪いけど、お前らのやったことは全部償ってもらうから」

「何言ってんだてめぇ?」

「こっちも見られちまったしなぁ……変な事を言えねぇように、痛めつけてやれ!」

「おうよ!」

「一人で勝てると思ってんの?」

 そう言いながら、私を掴んでいた男達は入って来た男子生徒に殴り掛かる。

 しかし、一瞬のうちに男達は床に倒れていた。

「え……」

「な、なにが……」

「お前らさぁ~、随分良い思いしたんだろ? でも被害者の奴らのこと考えたことあんの? 自殺を考えた子もいるんだぜ? まぁ、馬鹿だから考えねぇか……じゃぁ、とりあえずお前ら全員……半殺しな」

 男子生徒がそう言った瞬間、私の目の前では男子五人の喧嘩……いや、圧倒的ないじめが始まった。

 あとから入って来た男子生徒は、男達を次々にボコボコにし立ち上がれなくなるまでにした。

「ば、化け物……」

「な、なんなんだお前……」

 もう立ち上がれなくなった男達を見た後、その男子生徒は上着を脱いで私に羽織らせてこう言った。

「間に合ってよかった。もう大丈夫だ」

「……あ……わ、わたし……うわぁぁぁぁん!!」

 気が付くと私は名も知らない男子生徒にしがみつき泣いていた。

 恐怖から解放された安心と先ほどまでの不安が入り混じった変な気持ちだった。

 そんな私の頭を彼は撫でてこういった。

「もう大丈夫だ」

「そう言えば……名前は?」

 そう私が尋ねると彼は立ち上がり、男達を踏みつけながら私にこういった。

「学校内のこういう馬鹿な奴らに制裁を与える組織『テミス』の構成員だ。覚えなくていいぞ」

「て、テミス?」

「あぁ、そうだ。てか早く服着ろよ」

「あ、うん……」

 私は自分の恰好に気が付き、服を着る。

 テミス?の構成員である彼は男達をロープで縛っていた。

 男達も目をさましていた。

「こいつらどうするの?」

「ん? あぁテミスの支部に連れて行って、罪の償いと更正をさせる」

「刑務所ってこと?」

「あんなお優しい場所と一緒にするな。もっとキツイ地獄だ」

「ひ、ひぃぃぃ!!」

「た、助けて下さい!」

「お、俺たちただ遊びで……」

「遊びで女の体を好き勝手してんじゃねーよ!」

「あがっ!」

 彼はそう言いながら男達の腹を殴った。

「良いか、お前らがやったのは立派な犯罪だ。学生のうちからこれじゃぁ将来どうなるかわからねぇ……だから、うちでもう二度と罪なんて犯したくならないように教育させてもらう……死ぬよりつらい教育をな」

「そ、そんなのいやだぁぁぁ!!」

「お、親が黙ってないぞ!」

「あぁ、心配するな。親には連絡が行くし、お前らのやったことの詳細も伝えられる。自業自得だな」

「そ、そんな……」

「終わった……俺の人生……」

「あぁ? 何言ってんだよてめぇ」

「あがっ!」

「お前らも散々女の大切なものを奪ってきただろうが! 当然の報いだ受け入れろ」

 その後、大人が数人やってきて四人をどこかに連れて行った。

「さて……お前、精神的に大丈夫か? 一応うちの組織ではこれからお前ら被害者のメンタルケアをする予定なんだが?」

「わ、私は大丈夫です。その……寸前で助けてもらいましたから」

「そうか?」

「本当にありがとうございます! 私、何もできなくて……悔しくて……」

「男に比べて女は非力だ、仕方がない。また何かあったらテミスを呼べ」

「はい!」

 男子生徒はそう言って去っていった。

 後日、あの男子生徒の悪行が世間一般に公開された。

 そして同時あの男子生徒が所属している組織「テミス」の噂が流れ始めた。

 学校内の治安を取り締まる謎の組織「テミス」と……。

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