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樹木の肉体美に溺れてみる

気後れするけれど正直に書きます。この話は下の写真に触発されましたと。でも!この写真はただのキッカケです。

しつこく書きます。私にとってはただのキッカケです。じっくり見たい方はどうぞ拡大してお楽しみください

アウディの本社があるインゴルシュタットでバス待ちをする間、この広告が目に飛び込んで来たのです。確かに素通りはしてませんし、横目でお兄さんたちの品定めをしたことについては否定しませんよ。

でもその理由は「汗とか飛び散るだろうし、自分の体を触らせて金を取るようなショーはこのご時世だから中止だろうな。身体を張って頑張ろうとしているのになんてまあお気の毒」という同情の気持ちからです。まかり間違っても「いい体つきじゃないの。見に行こうかしら」なんてこと、神に誓って微塵も考えませんでした。(キッパリ)

それでもあのお兄さんたちの体の写真は確実に私の頭に刺さりました。看板を通り過ぎて公園のような一角に入ったとき、傾斜地に生えていたブナを見て「あら、ブナさん、イケてるじゃない」と、思わずときめいてしまったのです。

両側の枝ぶりと足元がものすごく肉感的。玉三郎に決定!


写真だとその3次元の肉感的な魅力が伝わらない、セクシーさを伝える私の表現力も筆力も足りないのがなんとも口惜しいのですが、それはともかくとして、右に左に伸びた枝が腕のようにムチムチしていて人間のお兄さんよりよっぽど色気がある!

加えてブナの特徴である滑らかな樹皮が、きめの細かい肌の持ち主のようで色気がムンムン出ているじゃありませんか。私はなめるように見続けてその中性的な魅力を存分に楽しませてもらいました。そしてちゃんと名前をつけてあげました。その名は樹木界の玉三郎様。いや待てよ、自らを解き放ったきよしくん(氷川きよし)じゃなくってkiinaでもいいかな。よしっ!満足。

ということでそれを機に調子に乗った私は次々にナイスガイ(死語ですよね?きっと)を発掘することにしたのです。その成果をご披露しましょう。


ねじれるまで体を鍛えた樹木界の三国連太郎

①いたよ、こんなとこに渋いやつが、とザントラッハ川岸でセイヨウナラの巨木を見てニンマリしてしまいました。長年強風にさらされ続けた挙句の果てでしょう。枝も折れて跡形もないけれど下はがっちりと根を張る彼は昔ながらのタフガイ(これも死語でしょうか?)なのです。

雑巾をこれでもかと絞りあげたようなねじれも体をボクサーのごとく極限まで絞って鍛え上げたなれの果てのようでなんともカッコイイ。深く刻まれたしわのような樹皮も渋くて、私的にはこれ、俳優の故三國連太郎さん。

たるみだよ全員集合、高木ブー

②続いての出会いは町中にあるマリア・デ・ヴイクトリア教会前にて。引き締まった体は若さの特権。けれど悲しいかな、人は美しい時だけを過ごすことはできないのです。いつしか肉体は重力に逆らえなくなるけど、たるみもまた人生の味わいってもんよ、いいではないの、と思わせてくれたのがこのプラタナス。


アンチエイジングなんかどこ吹く風の体は好感度はすこぶる高し。人間に例えるなら、たるんでいない姿なんて全く想像できない高木ブーさんというところでしょうか。

腹巻軍団のたたずまいは私的には田村正和

③「秘すれば花」と申されたのは世阿弥先生。大胆にバーンと体を見せるなんてはしたない、チラリと見せるのが男の色気、ダンディズムだぜ、とでも言わんばかりの毛糸の腹巻き軍団をドナウ川横の緑地帯で発見しました!正体は残念ながら分かりませんが、そのミステリアスさもまたよし。プライベートを隠し続けた昭和の名優、故田村正和っぽいではないですか。

樹木界のボーイズグループ、ポプラ組

④ピンだとさえないけれど、グループにしたら抜群に映えるというのは人間だけでなく木でもいるような気がします。ポプラはその高さで圧倒的な存在感の持ち主だけれども、一本だけじゃどうも物足りない。

仲間と一緒にずらりと並ばれるとグッとカッコよさを増すのです。ボーイズグループのようにみんな揃って葉をそよそよとゆらしながらリズムをとる夏の感じも涼しげでいいけれど、冬だって雪が降ろうが嵐が吹こうが、サービス満点で上半身裸になってしなやかな群舞を披露してくれます。ジャニーズというよりはEXILE的な魅力?いやいやK-popでしょうよという声もありますね。

このわびしさに稲川淳二っぽさを感じました

⑤筋肉とかガタイがいいのは暑苦しくっていや、という人もいるかもしれなません。そんな方々のために激写したのは、ふと立ち寄った公園で見かけたブナ。隅っこに追いやられているかのような悲哀感と筋張った感じがフォトジェニックでよろしくないですか。貧相というなかれ、樹木界の稲川淳二氏は風が吹けば体を壊しそうなわびしい感じがチャーミングなのですよ。


貴公子然とした態度は西城秀樹似

⑦マニアックなのをもう一つ。けなげさにグッときちゃうという方にオススメなのは白カバです。写真の木は誰かに樹皮をむかれてしまい痛々しげですが、皮を自力で再生中。その様はアイドルがファンにもみくちゃにされたあげくに服をひきちぎられちゃったかのよう。

でもいくら剝かれようとも文句は言わず、まるでなにもなかったかのように貴公子然とした振る舞いでアイドルはたたずみ続けるのです。こんなクールさは現代のアイドルにはない。ということで、敬意を表して白カバはボディラインがピタピタのステージ衣装もよくお似合いだった故西城秀樹さん。


マツの樹皮の模様はゴージャス系

⑧最後はちょっぴしゴージャス系でいきましょう。ミュンヘン植物園で見つけたとっておきの彼。亀の甲羅を思わせる樹皮の模様をお持ちの主はマツです。背中に彫り物がされているかのようななまめかしさは他の木にはない。泣く子も黙らせる迫力はどうしても任侠ものを想像してしまいます。若き頃の故高倉健さんかしらんと思ったのですが、金のチャラチャラしたネックレスとかまぼこリングも似合いそうということでもうちょい安っぽいVシネマの竹内力か!?(極道主夫の玉木宏でもいいかなあ)


冬は樹木が葉と花という衣を惜しげなく脱ぎ捨て裸を披露してくれる、樹木ウォッチャーにとっては悲鳴をあげたくなるようなうれしい季節です。さまざまな魅力にあふれる樹木のイケメンたちは目で愛でてもよし、触ってもイイ、なんなら抱きついたってOK。近くの公園のちょっとした散歩でも、本格的な野山のハイキングでもいいのです、せっかくの機会ですよ、樹木の肉体美にときめきながら存分に溺れてみませんか。

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