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映画から生き方を学ぶ『アデル、ブルーは熱い色』

これは僕の好きな映画の一つでもある。

一言でこの映画を言い表すと
「好きになった人がたまたま同性であった」だ。

その人の人間としての魅力に惚れた主人公アデル。
その部分を強調するためなのか、実際にアデルが異性を好きになったりするシーンもある。

アデルは一人一人を性別を問わずに一人の人間として向き合って合っている。
もっと言えば人間だけでは無く、目の前に現れる全てのコト一つ一つに対してアデルは真っ直ぐだ。
純粋だ。
素直だ。
混じり気の無い心を持っている。


アデルは美しかった。
だがここで言って起きたいのが容姿では無く一人の人間として美しかった。

嫌いな物は嫌いと言い、食べたいモノは女性だからと言って気にせずにおかわりをする。
くちゃくちゃと食べる。
アデルにとってそれが取り繕りが無く自然と美味しい食べ方なのだろう。
髪型を乱雑に結ぶ。
鼻をずるりんとすする。
思わせぶりな態度に対して好意を抱いてしまう。

別に ”下品=美しい” と言いたい訳では無い。


アデルを見ていると強く"ありのまま"を感じる。
世間体や体裁などに負けずに自分の気持ちに真っ直ぐと生きている。

だがアデルは底無しに純粋だ。
世間体や体裁なども気にはしている。
だけど最後に辿り着くのはありのまま本能の赴く方向へ進んだところにいる。

これがある種の本来の人間らしさでは無いかとすら思った。
アデルが決して誰かから憧れられる対象として映画では描かれていないが、映画を鑑賞した人なら
アデルのようなありのままの人間になれたら
と感じる人も多いのではないだろうかと思う。


そしてこの映画で僕が一番残った感覚が"未体験の共感"である。

実際に自分は体験したことが無いが、映画を鑑賞していくにつれて
「あぁ〜こうなったらこうなってしまうよね」
「そうだよね、そうなるとこうなるよね」
と節々にその感覚が自分の中に宿り、次第に映画に引き込まれていく。


僕は一歩間違えたら退屈に感じそうな映画が好きだ。
だけどそれが退屈と感じてしまう映画ならそれはハズレと思っている。


でもこの映画はゆっくりと時が流れて、
その日常の中に「アデルの人生すら変わってしまうんじゃないか」という不安や、その反面の自分の気持ちとの強い葛藤が内包されていて、退屈とは程遠い作品である。

またこの映画は予告が最高である。
映画をまだ観ていない人はぜひ先に予告を観て欲しい。


絵描きのエマはアデルの絵を描くシーン

アデルが「出会った人を絵に?」と尋ねる。
そしてエマが「めったに、でも今は描きたい」と返答する。
このシーンは絵描きである僕からするとすごく痺れるやり取りだ。


またアデルとエマが別れてしばらく経ってから、エマの個展に行く。
久しぶりの再会だ。
その時にはたぶんアデルはまだエマのことを忘れきれていない。
きっと別れたことを後悔している。

アデルは個展ということで正装(ドレス)で来場をした。
その時のドレスの色がアデルの髪の色のブルーだった。
こう言った制作者のさり気ない表現なんかもすごく心にくるモノがあった。


まだまだこの作品では言いたいことがあるが、どうしても長くなってしまうのでこの辺で終わろうと思うが最後にもう一つ。

アデルとエマが出逢った時に
エマ「1人で何してるの?」
アデル「偶然ここに」
エマ「人生に偶然はない」
このシーンだ。

有難いご縁だらけで今こうして画家として生きる身として、このシーンはたまらなかった。

"運命の人"

これは恋人を対象によく使われる言葉であるが、決してそれは恋人だけでは無いと思う。

恋人 家族 友達 仲間 ライバル 嫌いな人 苦手な人 知り合い 顔見知り 他人
全ての人間関係にはその運命があるのだと思う。


全ての事柄が運命であるのだと。
良いコト、もちろん悪いコトも。

だから自分はその日々、瞬間瞬間に起きるコトに対して真摯に向き合いたいと思う。
心が擦り減る程にぶつかっていきたい。


というより体裁や世間体を気にせずにアデルように本能の赴くままに生きたいと思う。

でもこれが中々実行出来ないのが人間というモノ。

でも大丈夫な気がする。
僕には運命の恋人、家族、友達、仲間、ライバル、嫌いな人、苦手な人、知り合い、顔見知り、他人がいる。

自分もアデルのように真っ直ぐに美しく生きたい。



PS.この映画は同性愛の話でもあるのだが、僕が誰かにこの映画を伝えるとしたら人間と人間の恋愛の物語として伝えたいと思う。
同性愛なのか異性愛なのかは決めたいとは思わなかった。
言ってしまえばシンプルにラブロンマスだ。
邦画『窮鼠はチーズの夢を見る』もそんな感覚がした。

#映画感想文


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