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先進的?オールジェンダートイレ
いつの間にか新設するトイレを「全てオールジェンダー(誰でも)トイレ」にしたり、既存の「男性用トイレと女性用トイレ」から「男性用とオールジェンダー(誰でも)トイレ」に変更することが、あたかもマイノリティに配慮されててナウくてアップデートされてて先進的でインクルーシブで素晴らしいみたいな雰囲気になっているので、今まで議論され尽くしてきたことを自分なりにまとめてみた。
渋谷区幡ヶ谷の新しい公衆トイレ
幡ヶ谷で新しくできたトイレです。本日、近くに所用があって写真をついでに。誰でもトイレが2つ、と男性用トイレ。渋谷区としては女性トイレを無くす方向性なのですが、私はやはり女性用トイレは残すべきだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか。 pic.twitter.com/ndkf3SH0fG
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 6, 2023
「渋谷区としては女性トイレをなくす方向性」!?
それは困る。と思ってたら
区長会派の議員から、女性用トイレを区が無くすなんて言っていない、とご意見がありました。
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 7, 2023
確かに渋谷区が言っているのは男女共用化です。
そして出来上がったものを見ると、女性トイレがなくなっています。
トイレ、共用推進 性的少数者に配慮 方針発表 | 毎日新聞 https://t.co/QErfaNwJmQ
渋谷区が言っていることは男女共用化ですが、やっていることは女性トイレをなくしているので、そういう方向性だと申し上げました。私自身は今回のトイレのように充分な敷地があるなら、原則として男性用、女性用、誰でもトイレの3つを設置するべきだと思います。
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 7, 2023
「今回のトイレのように充分な敷地があるなら、原則として男性用、女性用、誰でもトイレの3つを設置するべきだ」!その通りだと思う。
ところが渋谷区はトイレの「男女共用化」を推進しているらしい。
しかも男女共用化にする理由が「性的少数者に配慮」?
性的少数者のうち、性指向に関するLGBは現状のセックス(身体の性)で区分けされているトイレを使用することに問題を感じていないだろうから、自認する性と身体の性が異なるT(トランスジェンダー)に対する配慮ということなのだろう。
そして幡ヶ谷に新しくできた公衆トイレは「誰でもトイレ+女性用トイレ」ではなく、「男性用トイレ+誰でもトイレ」になり、結果として女性用トイレがなくなってしまっている。
限られたスペースの中で共用トイレを増やすには男女どちらのトイレを減らすわけですが、公園のトイレの利用者が男性が圧倒的に多いという点から、
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) March 7, 2023
スペシャルニーズのない男性には男性用トイレを、特別なニーズがあり、バリアフリートイレが必要な方には共用トイレを、ということなのかなと。(要確認)
渋谷区議の橋本ゆき氏は(要確認)といいつつも男女どちらかのトイレを減らす理由として
>公園のトイレの利用者が男性が圧倒的に多いという点から
と推測しているが、「人口の半分を占めるはずの女性がなぜ公園のトイレを利用しないか」という視点が欠けているように思える。
現状すでに女性や女児たちは公園のトイレが汚くて暗くて安心できていないから利用していないのに、それを根拠に「女性トイレがいらない」と判断されたら困る。
女性や女児たちはますます外出先のトイレ探しに難儀してしまうではないか。
(なお橋本ゆき氏の上記のツイートは削除され、この話題に関してその後以下のようにツイートしなおしていた)
私の「原因の推測」が事実として広まると良くないと思ったので一部消しました🥲
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) March 7, 2023
女性用トイレをなくすべきだとわたしは言っておりません。
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) March 7, 2023
私も普通にトイレ行きますし…
スペシャルニーズにも対応できるトイレを作った結果、女性用が共用トイレ吸収されることになったパターンもありますが、女性用が整備後も残っているパターンもあります。 https://t.co/WAaEDXCKXg
なぜ女性用ではなく男性用が残ることになったのかは、今までの利用者数なのかなと推測してきますが、その理屈に賛成しているわけではなく、議論の余地ありです。
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) March 7, 2023
渋谷区公式サイトから「渋谷区立幡ヶ谷公衆便所について」という案内が出ていたので読んでみたところ、
「渋谷区では今後のトイレ整備について女性トイレをなくす方向性など全くございません」といいつつ、施設配置図をみるとやはり女性トイレが存在せず、女性が使えるのは共用トイレのみになっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1678254024865-LRgTIoAY7t.png?width=800)
どんな計画段階を経たのであれ、結果として女性トイレがなくなっているのならば「女性トイレ」をなくそうとしているのと同じではないのか?
渋谷区は「女性トイレをなくす方向性など全くございません」といいつつも結果的には女性トイレがなくなっているので、「募ってはいるけど募集はしてない」的な構文ですか……?? https://t.co/reuCnOwSbX
— Gwen🪬🔥 (@000Gwen) March 9, 2023
もしかして渋谷区は「女性トイレ」という言葉を「女性(専用)トイレ」という意味ではなく「女性(が使える洋式便器が設置してある男女共用の)トイレ」という意味で使っている可能性があるとか?
いやいやまさかそんな言葉遊びじゃあるまいし……
これから全部なくしていく予定ではないという話だと思います。
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) March 9, 2023
女性専用のトイレが必要という話と今のトイレにどう防犯面での措置を取るか、今後の整備方針を防犯面を含んだものに変えて欲しいとコミュニケーションとってます。
ひとつずつお返事できませんが、
不安のご意見全て目を通しています。 https://t.co/pJ0p763Tcf
言葉尻を捕らえるようでアレだが「これから全部なくしていく予定ではない」は部分否定なので、「これから一部では女性トイレがなくなる予定/公衆トイレを設計するうえで女性(専用)トイレは必須条件ではない」と受け取られてしまうのではないだろうか。
Twitterでは「なぜ女性(専用)トイレ」がないの!?という反応が多くみられる。わたしも全く同じように思う。
橋本ゆき氏には女性たちの意見を届けるよう頑張ってもらいたい。
また、女性記者が幡ヶ谷の公衆トイレを取材したことがyahoo記事になっていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1678420558514-sBQMjmlNbP.png?width=800)
女性トイレがないのも問題だけど、共用トイレで密閉型のサニタリーボックスがない!?!?それは一番困る。
上部半開きの銀色のボックスだと中身が見えてしまいそうで使用済み生理用品を捨てたくないし、わざわざ持ち帰れってこと?
