たなかひろみつ

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noteには自作の詩を上げています。有料記事は全文読める投げ銭式。良かったら覗いてみてください。 普段はデザインの仕事をしています。 関心は人が感じるこっち側(自分事や共感性)とあっち側(他人事や無関係性)の境について。

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今夜は窓を通そう|詩

夏の熟した空気に 闇夜に響く蛙の合唱 戸口に二匹のはぐれものが ペタリペタリと張りついて 確かな唱和で帰りを迎える 金魚鉢に泳ぐ四匹のメダカは 小さな住処をグル…

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書きたくなったら
書きましょう
書きたくないのに
書いたものは
書かなきゃよかったと
書くようになる
書かずにおれないなら
書けるだけ書いて
書いて書いて書いて
書けることを喜びましょう

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命の記録係│詩

この辺りで もぐらが泳いでいませんでしたか? このくらいの手の平ほどの大きさで 鼻先は薄桃色なんです 砂浜の熱さに驚いて 海に注ぐ川の縁あたりに 逃げてきたらしいん…

美しい稲妻│詩

真水の中に 黒墨の塊をいくつも投げ込んだような 恐ろしく暗い雷雲が空を塞いでいく 閃光が目に映る景色を白に塗り替え 無数の稲妻が邪魔するものの無い虚空を 縦横無尽に…

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黒猫の先生│詩

ふと顔をあげると 遠くの道向こうの猫と目が合った 束の間視線を交わしてから 一人と一匹は また向き直って仕事に戻る 私は畑の草を取り 黒猫は真っ直ぐ道を行く 黒猫の…

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なにもかもが透明な│詩

少し錆びたバイクの ヘッドライトに映る美しい青の空 瞬きとともに呼吸と時間が止まる 僕らの頭上の木々や白雲が 嘘や偽りなくすべて映し出される 苫小牧の夜明けの光 小…

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午前二時の魔法│詩

赤いソファに並んだ二人 音楽の話しで一日が暮れてゆく スピーカーから流れるものとは裏腹に 静かな時間がゆっくりと過ぎて 時計は見ないようにする二人 明日のことなど…

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春の土ついた玉葱

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二つの瞼よ│詩

二つの瞼よ 君等はどうして 僕を眠らせたがるのか 春の日差しと結託して 君等はどうして 夢を見せたがるのか 言葉が遠退き 君等の奏でる調べが 山稜のラインに雲を吹き流…

15

星の光│詩

今夜 地球の端から星空を眺めている 空っぽの宇宙を旅した光は 生まれた星から遥か遠くの 太陽系の 第三惑星の 身長わずか2メートルにも満たない人間の 小さな小さな眼に…

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言葉を二つ折りにして│詩

言葉を二つ折りにして 静かに胃の中に納める 時折 言葉はごろごろと 胃の中で転げ回るけれども 柔らかな言葉なら 快いものである 棘のある言葉なら 悶え苦しみ血まみれ…

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「高知の夏」の最後、あまりに感情を置き去りにしてしまいました。脱字も含めて書き直しました。

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高知の夏│詩

まだ通りを走る車が少なかった頃 高知の小さな漁師町で いくつかの夏を過ごしていた 乾いた空気と強い日差し 真っ白な道に落ちる濃厚な影 寺の庭を埋め尽くす蝉の声 田ん…

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傘がない│詩

傘がない 朝から降り続く雨の一日 昇降口にさしておいたはずの 新しく買ってもらった傘がない 名前も書いた透明な傘 風もなく 雨は真っ直ぐ落ちてゆく 灰色の雨霞の中へ …

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五月の海│詩

五月の太陽が照らす海 浜から離れた静かな入江 そこは男の子たちだけの遊び場 波間から顔を出した磯の上 引き潮にあわせて まだ日に焼けていない白い顔が集う 潮溜まりの…

