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誤字脱字スライムよさらば《ディスクライブ・メソッド・オンライン》第四話《水曜日のエッセイ by 逢志亭龍》


水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
 

 
1話

2話

3話

 
この状況はマズい。『絶体絶命』とはまさにこのことかとはじめて思った。
 
目の前には2メートルはあろう大きさで、ぶよんぶよんと揺れている生き物、荒ぶる形相をした紫色の「キング誤字脱字スライム」が立ち塞がっている。
 
ついさっきまで大量の誤字スライムと脱字スライムを叩き潰し続けたせいで、もう力が残っていない……。
 
はじめて死ぬことを予感し、恐怖で身体が震え出した。もはや目に見えるものは全て恐怖の対象でしかない。
 
精神的に耐えられなり、目をつぶって視界からすべての「恐怖」をシャットアウトしようとした……。
 
その瞬間、頭の中で声が響いた。
 
「あきらめないで」
 
女の声だ。
 
えっ?! と思い、急いで目を開く。
しかし、目の前の環境は何も変わっておらず、絶望の世界のまっただなかなの再確認しただけだった。
 
「辞書を使いなさい」
 
姿はない。ふたたび頭の中に声が響いた。
 
「使う」ったってどうすりゃ……あ、そうか、辞書は武器じゃない。
当たり前のことだった。とりあえず開けばいいんだな。
 
手持ちの辞書を取り出して開こうとしたら、握力も限界のぷるぷる震えた指が辞書をつかみ損ねて落としてしまった。
 
ドサッ
 
絶 体 絶 命 再び……
 
「もうダメだ」
この世界から目を閉じて現実から逃げようとした。
 
「今開かれたページを読み上げなさい。
 あなた自身の声じゃないと意味がないのよ」
 
これだけの状況でもまだあきらめちゃダメだったのか!急いで書かれてある文字を震える声で読み上げた。
 
「There is no friend as loyal as a book.」
 
柔らかい光が辞書から放たれて、スゥッと消えた。
 
「ノートに書いた文章を読みあげなさい」
頭の中に響く声に従って、今まで自分が書いてきたノートの文章を読み上げた。
 
不思議なくらい誤字、脱字に気付けるようになっていた。気付いて訂正するごとに、誤字脱字キングスライムがその場で動けなくなり、苦悶の表情に変わっていく。
 

「~だった……」
 
ノートに書かれた最後の文章を読み上げると、あれだけ凶暴な形相をしていた生き物が、不思議なほど穏やかな表情に変わり姿を消したのだった。
 
「おめでとう、よくやったわ。
誤字スライムや脱字スライムのモンスターたちは、あなた自身が生み出したもの。自らの声で読み上げて正すことで還すことができるのよ」
 
なにがなんだか分からなかったけれど、とにかくボクは絶体絶命の窮地を切り抜けたことだけは理解できた。
 
「あなたは一体誰なんですか?!」
 
「私の名前は、マリー」
 

[ライター:逢志亭龍]

◆あとがき
ヤスです。連載物のライティングファンタジー物語ディスクライブ・メソッド・オンラインです。誤字脱字はあなたが生み出したもの。音読すればなおせる。おもしろい。

66日間、毎日投稿してみよう企画を開催中。どなたでも参加可能。ただし1日でも投稿をとばすとマガジンから追放です。
 
 
ひとりでなかなか頑張れないなら、私たちがいっしょに走るよ。
 

◆66日ライティング×ランニングでいっしょに走っている人たち
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