これでは公衆トイレなのに女性が使うことを想定されてないといわれても仕方ないだろう。
「THE TOKYO TOILET」プロジェクト
話題になった渋谷区幡ヶ谷の公衆トイレは、シブヤ経済新聞の記事によると
日本財団(港区)が展開する、建築家ら16人が参画し区内の公衆トイレ17カ所をリデザインする「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環として作られたものだということがわかった。
そこでTHE TOKYO TOILETプロジェクトのHPをみてみたら、確かにそうそうたるメンバーの建築家の名前がずらっと並んでいて、多様なデザインのトイレが紹介されていた。
自分でも確認してみたところ、他にも「男子トイレ+誰でもトイレ」という組み合わせ(例 佐藤カズー氏による「Hi Toilet」)や「全てがオールジェンダートイレ」(例 佐藤可士和氏による「WHITE」、坂倉竹之助氏による「ANDON TOILET」、後智仁氏による「Monumentum」、隈研吾氏による「森のコミチ」)となっていて、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトで作られたなかには女性(専用)トイレが存在しない設計のトイレがいくつかあった。
まとめると安全なトイレもあるが以下には女性専用トイレがない
— tansansui (@tansans92112495) March 9, 2023
♿️広尾東公園トイレ(後智仁)
🚹♿️👶鍋島松濤公園トイレ(隈研吾)
♿️西原一丁目公園トイレ(坂倉竹之助)
♿️恵比寿駅西口公衆トイレ(佐藤可士和)
🚹♿️七号通り公園トイレ(佐藤カズー)
🚹♿️幡ヶ谷公衆トイレ(マイルス・ペニントン) https://t.co/ruIynqPIFC
今日も所用のついでに鍋島松濤公園に。こちらも女性専用トイレはありません。区はこの公園で女性専用トイレが設置できる場所があっても設置しませんでした。私は区長が男女共用を推進する方針にした結果女性専用トイレがなくなったと思います。設置できるところを無くしたのはおかしいと思いませんか? https://t.co/bsYGnbaAcg pic.twitter.com/r5tbDyuAZS
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 9, 2023
えびす社教館祭りのあと恵比寿駅西口トイレへ。トイレであること自体が、また入口が分かりづらいとのご意見。まさに贅沢なスペースやデザイン性に偏重しているトイレです。女性専用トイレはありません。出来たものに対してどのように対応できるのか。委員会の中で橋本区議とともに議論していきます。 https://t.co/CcjhRpSV8n pic.twitter.com/xejflhMpiL
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 11, 2023
幡ヶ谷七号通り公園のトイレ奇抜な球形デザインで入口が奥にありますが防犯カメラはついています。音声認識を取り入れているそうですが、普通に赤外線センサーを組み合わせればよかったのでは?車輪の再発明そのもの。2年間議論して作ったそうですが。このトイレも評価する人はあまり聞きません。 pic.twitter.com/YBrOL96JMu
— すだケン@渋谷区議会議員 (@sudaken_shibuya) March 12, 2023
ちなみに女性トイレが設けられていたのはNIGO氏デザインによる「THE HOUSE」、伊東豊雄氏による「Three Mushrooms」、安藤忠雄氏による「あまやどり」、田村菜穂氏による「TRIANGLE」、片山正通氏によるトイレ、槇文彦氏による「タコ公園のイカトイレ」、坂 茂氏による「ザ トウメイ トウキョウ トイレット」だった。
(※坂茂氏デザインのトイレは女性用が設けられているものの、鍵をしめると不透明になるガラスで外壁が作られており、2022年12月に鍵をしめても中が丸見えになるというトラブルがあったため、別の問題があると思う。
yahoo記事「渋谷の“透明”公衆トイレが故障で丸見えに 緊急事態も現場は利用継続「早く直して」の魚拓 )
このように同じTHE TOKYO TOILETプロジェクトにおいても場合によっては女性トイレが設けられているので、「女性(専用)トイレを設ける」というのはおそらく必須条件ではないのだろう。
委員会で #女性トイレ の増設をずっと求めてきたが逆行して共用トイレになっていった。2018年 #長谷部区長 が男女共用を渋谷スタンダードにと言う方針を発表し女性専用トイレを減らしてきた。何回も女性専用トイレが必要だと言ってきたのに。#渋谷区#トイレ#渋谷区長 https://t.co/MgZdfI33hd
— 吉田かよこ 渋谷区長候補予定者 (@kayoko19620927) March 8, 2023
2018年 #長谷部区長 が男女共用を渋谷スタンダードにと言う方針を発表し女性専用トイレを減らしてきた。何回も女性専用トイレが必要だと言ってきたのに。
渋谷区の議事録見てみた
— ホシノ (@HYpF895Kbo0ZBtW) March 12, 2023
吉田氏は何度も女性トイレが必要と発言してくれている
(…立憲推薦なのか)
あと、自民の木村氏も現地を視察して意見してる https://t.co/wpPCUW6iTW pic.twitter.com/l4oM9d8FPC
しぶや区ニュース 令和5年1月1日号 PDF をみてみると、表紙には左上に「2023年、多様性社会を新しい公共トイレから」と書かれており、渋谷区長の長谷部健氏と株式会社ファーストリテイリング 取締役・THE TOKYO TOILETプロジェクト発起人・資金提供者の柳井康治氏が笑顔で並んで写っている。(背景に写っているのはTHE TOKYO TOILETプロジェクトの安藤忠雄氏による神宮通公園トイレで、女性専用トイレが設けられているタイプだ)
![](https://assets.st-note.com/img/1678689942790-CtI6FrmGyI.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1678692324916-mm2uR9v67t.png)
渋谷スタンダードという方針により、女性専用トイレを減らして作られた新しい男女共用トイレは果たして社会の多様性を向上させるのだろうか?