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忘れてしまえば│詩

あなたの前で 言葉を選んでいるよりも たった一歩 前に踏み出して 両腕に包んでぎゅっとする 言葉も 理由も ためらいも 忘れてしまえば それでいい 2024/4/26

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今夜は窓を通そう|詩

今夜は窓を通そう|詩

夏の熟した空気に
闇夜に響く蛙の合唱

戸口に二匹のはぐれものが
ペタリペタリと張りついて
確かな唱和で帰りを迎える

金魚鉢に泳ぐ四匹のメダカは
小さな住処をグルグル巡る

時たまけんかをしてみたり
時たま水草に隠れたり
餌を奪い合わないところなど
人も見習ったほうがいい

風が抜けるよう今夜は窓を通そう
星が見えるよう今夜は窓を通そう

2008/7/7

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書きたくなったら
書きましょう
書きたくないのに
書いたものは
書かなきゃよかったと
書くようになる
書かずにおれないなら
書けるだけ書いて
書いて書いて書いて
書けることを喜びましょう

命の記録係│詩

命の記録係│詩

この辺りで
もぐらが泳いでいませんでしたか?
このくらいの手の平ほどの大きさで
鼻先は薄桃色なんです

砂浜の熱さに驚いて
海に注ぐ川の縁あたりに
逃げてきたらしいんです
見ませんでしたか?

