五月の海│詩
五月の太陽が照らす海
浜から離れた静かな入江
そこは男の子たちだけの遊び場
波間から顔を出した磯の上
引き潮にあわせて
まだ日に焼けていない白い顔が集う
潮溜まりのウミウシ
磯の裏側に張り付いたムラサキウニ
岩の間に身を隠すイワガニ
磯の岩場を跳びまわり
時には海に滑り落ち
半身をずぶ濡れにして大笑い
いつも落ちるのはお前だよ
お前だって片足落ちたろ
掛け合う声がさざ波に染みる
崖下に大きく開いた洞穴を歩く時だけは
今にも崩れてくるようで
恐ろしさに誰も口を開く者はなく
街も学校も見えない
崖に囲まれた小さな入江
日が暮れるまで、潮が満ちるまで
五月の波間に消えた
美しい海の記憶
2024/5/6
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