渋谷区トイレ環境整備基本方針
渋谷区のホームページでは「渋谷区トイレ環境整備基本方針」(PDF)が公開されている。
確かに女性だけが無視されてる。ビックリ。 https://t.co/ATaAaK8Tdl
— ぽんたcafe🇺🇸 (@ekodayuki) March 10, 2023
最初の「はじめに」から女性が無視されているし、
![](https://assets.st-note.com/img/1678515298617-GZzxcmeXZF.png)
「トイレの使用に不便を感じる人の一例」でも「女性」はなかった。
![](https://assets.st-note.com/img/1678515472663-EIvx93kNWX.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1678418260891-vpMg4xNgni.png?width=800)
アイデンティティの侵害と感じる人がいる」
![](https://assets.st-note.com/img/1678418355768-MpGlhZuBCx.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1678418295411-mEtmIjibQq.png?width=800)
ショートヘアの⼥性がトイレで警備員を呼ばれた、といったケースからも分かるように、トイレの利⽤は「⾒た目」で判断される部分がとても大きく、性的マイノリティに限った問題ではありません。
中でも、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別とは一致しないアイデンティティを自認する人)等の、トイレ利⽤に困難を感じている一部の性的マイノリティが安⼼して利⽤したいトイレを使うためには、社会全体における相互理解の醸成が欠かせません。
という記述には疑問を持った。
トイレは「身体の性別」で分かれて使用するというのが社会通念(暗黙の了解)になっていて、別に「見た目」で判断しているわけではないと思うのだが、いつの間にか「見た目」で判断していることになったんだろう。
警備員を呼ばれてしまったショートヘアの女性は気の毒だ。しかし、それだけ女性トイレに侵入する男性不審者が後を絶たないということなので、どうか警戒する女性のことを悪く思わないでほしいと願うばかりだ。
「渋谷区トイレ環境整備」を通して読んだところ、バリアフリーや障害者・トランスジェンダーへの配慮については記載があったが、防犯の観点での記述が全く見当たらなかったことにわたしはとても驚いた。
他の区でも女性専用トイレがなくなっている?
話題になった渋谷区のトイレを機に他の区の区議も公衆トイレの女性専用トイレの有無について発信を始めているので注目している。
荒川区立の屋外公衆トイレ82ケ所のうち、53ケ所が女子専用トイレ無し!
— 荒川区議 小坂英二 (@kosakaeiji) March 8, 2023
写真の荒川公園の例のように「誰でもトイレ」に女子トイレの機能を兼ねている事例と、とても古い男女兼用トイレの合計で53ケ所です。
女性の安全安心の為には専用トイレの確保は必須とすべきと提起。委員会でも質疑予定。 pic.twitter.com/LUruOgk9yW
女子トイレ専用設置の必要性について、昨日の委員会で。バリアフリートイレに女子トイレ機能を内包させると、男女の導線が重なることで待ち伏せなどの性犯罪が容易になり、発見も遅れること、変質者による廃棄物荒らし、障害者や乳幼児連れと利用時間が重なることによる不都合、本能的不安感など指摘。
— 荒川区議 小坂英二 (@kosakaeiji) March 10, 2023
ではこれから「トイレを設置するにあたって女性トイレが必ず必要な理由」と「性的少数者(トランスジェンダー)に配慮しての共用推進の是非」をあわせて考察していきたい。
身体構造の違い
キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』の「第2章 ジェンダーニュートラルな小便器」では、この女性トイレにまつわる話題に関して言及されているので抜粋したい。
・女性のトイレでの所要時間は男性の2.3倍
・高齢者や身体障害者に関してはトイレの所要時間はさらに長くなるが女性の場合は特に長い
・女性は高齢者や障害者に同伴するだけでなく、子連れの場合も多い
・出産適齢期の女性のうち、つねに20〜25%は生理中でありタンポンやナプキンを替える必要がある
・妊娠すると膀胱容量が著しく減少する
・尿路感染症を起こすと頻繁にトイレに行く必要があるが、女性は男性の8倍もかかりやすい
・男性用トイレには小便器も個室もあるため、同時に用を足すことのできる人数を1平方フィートあたりで比較した場合、男性トイレのほうが女性トイレよりも数字はずっと大きくなる→床面積を等分にしたとしても平等にはならない
このように、女性と男性では身体の構造も異なり、女性のほうが男性よりもトイレを使う時間が多いし、床面積を等分するだけでなくて本体ならば女性用のほうを増やさなければならないところを、なぜか「全てオールジェンダートイレ」もしくは「男性用+オールジェンダートイレ」という組み合わせで設計されており、「女性用」がなくなってしまっている。
【前提】「トランス」の定義
以降では「トイレを男女共用化して性的少数者に配慮する」ことに関して、「トランス女性」の女子トイレ利用についても触れる。
そのためには前提としてまずはトランス女性の定義を共有していないと、読む人によって意味が大幅に違ってしまうので、まずここにわたしの認識しているトランス女性の定義を書いておく。
①トランス女性は「出生時にわりあてられた性別が男性で、女性の性自認をもつ人」のことで、GID(性同一性障害)だけでなく、身体違和がなくて性別適合手術を望まない性自認女性(の身体男性)や、性指向が女性である場合もある
②トランス女性はトランスジェンダーに含まれる
③国連の定義、アンブレラタームによると「トランスジェンダー」にオートガイネフィリアとトランスヴェスタイト(異性装)が含まれる
いま普及しているトイレがすでにオールジェンダーである
一般的に、公共の場におけるトイレは身体の性(セックス)で分かれていることが社会通念(暗黙のルール)となっている。
セックスとジェンダーの違い
セックス:生物学的な性別
ジェンダー:社会的・文化的に形成された性別
つまり現状で公共の場にあるトイレはジェンダーに関係なくセックスで区別されており、すでにオールジェンダートイレになっているのだ。
