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守り続けて一世紀。

 私の地元の駅前に創業百年を超える和菓子屋さんがある。

 名物は色々あるが一番人気は何と言っても大判焼きである。

 物心つく前から馴染みの味で生地はもちろんの事あんこも自家製である。

 子どもの頃に駅前にお使いに行くとお駄賃でこの大判焼きを買い食いをするのが何よりの楽しみだった。

 当時の値段は一個で70円という子供にも買い求めやすかった。

 それから月日が経ち物価の上昇に伴い少しづつ値上げをしてゆき今では百円を少し超える金額で落ち着いている。

 舌に美味しかった味が記憶されているので今でもちょっとした手土産に持っていくことが多い。

 大体十個くらい買うことにしているが薄手の包装紙越しに伝わる温もりがこの時期には特にうれしい。

 ところで冒頭から大判焼きと呼んでいるがこのお菓子の呼び方はさまざまである。

 つい最近行われたとあるアンケートでは全国からデータを集めた結果、呼称の一位になったのは大判焼きだったそうである。
 
 二位は僅差で今川焼だったとのことだ。

 それ以降の順位は回転焼き、おやきと続いて第五位が御座候となるそうだ。

 他にも少数派であるが全国各地にはどら焼き、味自慢、自慢焼きという呼ばれ方をしているところもある。

 なんにせよほんのり甘い生地にあんこをたっぷり挟んで焼くこの食べ物はお祭りでもよく見かける。

 お祭りの大判焼きは生地の味がいまいちであんこも水っぽくて駅前の和菓子屋に軍配が上がる。

 最近ご無沙汰なので近いうちにお店を訪ねてみようかと思う。

 先代の店主も大柄だったがそれに比べてさらに恰幅のいい四代目が快く迎えてくれるだろう。

 そんなことを考えながら昨日も買い物に出かけた。

 昨日は日曜だったのでお店はそれなりに混んでいた。

 さぁて何を食べようかと呻吟して親子丼というアイデアが浮かんだ。

 土曜日に牛丼を作った時に余ったつゆがあったのでそれを再利用する。

 そうと決まれば話は早い。

 精肉コーナーで鶏むね肉をかごに入れて、青果コーナーで玉ねぎとレタスを買い求めた。

 それからお酒を買ってこまごましたものも買い足した。
 
 セルフレジが大行列だったので普通のレジにおとなしく並んで待った。

 それなりに待ってから支払いを済ませて帰りの途についた。

 いつの間にか冷たい雨が降っておりブルッと身震いしてしまった。

 帰宅してからはまだまだ油断はできないと念入りな手洗いとうがい。

 それから晩御飯の支度。

 まずは玉ねぎを薄切りにする。

 それから鶏肉を一口大に切り分ける。

 フライパンに牛丼の残りのつゆを流しいれて味見をする。

 親子丼は少し煮詰めるので薄味にしておかないと都合が悪い。

 昨日のつゆはやや濃いめだったので日本酒をたっぷり注いで調整した。

 フライパンに玉ねぎを鶏肉を入れてから火を点ける。

 沸騰するまでは強火で放置。

 その間に副菜を作る。
 
 レタスを買ってきたので包丁で半分に切り落とす。

 半玉はラップをかけて野菜室にしまっておく。

 芯を落とした残りのレタスは手で大胆に千切る。

 それを水にさらしておく。

 その間に冷凍していたシラス干しをごま油でカリカリに炒める。

 レタスの水をしっかり切ってお皿に盛りつけたらシラス干しを乗せて手で海苔を揉みながら散らす。

 仕上げは食べる直前にするのでここまでやったら親子丼作成に移る。

 アクが浮いているので丁寧に取り除いて火を弱火にして煮込んでいく。

 玉ねぎがあめ色になったら溶き卵を三個加えて火を止めて予熱で放置。

 ご飯をチンして丼によそったらそこに親子のアタマを乗せてつゆをかけまわしたら牛丼からの親子丼の完成。

 副菜のレタスサラダは仕上げにフライパンでチンチンに熱したごま油をジャッとかけて味付けに岩塩をゴリゴリと振りかけたら完成。

 汁物は手軽にインスタントtの豆腐とわかめの味噌汁。

 さあてアツアツをいただきましょうかねと言いつつ居間にご飯を運ぶ。

 昨日のお酒はまずはレモンサワーからペショッとプルタブを起こしてグラスに注ぐ。

 ではとグラスを傾けてキュウッとサワーを飲み干す。

 ううん、さっぱりしてると思いながらアルコール度数は9パーセントだからゆったりペースで飲まなきゃと思う。
 
 ではつまみを食べようとレタスサラダに箸を伸ばす、モシャッと食べるレタスのシャキッとした歯ごたえと海苔の風味がやってくる。

 それからよく炒ったシラス干しのカリカリの歯ごたえが楽しめる。

 味付けはシンプルに塩とごま油にしたのも正解だった。

 レモンサワーをチュッとのんでからメインの親子丼に箸を伸ばす。
 
 鶏肉をつまんでハクリと食べるとモキュッとした弾力が嬉しい。

 もぐもぐと食べながら次は玉ねぎとご飯を一緒に食べる。

 すると玉ねぎの甘さをほのかに感じることが出来てコロナにかかる前の味覚が戻ってきているような気がしておっこれはと思った。

 私好みのつゆだくのご飯は牛丼由来の旨味が詰まっており控えめに言ってもかなり美味しかった。

 お酒を芋焼酎のお湯割りに切り替えて親子丼をつまみにチビチビと飲んだ。

 ご飯を大盛にしたので親子丼一杯でお腹いっぱいになった。

 膨れたお腹をさすりながらひんやりした台所でさっと洗い物を済ませた。

 食後のデザートにミカンを食べてみたらより一層味覚の層が立ち直りつつあるのが分かった。

 このまま快方に向かえばいいなと思った夜だった。

 さぁて今晩は何を食べようかな。

 そんなことを悩めることを幸せだと思う。

 全国的に寒波が襲来するそうなのでご用心くださいませ。

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