見出し画像

旅の途中で...(「世界はうつくしいと」)

ネットの世界を波乗りしているときに「ガーデナーケーキ」なるものが存在すると知りました。
これは必見ですな、と思ってさらに波に乗ってみたらありましたよ、レシピと写真が。

「え、なにこれ?」

さらに続いて心の中で叫んでました。「てやんでい、こちとら、しがないとはいえ、庭師の端くれだい。そこまで馬鹿にするなら作ってやらい」。(感情全開、いつの間にか江戸っ子になってる自分)
でレシピに忠実に従ってできあがったのがこちらです。↓

上が焼く前、下はやいた後


ね、なにこれ?でしょ。作り方を間違えたんじゃないの?といわれるかもしれません。いいえ(きっぱり)。ほぼ見本と同じです!(再度きっぱり)

私だってその名前からお花っぽくカラフルなのかしらんとか、もしかして野菜が入って ヘルシーなのかも、ガーデナーケーキはさぞかし手が込んでいるに違いないなんてウキウキしていたのですよ。

なのにホルスタイン種の牛模様がついた焼きっぱなしケーキってなんなのさ。

レシピの投稿者やコメントを残した人によると、
1.モグラが畑を掘り起こしたのに似ているから
2.ココア生地を手でこねる時に真っ黒になって土いじりをしたのと同じようだからー
という2説が名前の由来だそうです。
まあ、そういわれてみればこの間みた風景と似ていなくもない。↓

お精がでますね、モグラさん


ええ、ええ手だって黒くなりましたとも。


文句を言いながらもコーヒーをお供に美味しく頂きました。(ちなみにお味は激甘です。。。)

                  ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇

話は変わって、 4月末にある1編の詩に出会いました。

息子が領事館を通じてもらった中3の真新しい国語の教科書の見開きに美しい桜の絵とともに載っていたのが、(ご存じの方もきっとたくさんいらっしゃると思いますが)長田弘さんの「世界はうつくしいと」。

著作権の関係もあるかもしれないので、端折って引用させてもらいます。

世界はうつくしいと
うつくしいものの話をしよう。
いつからだろう、ふと気がつくと、うつくしいということばを、ためらわず
口にすることを、誰もしなくなった。
そうしてわたしたちの会話は貧しくなった。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
風の匂いはうつくしいと。渓谷の石を伝わってゆく流れはうつくしいと。午後の草に落ちている雲の影はうつくしいと。
(中略)
一体ニュースとよばれる日々の破片が、
わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。
あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。
シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。
何ひとつ永遠なんてなく、いつか
すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。

光村図書中3国語  出典「世界はうつくしいと」(長田弘)

初めて読んだ時、乾いた土に雨が降るかのごとく、言葉の一つ一つが心の中にしみこんでいきました。そしてことあるごとに何度も何度も読み返しています。


ドイツは今、俗にいう「美しき5月」のまっただ中。太陽の光がどんどん強まっていくのを感じます。そしてそれに合わせるように春を彩った植物は徐々に夏の草花に舞台を譲ろうとしています。

@ミュンヘン植物園
カーペットをかえるように、花壇はもうすぐ夏の植栽に変わります

ケーキ作りにいそしむ他愛もない日常のありがたさをかみしめながら5月の光と風を感じていると、この詩のように書かずにはいられません。本当に世界はうつくしいと。




いただいたサポートは旅の資金にさせていただきます。よろしくお願いします。😊