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【お知らせ】『藤田和日郎 黒博物館 館報 ヴィクトリア朝・闇のアーカイヴ』 2023年6月22日刊行

藤田和日郎先生の作品『黒博物館』シリーズの解説本『藤田和日郎 黒博物館 館報 ヴィクトリア朝・闇のアーカイヴ』の執筆を担当することとなり、昨年から準備を進めてきていました。先日出版情報が公開となり、6月22日出版予定で進んでいます(※5/31校了し、発売します)。

表紙は描き下ろしのキュレーターさんイラストです。

『黒博物館』との出会いは「スプリンガルド」が最初で、2007年にコミックスが出てからは感想を書きましたが、その16年後にこうして解説本を書く機会をいただけたことは、とても嬉しいです。『日本のメイドカルチャー史』でも、「メイドがいる作品」と、メイドと親和性が高いとされる「ゴシック」の観点でも、『黒博物館』に言及しました。

最新作の「三日月よ、怪物と踊れ」ではメインキャラクターがスカラリーメイドになっており、メイド作品とも言えるものです。戦えるので「戦うメイド」の系譜でもありますね。素晴らしいです。

中学生の頃から『週刊少年サンデー』を読んでいたため、藤田先生の作品は『うしおととら』も『からくりサーカス』も、連載開始から完結まで楽しみました。その点で、1990年当時中学生だった33年前の自分にもこの出版を伝えたいです。

一番インパクトに残っているオートマタは、「オルセン」です。

現状、原稿はほぼ書き終わり、これから内容のチェックや校閲などを進め、6月22日に出版の予定となります。

出版に際して準備した資料や領域は数%ぐらいしか出力できないため、割愛したものや扱わなかったテーマなどは、noteや同人誌などで公開していきます。

解説本は作品を入り口として英国ヴィクトリア朝に興味を持つ方向けに書いているため、歴史が好きな人には、今後公開していくテキストや参考文献などに読書を広げていただければと思います。

まだやるべきことが山積みとなっておりますが、無事にお届けできるようにがんばります。

本書執筆に際してのお蔵入りテキストの公開

漫画で描かれる世界を扱いつつも、「作品解説」から離れすぎて寄り道になりすぎる懸念があった詳細なテキストを、かなりの数、ガイド本から割愛しました。

そこで、こちらのnoteで公開することにしました。

適宜更新です。

そして、ラフを1枚でも多くということで割愛した、キュレーターさんの紹介テキストもこちらに(作品のネタバレを含むため、シリーズを既読の方のみお読みください)。









キュレーター(学芸員)

「黒博物館」のキュレーターにして案内役で、年齢不詳の謎めいた人物。犯罪に関する膨大な収蔵品の管理と、見学者の案内を行う。犯罪事件の収蔵品を記した目録『REGISTORY OF BLACK MUSEUM』を手にし、当時の事件、その報道や社会状況まで豊富な知識で犯罪にまつわる物語へと導く。

良き語り手であると同時に、良き聞き手でもある。好奇心が非常に強く、訪問者から熱心に話を聞き出す姿が作中で何度も描かれており、話に夢中になると話し手に食いよってしまう姿も見られる。そうした感情移入の強さと入り込み具合は語り手を喜ばせ、より深く話を引き出すことにつながっている。

一見するとクールで落ち着いたように見えるが、相手の話を聞くときの表情も仕草も非常に豊かである(キュレーター表情・仕草集が欲しい?)。

怪奇に対する対応力も非常に強く、「ゴーストアンドレディ」では幽霊であるグレイなどの存在もすぐに受け入れて会話をし、グレイからは「気が合うな」と言われている。

「三日月よ、怪物と踊れ」では、メアリー・シェリーのファンであることが明かされ、「『フランケンシュタイン』初版本(1818年)を読み、「1823年の演劇を5本全部見にいった」と語っている。その熱心さがメアリーを喜ばせ、物語が語られることとなる。またメアリーは紅茶のおかわり、話の相槌のタイミングをほめ、話に一喜一憂するキュレーターの態度を好意的に受け止めた。

キュレーターは語り手として「黒博物館収蔵品の来歴や物語」を紹介し、また訪問者から「公になっていない収蔵品に隠された物語」を聞き出し、収集している。

キュレーターの年齢は不詳となる。「スプリンガルド」の時代は1841年となるが(同年に「警部」が黒博物館を訪問しているかは明示されていない)、その10年以上後となる「マザァ・グウス」でも「ゴーストアンドレディ」でグレイが訪問してくるナイチンゲール逝去の1910年でも同じ容姿をしており(初登場から69年経過)、彼女もまた超常の存在なのであろうか。

物語の中ではキュレーターなりの展示基準があり、犯罪に関わりがなく、幽霊が劇場に遺したとする「かちあい弾」については「眉唾だけど仕方ないのからとりあえず並べておこうコーナー」に配置していた。この点から、犯罪以外の様々な品々が他にも多く収蔵されているように思われる。

絵を描くのは苦手であるらしいのと、銃を撃てることが確認されている。

なお、クリスマスの頃は訪問者に「キャンディケイン」(ステッキ型のキャンディ)を配っている。

そして、刊行記念に、キュレーターさんが活躍するコミックス未収録作品「キャンディ・ケイン」の公開を実現していただけましたので、この機会に是非。6/22公開から1週間は無料です。


いただいたサポートは、英国メイド研究や、そのイメージを広げる創作の支援情報の発信、同一領域の方への依頼などに使っていきます。