それゆえ、インクルーシブとされている身体の性を区別しない誰でもトイレは「オールジェンダートイレ」ではなく、正しく言い換えれば「ユニセックストイレ」なのであって、それは昭和の共同便所を現代風の横文字で言い換えただけに過ぎない。
洋服だってユニセックスで着れるんだからトイレだってユニセックスでいいと思う人もいるのかもしれない。
だが、上記したように身体構造やトイレにおける行動が異なるため、男性と女性を分けて配慮する必要がある。
防犯による区分けの必要
男性の異常行動
わたしは今まで数々の「性欲に取り憑かれた男性の異常行動」に遭遇してきて、自分の身を守るために「もし性加害者だったらどう振る舞うだろう」という事前の予測が無意識のうちに習慣となってしまった。
わたしが遭遇した「性欲に取り憑かれた男性の異常行動」の例
— Gwen🪬🔥 (@000Gwen) February 18, 2023
・電車の中で腕を組んで寝ているフリをしながら手を伸ばして胸を触ってくる
・都心ターミナル駅という衆人感情のなかで堂々と床に這いつくばって女子学生のスカートの中を覗き込む
・すれ違いざまにわざとぶつかってきて胸や股間を触る
女性トイレでは直接男性から危害を加えられるほかにも、盗撮されたり、使用済み生理用品を盗まれたりして、それが性的コンテンツとして販売されたり、女性に対して使用済み生理用品の買い取りを持ちかける男性までいる。
渋谷区の共用トイレの件だけど私は女子トイレが共用に変わるの大反対。
— みっつ (@su_7030) March 9, 2023
以前コンビニの共用トイレでナプキンを交換した時にサニタリーボックスに捨ててったはずの物が盗まれてた事があったりスマホで盗撮されてたりした事があってから共用トイレは絶対に使わなくなった。
実話です。
— すべての性犯罪者に極刑を (@NfdWFPItUhGzE4S) March 2, 2023
男「今生理中ですか?」
女『(?)はい?』
男「良かったらナプキンください」
女『(あぁ急に生理きちゃった彼女のお使いか?)コンビニで買えますよ!』
男「使用済みのでいいんですよ」
女『!?』
男「なんなら買い取りますよ!いくらですか?どっかのトイレ行きましょ!」
しかしながら男性はこういう異常行動をしている男性に出会う機会が女性よりもずっと少ない。
そしてトイレを設計したり決定権を握っている男性たちはどうも「性欲に取り憑かれた男性の異常行動」を見くびっているように思えるのだ。
ブザーやサイレンで防犯面は解決するのか
2022年の7月末ごろに中国のオールジェンダートイレ(男女共用トイレ)で女性が暴行される動画が話題になった。
(ツイートにある動画は女性が暴力を振るわれているため閲覧注意⚠)
個室型・オールジェンダートイレ(男女共同便所)事件。 https://t.co/viAvvjXDvH pic.twitter.com/j5qtp4i2Kl
— Moja Mojappa🪬Against 包括的性教育❄️ (@MojaMojappa) February 18, 2023
被害者の女性は一度は脱出したものの、周りに何人も男性たちがいるなかで、加害者に髪をつかまれて再び個室に連れ込まれてしまっている。
周りに人が多くいる状況ですらこんなありさまだ。これが例えば周囲にひとけのない時間帯や治安の悪い場所だったらどうだろう。
ある男性がオールジェンダートイレの防犯対策についてこう提案していた。
(オールジェンダートイレに)連れ込まれたと同時にサイレンを外部に鳴らし、ドアの強制オープンはできると思います。それでもだめだという方もいらっしゃるとは思いますが。
ブザーやサイレンをならしたところで、警察や警備員が駆け付けるまでにはタイムラグがあるし、引きずり込まれるという体験自体がすでに被害だ。
「(オールジェンダートイレに)連れ込まれたと同時にサイレンを外部に鳴らし、ドアの強制オープン」が防犯対策になると思っている時点で、男性と女性とでは見えている景色が違うのだと思わざるを得ない。
たとえドアが強制オープンで開いたとしても、個室に押し込まれる時点で退路が塞がれてしまっているので、被害者が解放されるのは加害者が立ち去った後だろうに。
防犯に対する想像力のなさは文字通り利用者の命にかかわるので「致命的」である。
女性や女児たちはそもそもそんな怖い思いをしたくないのだ。
トイレの設計のコンペ。「何があっても安心✨防犯ブザーつけます」って提案者さんチーム全員男性に、あー何かあっても安心✨じゃないんですね、何もないようにして欲しいんです。で環境犯罪学、犯罪機会論の見地から他にご提案は?ってお尋ねした時のポカーン顔ね。当事者不在って本当に怖いと思ったな
— 山田あすか (@yamada__asuka) November 15, 2022
犯罪機会論の観点
犯罪機会論は、医学の世界における「治療と予防」のように、犯罪をどのように「予防」できるのだろうか、という考えからうまれた。
わたしは小宮信夫氏の『犯罪は「この場所」で起こる』を読んでみた。
犯罪原因論は、(中略)、犯罪者の犯行原因を除去する「処遇」を中心に置いている。一方、犯罪機会論は、犯罪の機会を与えないことによって犯罪被害を防止する「予防」を目的としている。
この本でまさしく公衆トイレに言及している部分があるので引用する。
公衆トイレは、犯罪の温床になりやすいので、公園に設置する場合には、周囲からの見通しが最もよい場所に配置し、照度の高い電灯を取り付ける必要がある。
また、女子用入口を男子用入口から離して設置し、女子用トイレの領域性を高めることが望まれる。さらに、入口をドアでなく固定した衝立にして、トイレ内部の監視性を高める必要もある。
※領域性:犯罪者にとって、物理的・心理的に「入りにくい」ということ。
※監視性:周囲から犯罪者が、物理的・心理的に「見えやすい」ということ。
話題になった渋谷区幡ヶ谷の公衆トイレは、わたしは「設置されたオープンスペース前にもし男性が一人で座っていたら、品定めして機会をうかがっている可能性もあるので怖くて使用できない。夜間、男性たちのたまり場になっていたら怖くてトイレを使用するどころか、そばを通ることも避けるだろう」と思った。
実際にどう犯罪に使われるか具体的に危惧を抱いている方たちもいた。
え、なにこれ駐車場付きなんですか?🙄
— ベルりんは爪で静電気をガードすることを広めたい (@belzedaro) March 7, 2023
そこにワゴン車とか止めて女性が通りかかったら車内に引きずり込んでそのまま発車、とかできるって考えなかったんです…?
