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言葉を二つ折りにして│詩

言葉を二つ折りにして
静かに胃の中に納める

時折
言葉はごろごろと
胃の中で転げ回るけれども

柔らかな言葉なら
快いものである

棘のある言葉なら
悶え苦しみ血まみれになる

小さく四つ折り
より小さく八つ折りにすれば

棘も飛び出ず痛みも軽い
小さく小さくするに限る

とはいえ
飲み込む言葉は
自分の好物に越したことはない

言葉を予め酒に浸しておくのも
刺激を和らげるためには良い

言葉に酔ってしまうだけで
誰かを不幸にすることもない

胃の中は誰の目にも触れないのだから
自画自賛の言葉で腹八分にしようと
腹いっぱいにしようと構わない

ただし
口を開いたら聞こえてしまうから
折り目正しくしまっておくこと

妬み嫉みばかりでは
腹を黒くするので注意すること

長く胃の中にしまった言葉は
時と共に溶け出して
滋養にもなれば毒にもなる

はじめの内は気がつかない
それはそれは小さな変化である

それがやがては全身を巡り
身体の隅々まで行き渡る

人を生かすこともあれば
手足を冷たくして
やがては死に追いやることもある

80億の人類が日々使っている言葉とは
そういうものである

2024/5/18

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