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神は細部に宿る

誤字脱字が気になる。
言葉の不正確な使用が気になる。
不親切な説明が気になる。

お客様に送るメールや説明文にはとにかくこだわっている。
わかりやすさと丁寧さを両立させながら。

一言一句気にしていたら日が暮れてしまわないか、と思われそうだが、まずは時間をかけてでも正確性を追求すべき、というのが士業の品質管理として重要と思っている。曖昧な定義づけや言葉足らずなばかりにやりとりが何ターンも行われる方が時間がかかる。

前職の会計事務所は所長がとにかく丁寧で完璧主義で顧客からの信頼が厚かったため、同じレベルの品質になるようとことん真似をした。メールの文の構成、日本語の選択、資料の作り方、あらゆるアウトプットの細部まで真似をした。自分の働き方やポリシーが確立されていたら窮屈で逃げ出したくなるかもしれないが、指導の一つ一つに理不尽さを感じたことはないし、むしろ自分もその理念や美意識に共鳴できたため、素直に聞き入れていた。

税務は法律に基づいて処理が決まるため、「こうあってほしいという希望を強く持ちながら自分に都合のいい解説を読む」「こうに決まってるから検討しなくてもいいか」などの心構えでは事故を起こす。税理士が損害賠償請求をされた案件又はなりそうになった失敗事例のほとんどが、税理士側に落ち度が全くなかったとは主張できないものだろう。

よく知らない論点が出てきたら、
・検索であたりをつける(タックスアンサー、著名人の解説等)
・税法の条文の原文にあたる。
・原文をWordにコピペし、括弧書きを黒塗りしたり色分けしたりして、読み解く。特に例外規定や除外規定なども正確に網羅的に読む。
・クライアントの個別具体的な状況に当てはめる。
・検討結果について、必ず自分以外の第三者の目を通す(セルフチェックの上でのダブルチェック)。
という基本動作は必ず行うようにしている。この細かさを疎かにすると、ヒヤリハットが起こる。

それでも検討が漏れて失敗することもある。
そのときはなぜそうなってしまったかという事実確認/検証と、再発防止策の策定を行い、次につなげる。「失敗は宝」と名付けたスプレッドシートに小さな失敗を書き連ね、大きな失敗を防ぐようにしている。全て前職の会計事務所の基本動作のパクリだ。

専門性以外の面でも、文章に不親切さ・ぶっきらぼうさが出ないようにも心掛ける。最近はチャットツールも多用しているが、ある程度の速報性が求められるとき以外には言葉遣いにも気を配っている。やはりそんな仕事の進め方では日が暮れると思われるかもしれない。
それでもこのきめの細かさに安心すると思ってくれる人たちもいるのだ。

会社経営にとって安心感のある伴走者であり複雑な事象の翻訳家でもあり続ければ、税理士がAIに変わられることなどない。

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