そのスペースがあれば普通に男女別プラス誰でもトイレで設置できたでしょうよ…なんでそうなる…🙄 https://t.co/PjkaR8nVh0
このオープンスペースに輩が屯してたら男性でも入れないよね。個室は三角形に設計されてるから写真のような角度で入ろうとすると死角ができそう。男子トイレも入り口狭くて、男児に対して性犯罪目的の男が道を塞いだり、強盗目的でも同様のことが可能。 pic.twitter.com/2J6Mxm8CN4
— もんもん(´⊙ω⊙`)🌱パチムー (@lovemmnga) March 7, 2023
NHKの記事で小宮信夫氏は、そもそもトイレは性犯罪が最も起きやすい場所の一つで、日本の公共のトイレは海外と比べても特に危険だと指摘している。
「海外では『犯罪を起こさせないためにはどうするか』という危機管理に基づいた設計が公共の建築に多く取り入れられており、トイレも同様です。しかし日本は基本的に性善説。そもそも犯罪が起こることを想定していません。加害者になる機会を構造的に減らすことより、『怪しい人に気を付けよう』『標語を覚えて頑張ろう』など注意を促す犯罪対策が多いように思います」
「いかにも怪しい格好をしている犯罪者はほとんどおらず、街中の犯罪の9割は普通の服装をした人によるものです。怖かったら逃げようといいますが、突然襲われると体が硬直し防犯ブザーなども使えない可能性も高いです。そうしたことを知らないので、被害に遭ったら “運が悪かった” ということになってしまう。日本の公共トイレは構造的に危ないと知ってもらい、自治体レベルで変革していかないといけないと思います」
![](https://assets.st-note.com/img/1678423463775-ClkFFML6aW.png?width=800)
日本の公衆トイレの危険性について小宮信夫氏に取材したFRYDAYデジタルの記事では、「犯罪者をいくら罰しても『環境を整えなければ』犯罪は減らない」として犯罪機会論に基づいた環境づくりの重要性が語られている。
「イギリスでは1998年に『犯罪および秩序違反法』という法律ができて、その17条に、『地方自治体は、ありとあらゆる施策において犯罪防止を考慮しなくてはならない』と規定されています。たとえば自治体が公園を作って、そこで犯罪が起きたときには、被害者は自治体に公園設計に関する議事録の開示請求をして、犯罪に対して何も議論をしていなかったとわかった場合は、自治体に何億円もの賠償金を請求できるんです」
「犯罪者をいくら罰しても被害者に賠償金が支払われる保証はない。管理者を相手にすれば補償が受けられるからです」
「犯罪者を罰することで、もしかしたらその人は二度と犯罪を起こさないかもしれない。けれど、別の人によって再び同じような犯罪が起きる可能性は残る。それを防ぐためには犯罪が起きにくい環境を作らなくてはいけないというメッセージにもなるんです。
ところが日本には、〝犯罪を誘発する場所を減らす〟という発想がない。犯罪が起きたら、犯人を罰するだけですべてを終わらせてしまうんです」
渋谷区トイレ環境整備基本方針では一切「防犯」に言及されることがなくて驚いてしまったのだが、日本でも自治体の管理責任を求めるような法ができれば防犯についてもっと真剣に考えてもらえるのだろうか。
「トイレ自体は進化しているんでしょう。けれど、防犯対策はお粗末です。犯罪者がどう物色し、どう接触し、どう逃走するかをシミュレーションして、犯罪がやりにくい状況を作る『防犯環境設計』と呼ばれるデザイン手法を知らないのではないでしょうか」
この記事は最後に「設計コンペティションで選ばれたトイレで犯罪が」として大井町の公衆トイレを取り上げている。
大井町駅前公衆便所での事件
大井町駅前公衆便所は品川区の設計コンペティションで選ばれ、2022年にグッドデザイン賞を受賞してもいる。
大井町駅前公衆便所は、すべて性別を問わず使用でき、異なる設備を備え、着替え・ベビー・パウダールーム・オストメイト・誰でもトイレという目的に応じて自由に選ぶことができるというコンセプトで、6つあるうちの全てが男女共用トイレである。
(PDF)https://jp.toto.com/com-et/jirei/2225/pdf/2225.pdf
このトイレは2020年9月に利用開始されたばかりなのにかかわらず、2021年10月15日の未明に強制わいせつ事件の犯行現場となってしまった。
>JR大井町駅近くで面識のない会社員の20代女性の肩をつかんで公衆トイレに押し込み、胸などを触った疑いが持たれています。
yahooニュース「女性は泣きながら抵抗 男がトイレでわいせつ行為 ナンパ繰り返す」記事 魚拓
犯罪機会論からみれば大井町駅前公衆便所は
・トイレが歩道上にあるので、通行を装って尾行すれば気づかれない
・入り口が線路側にあるので、連れ込まれる瞬間を目撃されにくい
・男女が分離していない共用トイレなので、異性に尾行された人も違和感を覚えず、周囲の人も不自然に思わない
・歩道のすぐそばにあり、ドアさえしめてしまえば完全に個室になるので「入りやすく+見えにくい」という構造
という問題がある。
渋谷区トイレ環境整備基本方針はユニバーサルデザインだけでなく、犯罪機会論の観点からも監修を受けるべきであったのではないだろうか。
「見た目で判断」という曖昧な基準
女性トイレをめぐる話題において、しばしば「見た目で判断」「男性に見える人」「女性に見える人」という表現がされるが、前述したようにトイレは「身体の性別」で区分されるのが暗黙の了解になっているものだと思っていた。
女性トイレ(および女性スペース全般)は
①「身体の性別」で区分されている
という社会通念/暗黙のルールがあるうえで、それでも時々男性の不審者が侵入してくるので
②「見た目」でも警戒する
という二段階認証のようになっているのではないか?
「見た目で判断」という表現によって女性スペースは①「身体の性別(セックス)」ではなく、最初から②「見た目/パス度」で区別されるものなのだと認識をずらそうとする意図があるのではないか。
「パス度」とは「外見上第三者から自認する性別として認識され、社会に通用する度合いを指す言葉」のことである。
公共の場においては誰が「見た目」「パス度」を判断するのだろう。
たまたまその場に居合わせた人が判断するのでは基準が曖昧であるし、「見た目で判断すればいい」といっている人は、違和感をおぼえたとしてもその場では波風が立たないようにやりすごす可能性を考慮していない。
また、「パス度」が高ければ良いというのはルッキズム(外見重視主義)にもつながるだろう。
わたしの考える「パス度」の問題点
ルッキズムやエイジズムという抑圧やシビアな評価にさらされ続ける女性と違って、そこから自由でいられた男性が自分の考える“女性”のように装飾しても、自己に対する認識が他者からの評価と一致しない場合がある。
女性はプライバシーや身の安全に関わる場面ではとりわけシビアに判断するし、男性は男性に対して容姿の評価が甘いため、評価者が男性であるか女性であるかによって、精度が違うだろう。
現実は加工アプリのように他者の視野にフィルターをかけられないし、顔だけでなく他の女性との比較や体格や雰囲気など含めて全体像で判断される。
女性はいざ女性スペースで男性と思われる人に遭遇しても、逆上されるのが怖くて見て見ぬふりをしてやり過ごす。
その状態を自分の「パス度が高い」と都合よく変換し、実際にはパス度が低くても完パスしてると思い込んでいるorたとえパス度が低くても女性は文句言ってこないんだから問題ないと考える人が一定数いる。「パス度」は「他者が自分をどんな性別として扱うかをフィードバックした自己評価」であるため、基準そのものに本人の主観が含まれている。