もぐらだって泳ぎますよ
土の中を泳ぐくらいですからね
得意なのは平泳ぎでしょうね
後ろ足はほとんど使えませんが

みみずの王様を追いかけて
気がついたら浜に出てしまったようなんです
そのみみずの王様というの

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美しい稲妻│詩

美しい稲妻│詩

真水の中に
黒墨の塊をいくつも投げ込んだような
恐ろしく暗い雷雲が空を塞いでいく

閃光が目に映る景色を白に塗り替え
無数の稲妻が邪魔するものの無い虚空を
縦横無尽に這いまわる

玄関先の小さな地面は
雹が混じる大粒の散弾に無数の穴をあけ
やたらめったら泥を撒き散らす

バチバチバチバチ
声も掻き消す雨の爆ぜる音
バリバリバリバリ
胃の中にまで響き渡る雷鳴
稲妻は巨大な手を広げ
飛ぶ鳥もない無音の

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黒猫の先生│詩

黒猫の先生│詩

ふと顔をあげると
遠くの道向こうの猫と目が合った

束の間視線を交わしてから
一人と一匹は
また向き直って仕事に戻る

私は畑の草を取り
黒猫は真っ直ぐ道を行く

黒猫の毛並みは艶やかで
瞳も足取りも力強く
迷いなど微塵もない

黒猫に私はどう映ったろうか
少し疲れた中年の人間が
畑の前に屈んで草を取っている

ちまちまと草など取っていないで
疲れているなら寝ていればよいのにと
猫には思われたかも

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なにもかもが透明な│詩

なにもかもが透明な│詩

少し錆びたバイクの
ヘッドライトに映る美しい青の空

瞬きとともに呼吸と時間が止まる
僕らの頭上の木々や白雲が
嘘や偽りなくすべて映し出される

苫小牧の夜明けの光
小樽の運河の灯
札幌の作り込まれた街のカタチ

移り変わる光とともに日常が
流れて消えて透けていく

富良野の緑の風
稚内の日暮れの藍
網走の枯れた海

走る風に煽られ飛ばされる
身体に纏わりついた幾重もの衣

釧路の湿った霧
根室の

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午前二時の魔法│詩

午前二時の魔法│詩

赤いソファに並んだ二人
音楽の話しで一日が暮れてゆく

スピーカーから流れるものとは裏腹に
静かな時間がゆっくりと過ぎて

時計は見ないようにする二人
明日のことなど今は忘れていたいから

この部屋の時間が止まるまで
世界が小さくなる魔法をかけたよ

二つのスピーカーに挟まれて待つ
擦り切れるほど聴いた名盤たち

小さな部屋に満ちた
優しいコーヒーの香り
まだ何もおきない二人の午前二時

2024

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二つの瞼よ│詩

二つの瞼よ│詩

二つの瞼よ
君等はどうして
僕を眠らせたがるのか

春の日差しと結託して
君等はどうして
夢を見せたがるのか

言葉が遠退き
君等の奏でる調べが
山稜のラインに雲を吹き流す

眠れ
眠れと
木霊する


花糸は桜色に溶け出して
どこから春の夢だったのか
もう僕にはわからない

湯船に揺れる波紋の光跡
濡れた肩に預けた何か

海鳴りに腰掛けて
思い出している

あの灯台より
あたたかな光を頂きまし

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星の光│詩

星の光│詩

今夜
地球の端から星空を眺めている

空っぽの宇宙を旅した光は
生まれた星から遥か遠くの
太陽系の
第三惑星の
身長わずか2メートルにも満たない人間の
小さな小さな眼に飛び込んで
神経回路を駆け巡り
私の脳に記録される

光が生まれたその瞬間に
旅の結末は
定められていたのかもしれない

想像すら難しいほどの
ゼロがたくさん並ぶ距離を旅して
一つの星と私がつながる
そんな奇跡が今夜も起きる

君と

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言葉を二つ折りにして│詩

言葉を二つ折りにして│詩

言葉を二つ折りにして
静かに胃の中に納める

時折
言葉はごろごろと
胃の中で転げ回るけれども

柔らかな言葉なら
快いものである

棘のある言葉なら
悶え苦しみ血まみれになる

小さく四つ折り
より小さく八つ折りにすれば

棘も飛び出ず痛みも軽い
小さく小さくするに限る

とはいえ
飲み込む言葉は
自分の好物に越したことはない

言葉を予め酒に浸しておくのも
刺激を和らげるためには良い

言葉に

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「高知の夏」の最後、あまりに感情を置き去りにしてしまいました。脱字も含めて書き直しました。

高知の夏│詩

高知の夏│詩

まだ通りを走る車が少なかった頃
高知の小さな漁師町で
いくつかの夏を過ごしていた

乾いた空気と強い日差し
真っ白な道に落ちる濃厚な影
寺の庭を埋め尽くす蝉の声

田んぼと浜と
わずかな商店があるだけの小さな集落は
大人にとっては退屈なところだったろう

海と集落を隔てる堤防は
小さな子には絶望的な高さで
一度も水平線を見ることはなかった

高知の従兄弟と
東京の従姉妹
そして一番小さな私

砂混

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傘がない│詩

傘がない│詩

傘がない

朝から降り続く雨の一日
昇降口にさしておいたはずの
新しく買ってもらった傘がない
名前も書いた透明な傘

風もなく
雨は真っ直ぐ落ちてゆく
灰色の雨霞の中へ
次々と消える同級生たち

碁盤の目のように並んだ
鉄製の四角い升目には
まだ持ち主を待つ傘たちが
ポツリポツリと立っている

何事もなく
一日を終えた持ち主に迎えられ
一本ずつ雨に消えてゆく傘を
昇降口の端に立って見送る

しばら

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五月の海│詩

五月の海│詩

五月の太陽が照らす海
浜から離れた静かな入江
そこは男の子たちだけの遊び場

波間から顔を出した磯の上
引き潮にあわせて
まだ日に焼けていない白い顔が集う

潮溜まりのウミウシ
磯の裏側に張り付いたムラサキウニ
岩の間に身を隠すイワガニ

磯の岩場を跳びまわり
時には海に滑り落ち
半身をずぶ濡れにして大笑い

いつも落ちるのはお前だよ
お前だって片足落ちたろ
掛け合う声がさざ波に染みる

崖下に大

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忘れてしまえば│詩

忘れてしまえば│詩

あなたの前で
言葉を選んでいるよりも

たった一歩
前に踏み出して
両腕に包んでぎゅっとする

言葉も
理由も
ためらいも
忘れてしまえば
それでいい

2024/4/26