「見た目」や「パス度」が基準となってしまうことで、「パス度」の自己フィードバックがうまく働いていない人まで女性トイレを利用できることになってしまい、「身体の性別」で区分されているという社会通念や暗黙のルールが崩壊する。
それによって女性トイレを使う女性当事者の心理的安全が脅かされてしまうし、いったん破壊されてしまった安全への信頼はもう元には戻らないので、社会で共存していくためにも建前や暗黙のルールは守ってほしい。
よく見られるトランスアライ/共用トイレ推進派の意見9選
1「女性だって女性に性加害する」「女性だって女性を盗撮する」
まずは性犯罪者の男女比をみてみよう。
女性だって女性に加害する例もあるだろうが、性犯罪者の99%以上は男性によっておこなわれるという統計を無視する理由にはならない。
![](https://assets.st-note.com/img/1678241106260-p3d63m5wa2.png?width=800)
次に性被害者の男女比をみてみよう。
警視庁 犯罪被害者白書 令和4年版本文 犯罪被害者等施策に関する基礎資料 PDF 230ページ にある
「10.特定罪種別 死傷別 被害者数」の「強制性交等罪」「強制わいせつ罪」をみれば被害者がほぼ女性であることが分かる。
![](https://assets.st-note.com/img/1677223582224-rhTx2MrFdp.png?width=800)
このように性犯罪者のほとんどが男性であり、性被害者のほとんどが女性であるため、トイレや入浴する場所や更衣室などの身体のプライバシーに関連して無防備になる場所においてスペースを身体の性で分けるのは合理的な配慮だろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1678672535803-QclHwxehDw.png?width=800)
なんか男性に命令された女性だから盗撮も無問題って、もはやわけわからん怖い。
— Mizuho.H (@_keroko) March 12, 2023
「男性に命令された女性だから」というのは2023年1月に報道された「長男の指示で母親が“女湯盗撮”か…入浴セットに仕掛けた小型カメラで裸の女性を盗撮した疑い 親子を逮捕」記事 魚拓 という事件を背景にしたものだろう。
誰も「盗撮が無問題」なんていっていないのに曲解するのはやめてほしい。
女性の盗撮映像を性的コンテンツとしたり売買するのは男性なのだから、もし男女共用になったらわざわざ女性に依頼するまでもなく男性が直接盗撮カメラを仕掛けることが可能になる。
てかさ、女も性犯罪します!派の人で「児童をレイプして殺す女性も居るよね」とか言ってるの見た事ないな。せいぜいが盗撮。盗撮が重大な犯罪である事は間違いないが、それでも強姦殺人に比べると罪は軽い。ちゃんと分かってんじゃんね。男が女に比べて、いかにヤバい犯罪を犯してるか。
— 八鼓火/七川 琴 (@Hachikobi) March 11, 2023
2「トランスを排除しても、性犯罪がトイレから無くなる訳じゃない」
トランス女性による公衆トイレの性犯罪を仮に厳しく取り締まり排除に目を光らせたとして、それが日本の性加害の減少に本当に効果があるか考えてみればいいんじゃないでしょうか。私はどー考えても現実味が無いのでは、としか。
— Mizuho.H (@_keroko) November 21, 2020
仮に「トランス女性を排除しても性犯罪が無くなるわけではない」として、だからといって女性トイレを性自認ベースで運用したら、防犯の抜け穴になってしまって性犯罪目的で悪用する男性が明らかに増えることを無視している。
「どー考えても現実味が無い」どころではなく、今まで性被害に遭ってきた女性たちが自らの経験から警告しているのだ。
女性たちの意見を聞くべきだ。被害者が出てからでは遅すぎる。
3「トランス女性を悪魔化している」
トイレについては、落としどころを探る議論がなされてますね。僕はシス男性なので、この問題においてはつまるところ「加害者」の側だと思っています。男性の女性に対する性暴力が蔓延しているから、これほど多くの女性がトイレの使用に不安を覚えているわけで…恐怖感は軽視してはならないと思います。
— 箱[いぬ いぬ]🏳️⚧️(倉田タカシ) (@deadpop) April 11, 2022
そのうえで、トランス女性を悪魔化するような論を持ち出す人が多いことはとても大きな問題だと思っています。
— 箱[いぬ いぬ]🏳️⚧️(倉田タカシ) (@deadpop) April 11, 2022
「トランス」の定義をもう一度確認してほしい。
トランス女性は身体が男性のままで身体違和が無い場合もある。
何度もいうが、トランス女性を「悪魔化」しているのではなく「身体男性」が女性トイレに入る可能性を懸念しているのだ。
身体女性にとっては女性スペースにおける身体男性が脅威であることを、このように「トランス差別」とすり替えられ続けるのにはもううんざりしている。
そしてトランス女性を全くの無垢で善良な存在であると「聖人化」するのも、相手を人間扱いしていないという点においては、また違った形の差別なのだとわたしは思っている。
4「海外ではもうオールジェンダー(共用)トイレが主流だ」
自分が何者かを定義しないスウェーデンの男女共用トイレに考えさせられた話 - wezzy|ウェジー https://t.co/HSyx1Dvayr
— SHIMIZU Akiko(清水晶子)『フェミニズムってなんですか?』 (@akishmz) April 7, 2019
性被害に遭ったあとに警察に行って調書を作成する過程ですら二次加害になりうるし、性犯罪の成立要件が厳しく、いざ起訴できたとしても性加害者に対する量刑が甘くて、加害者がのうのうとのさばっているこのヘルジャパンに海外基準を持ち込まないでほしい。
性犯罪者が野放しにされているまま、人権先進国のいいところ取りして先進国ぶらないでほしい。
犠牲になるのは弱い立場の女性や子どもたちだ。
海外は共用トイレが主流って
— JuriAri7 (@Ari7Juri) March 9, 2023
日本はチカン及び性的販売物大国よ
あと信じられないことだろうけど
共用トイレに使用済み生理用品捨てるのも悪用される可能性あるよ
実際知人が女子トイレに侵入して盗んでる男に遭遇したことあるし
売ってくれって人もいるし
そこまで考慮して設置しているのか?
5「トランス女性たちはもうすでに女性トイレを使用している」
要するにトランス女性は女子トイレへの侵入者などではありません。シス女性と共にすでにスペースを利用してきています。SNS上では女湯と女子トイレを中心に「トランスジェンダーの権利と女性の権利が対立している」といった言説が様々に流れていますが、そうではないのです。→
— 水上文 (@mi_zu_a) August 29, 2022
バレていなければいいという問題ではない。
社会からコンセンサスを得られてないことをこのようにいわれては開き直りとして受け取られてしまうだろう。
店員に気づかれずに万引きできた人がいることは、窃盗をしていいという証明ではありません。飲酒運転がばれなかった人がいることは、飲酒運転をしていいという証明ではありません。女子トイレで女性装がバレなかった男性がいることは、男性が女子トイレに入っていいという証明ではありません
— ヘイトを許さない一市民🐸人権を相対化する改憲に反対 (@nohate38306133) March 11, 2023
6「トイレに入るためにいちいち性器の有無をチェックするのか」
もうトイレの入り口でみんな服を脱げばいいんじゃね?それなら性器の有無も確認できて最高じゃないか.
— Aoba Haruna/青葉はるな (@misora05) November 14, 2018
「騙す」とは?
— mamegoma🐥#トランス差別に反対します (@mamegomahyphen) June 21, 2021
女子トイレは排泄をする場所。
シス女性かどうか値踏みする場所でも、
性器を見せ合いペニスの有無を確認する所でも、
シス女性の王国でもないですよ。
誰に迷惑かけるでなく、普通にトイレに入り排泄をして出て行く。
そうしていれば、誰も騙してないし、騙されてなどいない😔 https://t.co/POv9HIAXFW
これは因果関係を逆にした詭弁だ。5のように「もうすでに女性トイレを使用している」と表明されたことによって、女性トイレ(および女性スペース全般)は「①身体の性別で区分されている」という社会通念が脅かされてしまい、疑心暗鬼にならざるを得なくなったのだ。
また、男女の身体的差異は性器の有無だけではないし、女性にとっては場所がトイレであっても性器が見えなければいいという問題ではない。
7「男性に間違われて通報されたり驚かれたりする女性もいるのだからトランス女性が入ってきてもかまわない」
うんざり。いい加減にしてほしい。私はソフトモヒカンでメンズ服を着ていた10代はもちろん、会社勤めのアラサーになっても女子便所で男に間違えられ続けていた。先客に悲鳴を上げられ「痴漢かと思ったでしょ!」と責められたこともある。「すいません」と言わされるのが屈辱だった。女子便所が嫌いだ。 https://t.co/dHxVoawdpj
— 岡田育🍥『我は、おばさん』 (@okadaic) September 3, 2020
女性トイレ問題、私は「女性が女性を男性と間違えて通報してる限りはトランスも入れろ」派です。心も体も女性に生まれたのに体格が普通じゃないだけで呼び止められたり通報されました。通報の後どうなるか知ってますか?(続く)
— shaker。@特殊工作班 (@sis_shaker) March 6, 2023
たまにこういう意見の女性がいるので驚く。
女性が女性トイレで「男性に見える人」に驚いたり通報するのは、女性トイレで加害をしてくる男性が多いからであって、もしトランス女性まで女子トイレを使っていいことになったら、女性トイレ(および女性スペース全般)は「①身体の性別で区分されている」という社会通念がおびやかされるので、女性たちはより警戒を強めることになり、男性と間違われるような女性まで通報される機会が今よりも増えるだろう。
8「トランス女性が男性用を使うと驚かれてしまうので女性用を使っている」
私の場合、男性用トイレを使用したら驚かせてしまうので、多機能トイレを探したり、なければ女性用トイレを使っています。こちらが性転換をしていても、受け入れられないという女性がいるのも分かるので、なるべく気は遣っている。
ただ、トランスジェンダーの当事者は自分が特別な性別だと思っているわけじゃなく、私は女、俺は男だと自認している。多機能トイレを使えと言われるのは嫌だという声も多いです。
どこで折り合いをつけるかは、結局のところ、見た目の部分が大きいと思います。
「男性を驚かせるのは申し訳ない」けれど「女性を驚かせるのは許容できる」と思っている時点で女性のことを何だと思っているのだろう。
女性が驚くのは最悪の場合は命にかかわるという恐怖心からなのに。
無自覚ながらも「男性を驚かしたり脅かしてはならない」「男性には腕力では敵わないが、女性には負けることはないだろうから自分は安心でいられる」と思っているのかもしれない。
(ちなみにこの記事で取材されているのは「女子プロレスラーとして活躍しているトランスジェンダー女性」だ)
もし「女性の心」というものが存在するのならば、女性スペースで身体男性に遭遇した女性がどう思うのか少しは想像してもらいたい。
(すでに配慮してオールジェンダートイレを使って下さっているMtFの方はお気遣いに感謝します)
9「FtM(トランス男性)はどうなんだ」
あっ、本当に理解しておられないんですね…
— おどろどろ (@saboringmachine) March 6, 2023
身体的な性別にあった設備を使うべき、というのが橋本さんの主張とお見受けしますが、身体的には女性のトランス男性は女性トイレを使うことになります
それを望んでおられる、ということでいいんですよね? https://t.co/CEhoJqHQic
時々こうやって性的少数者の身体女性を持ち出してくる人がいる。
身体男性による加害に比べれば身体女性による加害は圧倒的に少ないし、女性スペースにおいて問題になって報道されているのはほぼ100%身体男性によるものだ。
性別移行が進んで女性のように見えない外見になったFtMの方もいる。
その場合は先ほども述べたように、
女性トイレは
①「身体の性別」で区分されている
という社会通念/暗黙のルールを踏まえたうえで、それでも時々男性の不審者が侵入してくるので
②「見た目」でも警戒する
ので、①をクリアしているとしても②の「見た目」が問題になりそうならば公共の福祉のためにできればオールジェンダートイレを使って配慮してほしい。(すでに配慮して下さっているFtMの方はお気遣いに感謝します)
そのために選択肢としてオールジェンダートイレを増設することには賛成している。
男性側の問題
衛生面
男性のトイレの使いかたがあまりキレイでないという話はちょくちょく聞く。
ちょっと前に「女子トイレ、女子更衣室、女湯は使用済みナプキンが落ちていて汚い」みたいなデマ流れてたけど、コンビニバイトでトイレ掃除してた身としてはむしろ逆だと思ってる。いや絶対逆だ。女性用トイレは基本臭くもないし床も綺麗だけど男女共用トイレは便座上がってるし尿飛び散ってるし臭いし
— 灯 架 (@touka_o0O) February 26, 2023
共用トイレしかないコンビニで数年週6で働いてた私の早朝トイレ掃除の思い出
— すずお🍄今月は背中の筋トレを頑張る (@mukimukikinokom) February 27, 2023
・尿の飛び散りを発見…毎日
・袋とじが破かれたエロ本を発見…2回
・中の男に引きずり込まれかけた…1回
・床に落ちた使用済みナプキンを発見…0回 https://t.co/avCC7pdBJw
もし女性が使えるのが洋式便器のオールジェンダー(誰でも/ユニバーサル/男女共用)トイレだけの場合は「男性が立ったまま洋式便器に小用を足したときの飛び散りによる汚れ」が確実にある(※LIONの調査によると立ったまま小用をする男性は45%いる)ので、座らなければ用を足せない女性たちは外出先のトイレ利用をためらってしまうだろう。
「THE TOKYO TOILET」プロジェクトでは
>「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「危険」などのイメージから入りづらい状況がある公衆トイレを、デザイン・クリエーティブの力を活用し「誰もが快適に使用できる」ようにすることを目指し
と謳っているが、特にトイレにおける「汚い」「臭い」は尿の飛び散りも大きな要因だと思うため、設計者はもし女性専用トイレを作らずに全てオールジェンダートイレにするのならば「男性が立って小用を足して周りを飛沫で汚したあとに同じ場所で女性が座って用を足さなければならない不快感」のことも考慮してほしい。
(※この項目は『いいね罪ふたたび』の「どんなツイートがトランスヘイトとされたのか」例2身体の性別で区分されたトイレは「トランスヘイト」なのか? より一部再掲した)
誰がトランス女性を排除しているのか?
はてな匿名ダイアリーで「2023年トランス女性のトイレ議論について、当事者から。[追記あり]」という記事があげられた。
パス度の高いMtFは女子トイレを利用してもトラブルは起こらない一方、男子トイレを利用することで暴言を受けたり性的な被害を受けたりもすることがある。
→男子トイレを使っていた時代には、実際に「ここ男子トイレだよ」と言われて「あ、男です」と言ったら「なんだよオカマかよキメェな」みたいな暴言を言われたりもした。
という記述があったが、これは男性が男性を男性スペースから排除しているということになるだろう。
もしトランス女性が男子トイレを使うのが危険ならば、それは加害する男性のせいであって、その問題をトランス女性が女性スペースを使えるようにすることで解決を図ろうというのは、身体男性の侵入を容易にして女性や女児たち全員をおびやかしてリスクにさらすことになるので公共の福祉の点から同意できない。
しかしMtFは男性から性暴力を受けるという現実的な問題もあるため、男性トイレでもなく女性トイレでもなくオールジェンダートイレを使用してほしいと思っている。
トランスジェンダーへの配慮は全てオールジェンダートイレにすることで解決?
理論的には女子トイレをなくして「全てをオールジェンダートイレ」もしくは「男性用トイレ+オールジェンダートイレ」にすれば、他に選択肢がないため、「見た目」「パス度」に関係なくどんなトランス女性にもオールジェンダートイレを使用してもらうことはできるだろうが、それは結局のところすべての女性や女児たちに対してもオールジェンダートイレのみを使うように強いることにもなる。
性的少数者(実質トランスジェンダー)に配慮してトイレの共用化が推進されているのは、決定権を持つ人たちが「一部のトランス女性は性自認が女性でも身体が男性のままである場合もあるので女性トイレを使ってはならない」という議論を避けた結果なのだと推測する。
女性たちの「女性トイレをなくさないでほしい」という意見を無視するのは「女性たちの防犯や安全に関する懸念は取るに足らない」というのと同義なのではないか。
排除されるのは誰か
小学校にある男女共用便所が学内だけでなく公衆トイレのようにも使用されていた頃、文京区小2女児殺害事件という悲惨な出来事が起こった。
わたしの考えすぎかもしれないが、「女性トイレをなくして女性や女児が使える公衆トイレをオールジェンダートイレ(共同便所)に限る」というのは、最悪の場合、こういった事件まで再び起こりうるのではないか。
女性用トイレは、先人の女性たちが大学や職場や議会などに設置されてなかった環境を訴えて、地道に普及してきた女性たちの大事な権利でもある。
それにもかかわらず、女性用をなくして「全てオールジェンダートイレ」(という名の実質は共同便所)にするというのは時代に逆行しているとしか思えない。
不衛生だったり防犯上懸念があるようなトイレしかないということは、結果として女性や女児の心理的安全を損ない、行動範囲を狭め、公共空間から排除することになるだろう。
まとめ
上記の理由により、わたしは選択肢としてオールジェンダートイレを増やすというのは賛成だ。
しかしそれは「女性トイレをなくしてオールジェンダートイレにする」という意味ではない。
「全てをオールジェンダートイレ」もしくは「男性用+オールジェンダートイレ」にすることには反対する。
今あるトイレを改装する場合は女性用トイレの数はそのままで(むしろ数を増やしてもいいくらいだ)、トイレを新設する場合は女子トイレとオールジェンダートイレと男性用トイレを作り、もし設置スペースに制限がある場合は男性用トイレをオールジェンダートイレとすることが望ましいと考える。
渋谷区は「今後のトイレ整備について女性トイレをなくす方向性など全くございません」といつつ女性専用トイレがなくなったのは事実であるし、渋谷区は性的少数者(実質トランスジェンダー)への配慮として共用を推進している。
すなわち「女性専用トイレをなくして女性とトランス女性/トランス男性が使用するトイレをオールジェンダートイレに限定することによって、権利の衝突を回避し、トランスへの配慮を名目上は実現した」ということだ。
しかしこれでは防犯や衛生面に問題があり、女性や女児のみに負担や我慢を強いることになる。
このような方針は明らかな女性差別だ。
この権利衝突の本来の解決方法は、「女性用+オールジェンダー+男性用」もしくは「女性用+オールジェンダー」にしたうえで、トランス女性の定義を明確にして、身体男性のトランス女性はオールジェンダートイレを使ってもらうように周知して社会的コンセンサスを得ていくことだろう。
公衆トイレは完成したらお披露目して終わりの自己満足的な「作品」ではなく、実用性が求められる公共の建造物だ。
いくらデザインが素晴らしくても、防犯面や衛生面に不安があれば女性たちは使用できない。
公衆トイレには目新しさを求めているのではなく、ただ安心・安全・清潔に排泄したいだけなのに、なぜ女性専用トイレをなくしてしまうのだろう。
最後に『存在しない女たち』から引用した言葉とともにこの記事を終わりにしたい。
要するに、世界の半分を占める女性たちが、公共空間から閉め出されるような設計になっているのは、リソースの問題ではない。それは優先順位の問題であり、無意識であろうとなかろうと、私たちの社会は女性を優先させることがない。これは明らかに不公平であり、経済的にも愚策である。
女性たちにも公的資源に対する平等の権利があるのだから、設計および計画段階から女性を排除するのはやめなければならない。
設計や計画段階から女性を排除し、女性専用トイレを無くしてオールジェンダートイレ(という名前だけは新しいものの、実質は男女共用便所)しか設置しないということは女性の心理的安全を損ない、行動範囲を狭めることにつながる。
女性たちにも公的資源に対する平等の権利がある。
女性たちには「女性トイレ」が必ず必要だ。
いただいたサポートはアウトプットという形で還元できるよう活かしたいと思います💪🏻